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城下町の魔法少女  作者: あしま
第四章 剣王祭
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クルーア・ジョイスの剣王祭

「先に今回の礼を言わせてくれないかな?来てもらったのはそれが名目なんでね」


 名目という事は本来の目的は他にあるという事。


「ありがとう。君のおかげで街は救われた」


 建前だって事は最初から分かってはいても、それを面と向かって言われるのは面白くないって事が分からんのかこの王様は…


 なんて事は口が避けても言えないから


「別に…大した事はしてませんよ」


 取り敢えずクルーア君は謙遜してみせる。


「そんな事ないよ。クルーア君がいなかったら、今もまだあの魔獣、暴れてたかもしれないんだよ?」


 自身も魔獣と対峙したスカーレットがそう言うのだけれど、それは流石に大袈裟だろうと思う。


 事実、魔法でダメージを与える事はできたのだから、倒せないという事は無いだろう。


 しかし、「大した事をしてない」と言ったのはそういう事でなく


「犠牲者が出たじゃないですか…」


 それが何より悔やまれるから。


「少なくとも、お前がいなければもっと多くの犠牲者がでただろう…お前は良くやった。誇って良い」


 それはそうかもしれない。何より一人の犠牲者も出さないなんてのは理想論だって事をクルーア自身良く分かってる。ただジオット将軍に言われると何故か腹が立つ…何故だ?


 何にしてもクルーア君、この話は長く引っ張りたくはないから


「そうですね?そうします」


 適当に話を切ろうとするけれど


「所でお前、『力』を使ったのだろ?」


 エリザベートがそれを許さない。


「久しぶりに使った割には、昔より随分と使いこなせるようになってたそうじゃないか?」


 嫌味っぽく言われて、それをエリザベートに報告したであろう犯人を、じとっと睨み


「イヅチ先輩…」


 恨みを込めて名前を呼ぶけど、当人は知らん顔。


「私に報告されて、困るような事でもないだろ?」


 それはそうなのだけれど…いや、本当にそうか?普通なら問題ない事でも相手がエリザベートだとわからない。


「『力』を使ったのは、あんたに実験台にされてた時以来ですよ」


「ほう…あの頃は上手くコントロールできてなかったように記憶しているが…」


 クルーアが亡き父の叙勲式で暴れた後、その能力に興味を持ったエリザベートの前で能力を使ってみせた事がある。


 最後に見せたのは7年くらい前になるが、当時のクルーアが自身の能力に振り回されているのは明白だった。


「お前、嘘を付いてるだろ?」


 故にエリザベートはそう結論付ける。


「なんの事ですか?」


「『力』を使ったのが久しぶりだという事だよ?」


 詰まる所、これまでも頻繁に使ってきたのではないか?使いこなせるように練習してたのではないか?という事をエリザベートは言いたいのだろうけど、クルーアの能力というのは1度使う毎に剣を一本ダメにするのです。


「まさか、そんな訳ないじゃないですか。『力』を使うにしても、使うための剣が無いですよ」


 少なくても、そう頻繁に使う事はできない理屈だけど


「ふん…しらばっくれるか…」


 エリザベートは聞き入れない。


「私の見立てでは、お前の能力は無尽蔵の魔力を武器へと流し込み、武器自体を暴走させる事だ」


 持論を展開するエリザベートだけれど、クルーア自身自分の能力を良く分かってないのが事実だから反応に困る。


「パラノーマルを凌駕する身体能力は、暴走する武器を制御するための物だろう」


 しかし、おそらくだけれどエリザベートの持論は大部分当たっているのだと思う。


「ここで疑問だ。その武器は剣である必要があるのか?そもそも武器である必要があるのか?」


 だが、これは間違っていると断言できる。


 どんな理屈か知らないけれど、クルーアの能力は剣にのみ有効である。ただし剣であれば材質は問わず、子供の玩具のような物でも暴走させる事ができる。


 さて、何故クルーア君が自分の能力のそういう部分を把握してるのかと言うと、そりゃあもういろいろ試したからに他ならず、「『力』を使ったのは、あんたに実験台にされてた時以来ですよ」ってのが、真っ赤な嘘という事になる。


