今さらだけれどパラノーマルについて話そう
パラノーマルとは、戦闘に特化した人類である…というのは、言うまでも無い。
起源は不明だが、少なくともエリック、リンドのシバース兄弟の時代には存在が確認されている。
その能力は実は大きく4つのタイプに分類される…というのは、あまり知られていない。
その1、スピードタイプ
メリル・ジョイスやヴィジェ・シェリルがこのタイプ。
素早い動きからの連続攻撃で、手数で勝負するというのが主な戦法。
残像攻撃を得意とするのもこのタイプ。
その2、パワータイプ
パトリック・ジオット将軍がこのタイプ。
力でごり押す、脳筋タイプ…というと怒られそうだけど、他に良い表現が思いつかない…
その3、防御タイプ
おそらく、リック・パーソンはこのタイプなのだろうという事。
文字通り守る事に特化したタイプ。
守る事に特化してるので、攻撃は苦手とされている。
それぞれ相性があり、防御タイプはスピードタイプに強く、スピードタイプはパワータイプを得意とし、パワータイプは防御タイプの天敵である。
じゃんけんのグーチョキパーのような関係。
これに、3タイプの特徴をバランスよく備えた、文字通りのバランスタイプというのを加えて4タイプ。
悪く言うと目立った特徴が無いという事になる。
セガール・ベラトン、スカーレット・イヅチの現役二人がこのバランスタイプである。
「知らなかった…」
「まあ、一般的な知識では無いけどね~、メリルには知っておいて欲しかったかな~?」
ちなみにノエルさん自身はバランスタイプだけれども、ノエルさんがパラノーマルである事を知らない人もいるので、今回は触れてない。
パラノーマルの能力は遺伝する。
ゆえに各国ともパラノーマルを輩出した一族は、特別に保護をしたりする。パナス王国なら貴族階級にしたり…とか…
とはいえその能力が発現するのは極めて希。
1度パラノーマルを輩出しても、その後2度と輩出しないなんて事も珍しくない。
メリルさんやパーソンくんのように、一般家庭から出てくる場合は、もう記録にすら残らないほど昔に、パラノーマルのご先祖様がいたのだろうと考えられる。
「でも、ベラトン家とかミスト家なんてコンスタントにパラノーマル出してるよね?」
ミスト家は、シノドスの孫娘がパラノーマルという噂がある。
ベラトン家はセガールの亡き父親もパラノーマル。親子でパラノーマルなんてのは異例中の異例だ。
「ベラトンとミストは、他のパラノーマルとは違うのですよ」
この疑問には、シニャック老が答えてくれる。
「あれらはクリスティン・シバースによって造られたパラノーマルの末裔ですから」
「え!?」
「クリスティン・シバースが…造った!?」
これは暗黙の了解なのだけれど『パラノーマルは人を魔獣化したものだろう』というのが、一般的認識。
魔獣化は、禁忌。クリスティンの時代でもそれは変わらない訳で
「クリスティン・シバースは禁忌を犯してたって事?」
だとしたら、とんでもない事実の発覚という事になるのだけれど
「いや、そうではありませんね…ふむ…なんと説明すれば良いでしょうか?」
シニャック老はしばし考え、言葉を選ぶ。
「魔獣化というのは、あらかじめ形の有るものを変化させる魔法です。
しかし、彼女は『最初からパラノーマルとしての能力を持った人を、ゼロから造り出した』のですね」
要約すると人造人間という事らしい。
なるほど使っている魔法が違うのだから、これは禁忌では無いという理屈である。
いや、確かに禁忌では無いかもしれないけれど、倫理的にどうなんだそれは…
「っていうか、魔法ってそんな事までできるんだ…」
いずれにしろ、アナトミクスの妹クリスティンもまた、とんでもない魔法使いであったという話ではある。
少し話が逸れてしまったが
「パラノーマルには大昔からいる起源不明のものと、クリスティン・シバースが起源の比較的最近のものが有るのね…」
という事が分かった。
“フン…起源不明ネ…”
その言葉に、パッと見猫にしか見えない魔獣が不満気にぼやいてた事に気付く者はいなくて
「シニャックさんの話って、聞くたびに驚きの事実があるわね~」
その事に皆は感心してる。
「いえいえ、無駄に長生きしているだけですよ」
そう謙遜しているシニャック老は、言うほど年をとってるようには見えないが、シニャック老が博識である事に疑いはなさそうだから
「あの…ちょっと良いですか?」
マリーは思い切って、素朴な疑問をぶつけてみる事にした。
「なんでしょう?」
「あの…そもそもパラノーマルって何ですか?」
…それは一番最初に戦闘特化人類と説明したじゃないですか?
