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城下町の魔法少女  作者: あしま
第四章 剣王祭
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剣王祭

 開会式翌日の、国立南エヴァレッティア魔法学校では、一人の少女が主役となっていた。


「開会式見たよ!」


「凄かったねー」


「わ、私は、ただ立ってただけだよぉ」


 開会式の舞台の上に立つという事自体が、それに縁の無い者にとっては凄い事であり、名誉なのだけれど、そう謙遜してみせる少女の名はリゼロア・ルコレッタ。


 年齢より少し幼く見える黒髪ショートボブの彼女は、普段は教室の隅で読書をしてるような、大人しく目立たない子ではあるのだけれど、貴族令嬢である。


 シバースに貴族特権等は通用せず、原則として例外無く魔法学校に編入されるので、貴族出身者がいるのは特に珍しくは無いのだが、この学校のこの世代では彼女だけ。


 それもあってか、普段他の生徒達は、彼女と少し距離を置いているのだけれど、今日だけは別。


 それほど剣王祭というお祭りが特別であり、その開会式の舞台に立った人物となればスター扱いされるものなのだ。


 さて、そのリゼロア嬢が何故剣王祭開会式の舞台に上がっていたか…という事なのだけれど


「まいちゃったよぉ…レイクったらフェリア先生に食ってかかっちゃうんだもん」


 という事で、彼女こそ開会式後の控室で「すいません」を連呼しながら頭を下げまくっていた、レイクチユル・ミスト嬢のパートナーその人という訳であり…目立たない子とはいえ、自分の所の生徒の顔を覚えてなかったフェリア先生よ…


 …と、まあ、そのリゼロア嬢を男女数名が取り囲んでる訳だけれども


「ベラトン様ってやっぱり格好良かった?」


「近くで見たんだよな?」


 ミーハーな彼等の興味は、開会式に出ていた選手…まあ、ほとんどセガール・ベラトンだけれども…へと移る。


 現在剣王祭四連覇中のベラトン様。実力だけではなくルックスも良いという事もあって、老若男女問わず絶大な人気を誇るのだけれど、リゼロア嬢は


「んー…よく分からないかなぁ」


 と、はぐらかすように言う。


 それはリゼロア嬢自身が、ベラトン様にあまり良い印象を持っていないからなのだけれど、その話は別の機会にするとして、だからといって、すぐにベラトン様の悪口を言わない辺り、幼く見えても大人な対応のリゼロア嬢なのであります。


「ところでさ、例の魔法少女も近くで見たんだよね?」


 それに対して、大人っぽく見えても、中身は普通の15歳…な、クラスのリーダー格の女子…まだ名前決めてないんだよなぁ…は


「顔見たんでしょ?正体分からなかったの?」


 と、リゼロア嬢に問い詰める。


 これも以前に書いた事だけれど、この学校のほとんどの生徒は魔法少女の正体この学校の生徒ではないと考えている。


 けれど何処にでも例外はいるもので、リーダー格の彼女は魔法少女をこの学校の生徒だと考えている数少ない一人だ。


 そんな彼女の詰問に


「んー…そこまで気にしてなかったからなぁ」


 返答に困るリゼロア嬢であったけれど


「あ…でも、フェリア先生とは知り合いみたいだったよ?」


 ついつい重要な情報を、ポロッとリーダー格女子にもたらしてしまう。ちょっと口が軽い気もするけれど、リーダー格女子の圧が凄かったんだから仕方がない。


 さて、こうなると話の輪から離れ、教室の外れでボーッと席に座っていた魔法少女ご本人にも、カクテルパーティー効果で話は聞こえてくる。


 恥ずかしいレベルで思いっ切りビクッとなり、恐る恐る集団の方を見やると、一人の女子がにやつきながらこちらを見ていて目が合ってしまう。


 この学校の生徒の中で、唯一魔法少女の正体を知る人物、ニコラ・テッサだ。


 魔獣騒動の後、怪我を理由に学校を休んでいたニコラは、その後一週間程度で復学。


 以降、エリエルちゃんとは会話こそする事はなかったけれど、こんな風に目が合ってニヤっとされる…というのが何回か続いてる。


 さて、これも前に書いたけれど、この学校の生徒には、エリエル・シバースの存在を快く思わない人物が少なくない。


 リーダー格少女はその代表格で


「まったく…納得いかないよね…王室預かりって何よ?なんであの魔法少女だけ特別扱いされる訳?」


 これ見よがしに文句を言い始める。


 もしかすれば、この教室の中にいるかもしれない魔法少女に、聞こえるようわざと大きな声を出す。


 そうなればその言葉は嫌でもエリエルちゃんに届く訳だけれども、当然エリエルちゃんはそれを聞きたくはない。けれどここで耳を塞ぐのは、行動としておかしいので、そういう訳にもいかない。


「だいたいさ…」


 何を言われるのか…続くリーダー格女子の言葉に、ただ身を固くするだけの所に


「あ、あー…でも私、あの魔法少女のおかげで、今生きてるんすよねー」


 ニコラちゃんが割って入る。


「あ、いや、ごめん…そういうつもりで言ったんじゃ…」


 流石にそれを持ち出されてしまうと、ちょっとキツメのリーダー格女子も何も言えなくなってしまう。根っから悪い人ではないのかな?


