表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
城下町の魔法少女  作者: あしま
第四章 剣王祭
75/83

リック・パーソンの剣王祭4

 という訳で、本日お集まり頂いたのは、先日の魔獣騒動の祭、シバース教アナトミクス派の殺人鬼、ヴィジェ・シェリルと対峙し、互角に渡り合ったと噂のリック・パーソンくんの実力調査。及び剣王祭出場の意思確認のためであります。


「…忘れてたね~」


「…完全に忘れてた…」


 それなのにも関わらずこの扱い…頑張れパーソンくん、と言いたい所だけれど


「すっかり忘れてましたね…」


 当の本人がこれなので、まあ仕方ない。


「ま、シャルルが悪いわよね」


 メリルさんによる、突然の責任転嫁に


 ”俺カヨ!“


 抵抗してみるシャルルさんですが、いや君ね、ちょっと考えてみて?


 ”イヤ、俺カ?”


 そうそう、君が君の記憶を見せるなんて事をしなければ、ここまで話が横道に逸れるような事にはなっていなかったのです。


 ま、何故シャルルさんの記憶を見なくてはならなくなったのかは忘れてしまいましたが、多分貴方のせいで間違いないと思います。


 “ス、スミマセン…”


 ちゃんと謝れるのは良い事だと思います。



 さておき、パーソンくんの話です。


 メリルさんとの手合わせによって、実力の方は問題ない事が分かりました。


 後は出場する意思が有るか否かです。




「まあ、でも…出るだろ?剣王祭」


 フェリア先生がこんな言い方をするのには、『剣王祭に出たくない人間はいない』という、クルーア君同様の思い込みがある。


 実際、パーソンくんも剣王祭に出たいという思いは当然のように持ってるし、だからこそ今日ここに来ているのだ。


 けれど、『出たい』という気持ちと、実際に『出る』の間には大きな隔たりがあって


「僕なんかが出ても良いんですかね?」


 いまだ、自身をパラノーマルだと信じれてない人間にとっては、これが普通の反応だろう。


 百歩譲ってパラノーマルだという事が事実だとしても


「きっと通用しないですよ…」


 という自己評価。もうちょっと自信持とうよ…


「いや、通用はするでしょ?」


 ほら、実際に手合わせした、メリルさんだってこう言ってますし…


「じゃないと、アタシの立場がないじゃない!」


 あ、ああ…そっちですか…


 そりゃあメリルさん、現役を退いて大分経っているとはいえ、伊達に永世剣王の称号を持ってる訳ではありません。


 それなりに本気を出した攻撃を、全て防御された訳ですから、それで通用しないなんては言われたら、たまったものじゃありません。


 とは言え、防御タイプのパラノーマルというのは、弱点も明確な訳で


「まあ、今のままじゃ、通用はしても、勝てるかと言われると、かなりキツイだろうね」


 というのが、率直な評価。


 何しろ防御にのみ特化してるのだから、攻撃面に難があるというのは想像に容易い。


 加えて、剣王祭用の魔法剣は、剣と剣とがぶつかり合い時に最も魔力消費が大きい。


 相手の攻撃を避けるよりも、受けて防ぐ事に特化している防御タイプのパラノーマルは、パートナーとなるシバースの負担が大きくなる事が予想される。


 剣王祭では、シバースの魔力切れにより、魔法剣を維持できず戦闘不能となっても敗けとなるので


「実戦ならともかく、剣王祭のレギュレーションとは相性悪いわよ」


 という事になる。


「やっぱり、僕なんかじゃ無理ですよね?」


 うーむ…なんかパーソンくんちょっと卑屈すぎやしませんかね?