「ああ、いや、そうじゃなくて…えーと…例えばシバースだったら、シバース家だったりシバース地方だったり、元になる言葉があるじゃないですか?」
なるほど、パラノーマルが何故パラノーマルと呼ばれるようになったの…語源は何か…
「ふむ、考えた事もありませんでしたね…」
「シニャックさんでも知らないの?」
「私が生まれた500年前には、パラノーマルは既にパラノーマルでしたからね」
若者達がシニャック老の生年についての発言と、それを大人達が完全にスルーしてる事に困惑してるのは置いといて…
前述した通り、それより昔のエリック、リンドの時代にもパラノーマルはパラノーマルであった。
それ以前の文献にパラノーマルという言葉は出てこない。
「何か意味のある言葉なのでしょうか?」
「やっぱり、人の名前だったりするのかしらね~」
何を言っても憶測でしかなく、答えのでない不毛な会話にしかならないかと思った所に
"超常現象ッテ意味ラシイゼ?古代ノ言葉ダソウダ”
意外な所から答えがやってきた。
“ダイタイ起源不明トカ言ッテタガ、パラノーマル造ッタノハ、オ前ラガ『聖グリュフィス』ッテ呼ンデル奴ダゾ?”
パッと見猫にしか見えない魔獣であるシャルルさんが語る事実は、そこそこ衝撃的であり
「そのような話は、聞いた事もありませんね」
反発を買う事になる。
だって魔獣と戦い、魔獣化魔法を禁忌とした人物がですよ?人を魔獣化してたって言うんですから…
“『パラノーマルナイツ』…『グリュフィス』ト、一緒ニ戦ッタ13人ノ騎士ダヨ?知ラナイノカ?”
聖グリュフィスと共に戦った13人の事は文献に残っている。
だが、そこには齟齬があって
「その13人は魔導師だったはずですよ?」
というのが現在まで伝わっている伝承。
“事実ガネジ曲ガッテルナ…イッタイドンナ話ニナッテルンダ?”
ってシャルルさんが聞くもんだから、シニャック老が聖グリュフィスの英雄譚を搔い摘んで説明する。
“…ナンダソレ…イヤ、全部ガ全部トイウ訳ジャナイガ…”
シニャック老の語るそれは、シャルルさんが知っている事とは違うようで
「え?え?どこが違うの?」
これは、聖グリュフィスの英雄譚好きなユーリカ=ソフィアも黙っていられない。
しかしながら、そもそも
「なあ、何でシャルルがそんな事知ってるんだ?」
という当然の疑問が出てくる訳で
「それもそうですね…あなたの言ってる事が事実であるという証拠も無いですし…」
シニャック老も追い討ちをかければ
“ウーン…”
シャルルさんは唸るばかり。
これは、説明に困っているというよりは、説明するべきか迷っているという態度であり
“面倒臭イ!”
しかし、ここまで話してしまった以上、後にも引けないシャルルさん
“今カラチョットダケ俺ノ記憶ヲ見セテヤル”
言いながら、ユーリカ=ソフィアの膝の上から、勢いよくテーブルの上へと移動するけど
「あの…」
「ちょっと良いですか?」
マリーとパーソンくんの二人が、ほぼ同時に会話を止める。
“ナンダヨ…”
「どうしました?」
話の腰を折った形になった二人が、やや責められる事になってしまったけれど
「何で皆さん…」
「猫と普通に会話してるんですか?」
シャルルさんの事を全く知らなかった二人には、これまでの事は異常事態でしかなく
「ああ…そっか~、言ってなかったね~」
先ずは二人にシャルルさんの事を説明してから…
パラノーマルの話からは、逸れてしまった気がしなくもないけど、これからここ聖グリュフィス聖堂にいる面子は、パッと見猫にしか見えない魔獣が見た『聖戦』の記憶を見る事になる。
っていうか、シャルルさんそんな事もできるのか…