「あーいいっすいいっす。気持ちは分かりますから」


 理解を示してみせる事で、その場を丸く収めるニコラちゃん。


 それを遠巻きから聞いていたエリエルちゃんは


『あれ?ニコラさん、私を助けてくれたのかな?』


 と思う。


 先程のリーダー格女子の様子を見れば、ニコラちゃんも過去に魔法少女の正体について問い詰められた可能性が高い。


 だとすれば、その時も今みたいに誤魔化してくれたのかもしれない。…が


『何を考えてるのかは分からないけれど、弱味を握られてる事には変わりないな…』


 なんて事を考えながら、もう一度その集団の方をエリエルは見やるけれど、今度はニコラはこちらを見ていない。


 その代わり、生徒達の合間からリゼロア嬢と目が合ってニコッとされる…


「え…」


 焦って目を逸らすエリエルちゃん。まともに会話もした事がないリゼロア嬢…今の笑顔は何なのか?


 気になるけれども確認のしようがなく、ただただエリエルちゃんが動揺している所へ


「…いつまで駄弁ってるんだ?早く席に着け…」


 言いながら、フェリア先生が教室に入ってきた所で、開会式翌朝の魔法学校の教室での一幕は終了とする。







 剣王祭はその名が示す通り『お祭り』である。


 開催期間は開会式を含めて7日間。この期間は学校等の公的機関はインフラ関係や守護隊等を除き午前のみで終了。民間企業も休みとする所が多い。


 期間中、王都各地で催し物が行われ、大会出場者はゲストとして呼ばれ、各地で自らをアピールする。


 それというのも、5日目に行われる人気投票のため。



 かつて、出場選手が多かった時代には、この期間に予選が行われ、その結果によってトーナメントの組み合わせが決まっていたが、レギュレーションの変更に伴い出場選手が激減したのを受けて、こちらもルールが改正。


 現在は人気投票の順位でもって、トーナメントの組み合わせが決まる仕組みになっている。


 今大会参加選手は12名。投票上位4名がシードとなる。


 トーナメントは左右2ブロックに分かれ、左上が第1シード、右上第2、右下第3、左下第4とコの字を画くように入っていき、次に左下から逆コの字に5~8と入り、再び右上からコの字を描いて9~12と…この説明、分かりにくい?



 国政選挙よりも投票率が良いという剣王祭投票。


 投票権が有るのは、王国民のみという事もあって、外国から参加する選手には、不利なルールとも言える。


 因みに、こういった行事が賭事の対象にならない訳もなく、公営でギャンブルが行われる。


 こちらはトーナメント組み合わせが決まってからであるのと、購入層が偏る、外国人にも購入権があるなど、違った要素が入るので、人気投票とは大分違いがでてきます。


 という訳で、早速組み合わせの発表といたしましょう。



 先ずは第一シード。


 一番人気はやはりこの人。


 パナス王国近衛騎士、セガール・ベラトン!


 現在四連覇中。永世剣王の称号に二度目の王手をかけています。


 続いて一回戦第一試合。


 投票8位ニアーク・ティック


 9位ベルーガ・アドマイヤ


 共に隣国クアニカ連邦からの招待選手。一回戦から同国選手が当たってしまうのも投票によるところ。


 続いて一回戦第2試合


 12位エイル・グリット


 国内組でありながら、残念ながら最下位となったエイル・グリット。


 期間中、彼だけがどのイベントにも参加せず、取材も一切拒否した事が響いた結果だけれども、それ故謎だらけで不気味な存在。


 5位リック・パーソン


 そのグリットと対戦するのはパーソンくん。


 期間中の取材等で、その推薦者が永世剣王メリル・エステバンである事が判明して人気上昇。


 見事5位となりました。


 続いて、この二人の勝者が対戦する事になる第4シード。


 投票4位は、レイクチユル・ミスト!


 まだ14歳。実績の無いレイクチユル嬢ではありますけれど、名家ミスト家シノドスの後継者である事と、その愛らしいルックスが受けての第4位。


 期待の超新星なのです。


 続いて右ブロックに移りまして第2シード。


 パナス王国近衛騎士スカーレット・イヅチ!


 5年前にセガール・ベラトンの5連覇を阻止して以降、人気も結果も低迷を続けてましたが、昨年の3位を受けての2番人気。


 そのスカーレットへの挑戦権をかけて争うのは


 7位セツナ・ムラサキ


 10位セーン・トライトン


 西の果ての王国ホムラからは、剣王祭200年の歴史の中で初参加となるセツナ・ムラサキ。


 真夏の暑さの中覆面姿にポンチョ風衣装。肌を一切露出しない出で立ちと、期間中行われたイベントや取材でも、一度も言葉を発しない、年齢性別一切不詳という徹底したキャラ作りが一部に受けての人気7位。


 絶対このキャラ何かある!


 対するは常連、南国テトラハリスのベテラン騎士セーン・トライトン。特筆する事無し。


 続いて一回戦最終試合。


 11位クォン・ソーリン


 6位パ・ハッシュベル


 南西の小国カルナッソ公国のクォン・ソーリンと、大国北エバレッティア連合王国のパ・ハッシュベルの対戦。


 前大会準優勝のハッシュベルは、人気6位に何を思うか…


 そして、最後に紹介するのは第3シード。


 投票3位、クルーア・ジョイス!


 魔獣討伐の実力は本物か?


 本物だとして、剣王祭の舞台で通用するのか?


 疑問は有るけれども、そんな事よりエリエルちゃんカワイイ!


 という事で、まだまだアンチは多いけれど、人気上昇中のエリエルちゃんのおかげで3位になったクルーア君でございました。




 という訳で、以上出場12名。


 投票日までに起こったすったもんだは皆様のご想像にお任せするとして、いろいろ端折って剣王祭いよいよスタートです。

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