「わからないなぁ…私なら通用するかなんて気にしないけど…」


 ほら、そんなウジウジしてるから、マリーさん、優しく言ってるけれど、ちょっとイラッとますよこれ。


「だって、出たいんですよね?」


 出たくても出れない人が殆どである、剣王祭に出れるのだ。何を迷う事があると言うのか…


「いや、だって…出るからには勝ちたいじゃないですか…」


 そのパーソンくんの言葉は、それまでの卑屈さからはちょっと想像できない言葉であり、マリーはきょとんとしてしまい


「なんだ…ちゃんと負けず嫌いじゃない」


 メリルさんは嬉しそうにニヤッとする。


 そして立ち上がり、ゆっくりとパーソンくんに近付きながら


「今のままでは、勝てない_ けれど剣王祭まで、1ヶ月弱残ってる。

 その間アタシの所で修行すれば、勝てる形は作れるわよ」


 言い切る頃には、パーソンくんのすぐ傍に立ち、肩に手を置き、顔をグッと近付けて


「…どうする?」


 と、選択肢が有るようで無い質問をし、圧力をかけてくる。


 ここまでされれば、流石にパーソンくんも「あ、これ最初から拒否権無い奴だ…」と気付いたみたいで


「え?いや…え…」


 どう返答したら良いか分からずに困っているのだが


「決まりだね!」


 それを見たメリルさんが、何をどう解釈したのかそう言い出したから


「わ…分かりました…」


 とうとう観念するのでした…


 頑張れパーソンくん…


 そんなメリルさんとパーソンくんに、苦笑いの一同だけれど、懸念される事が1つ残ってり。


「後はパートナーになるシバースを誰がやるかだな…」


 フェリア先生がボソッと言うのだが、防御タイプパラノーマルの特性を鑑みるに、パートナーとなるシバースには、かなりのタフさが要求される訳だ。


 そんな都合の良い人物なんてそうそう…


「フェリアちゃんで~良くない~?」


 あ、いた…


「え!?わ、私?マ、ママ?何言い出すの?」


 こうなると、拒否権が無くなるまで追い込まれるのに時間はかからない。


 そうはなるまいと慌てて拒否しようとするから、普段の僕っ子口調が素に戻ってしまうフェリア先生に


「ああ、そうだね。フェリアならタフだし、良いかもしれません」


「リックくんとの相性も良さそうでしたね?」


 男性陣二人が外堀を埋め


「お願いできるかな?フェリアちゃん」


 無駄に目をキラキラさせたメリルさんがトドメを刺そうとする。


「いや…わた…ぼ!僕は…目立つのが好きじゃないんです!」


 それでも抵抗しようとする、フェリア先生。


 先生を知る人物なら、「嘘をつくんじゃない」と誰もが思う事を言い出すが、これは実は嘘ではない。


 ただ行動が伴わないだけ。


「ダメ~?」


 だから、母親ノエルさんがすがるように言った所で


「ダメです!」


 簡単には折れたりしないのだけれど、なんだかんだ言ってもお人好しなのがフェリア先生。


「あの…自分からもお願いします」


 実はかわいい弟くらいに思ってるパーソンくんに言われたら、心も揺れるというもの。


「ダメ…ですかね?」


 そんな事を伏し目がちに言われたら、保護欲を刺激され、ハートをズキュンと射抜かれてしまうじゃないですか。


「ほら~、フェリアちゃん?リックくんもこう言ってるし~」


「いや、でも…」


 それでも抵抗するフェリア先生の頑な心を


「フェリアさんがパートナーなら、安心して剣王祭に出場できると思ったんですけどね…」


 この言葉が、ついに打ち砕く。


「あー!もう!分かったよ!分かりました!出ます、パートナーやります…それで良いんだろ?」


 結構チョロい感じになってしまったフェリア先生どけれど、こうしてリック・パーソンくんの剣王祭出場が無事決まるのだった。


「よーし!優勝目指して頑張ろう!」


 勢いよく、声をあげるメリルさんだが


「え!?優勝!?」


 パーソンくんからすれば、それはちょっと話が大き過ぎる。


「出るからには勝つ、勝つからには優勝…当然でしょ?」


 しかし、そう言われてしまえば、出るからには勝ちたいというのは、確かにそういう事だと思えたから


「分かりました…優勝…目指します…」


 言ってしまったパーソンくん。


 さっきまでの卑屈さは見る影もない。


 目指すだけならタダだから、言った事に後悔は無いけれど、気掛かりな事があと1つ残ってる。


「あの、出場手続きはどうしたら良いんですかね?」


「それは~、殆ど推薦人の仕事だから~、リックくんは書類にサインするだけだよ~」


それを聞いて、ホッとするパーソンくんとは対照的に、顔を青くする人物が一人…


「あー…手続き…手続き…面倒だわ…面倒だわ!」


 いや、そこはちゃんとしてくださいね、メリルさん…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