「お前の能力が剣以外にも有効なら、練習道具に困る事も無いだろう?」


 なので、これに上手く反論する事ができない。


 なんでこんなしょうもない嘘付いたんだって事になるけれど、それはそうしないと面倒な事になりそうだと感じたから。面倒を避けようとしたら、もっと面倒な事になってしまったというアレ。


 剣呑な雰囲気に、ユーリカは困り顔で、ジオット将軍は呆れ顔。スカーレットは例によって目をキラッキラ輝かせてる…この人は…


「で、実際の所はどうなのだ?クルーア」


 さて、どう答えるのが正解か?ただ黙ってるという訳にもいかなそうだ、と必死に言い訳を考えてる所へ


「その辺にしてくれないかな?エリザベート」


 思わぬ助け船が入る。シルドラ王だ。


「早く本題に入りたいんだ」


 そもそもエリザベートは、個人的な興味で勝手に聞いてた事。シルドラ王にそう言われたら、流石に従わない訳にはいかない。


「申し訳ありませんでした」


 意外にも、しおらしく陛下に対し頭を下げるもんだから、ホッと一安心するクルーア君だったのだけど


「では、本題といこうか?クルーア」


 と仰るエリザベートの目が笑ってないから、『あ、これ、ここからが本番だ』って気付いても、もう遅い。


 何を言われるのかとクルーアがビクビクしてる所へ


「いや、その前に何か聞きたい事があると言ってなかったかな?」


 またしてもシルドラ王が横槍を…


 いや、早く本題に入りたいって言ったの貴方でしょ?って視線を一斉に浴びるのだけれど、その視線の意味が分かってないご様子。


「まあ良い…何が聞きたい?答えられる範囲内で答えてやろう」


 言うエリザベートが若干投げ槍気味だけれども…


 さて、聞きたい事があるとは言ったものの何を聞こうかとクルーア君はちょっと悩む。言いたい事だって山ほどあったはずなのに、いざとなると意外と思い付かない。


 現在のユーリカの状況というのも聞きたかった事の1つであったのだけれど、それは彼女がこの場に現れた事で必要なくなった。


 そもそもなんでクルーア君をここに呼んだのか…これは本題なのでこちらから聞く必要はない。


 いったい何がどうなって、ソフィアとユーリカが入れ替わってるのか…ってのも気になるけれど…取り敢えず


「どうしてソフィア…姫様を連れ戻そうとはしないのですか?」


 素朴な疑問をぶつけてみると


「その方が面白いからだ」


 エリザベートが即答し


「面白いからだね」


 スカーレットが追随し


「確かに…」


 ユーリカが理解を示す。


「いや…真面目に答えてくれませんかね?っていうかリカちゃんまで…」


 流石に呆れるクルーア君。何故か嬉しそうに照れているユーリカを横目に、深く溜め息をついて


「ともかく!入れ替わってるのが分かっているなら、何時でも連れ戻す事ができたんじゃないですか?」


 仕切り直す。


「連れ戻すつもりなら、そもそも入れ替わりに手を貸したりしないさ」


 今度は、ちゃんと答えるエリザベート。


 それは、まあそうかもしれないけれど…


「お前はソフィア姫が、この毒親の元で、ずっと軟禁状態でいた方が良いと思うのか?」


 言われて、その毒親を見やれば、深い溜め息をついて俯いてる。


 軟禁状態…この王様ならと予想はしていた。


 実際にそれを聞けば怒りを覚えるかと思っていたけど、その姿を見たら憐れに思えてくる。


 歪んでるとはいえ、この王様の娘への愛情は本物だろう。


 だとすればだ


「エリザベートさんはともかく、陛下は連れ戻そうとは思わなかったのですか?」


 尚更それが疑問となる。


「…恥ずかしい話だけどね?私は城下に例の魔法少女が現れるまで、娘が入れ替わってる事に気付かなかったのだよ…」


 前言撤回。それだけユーリカが完璧にソフィア姫を演じきってたという事かもしれないけれど、この王様、本当に娘の事を思っているのか?


「ほんとに恥ずかしいですね…」


 呆れて、思わず本音を口走ってしまい


「クルーア、口が過ぎるぞ」


 ジオット将軍に怒られる。これはクルーア君が悪い。


「いや、良いんだジオット…本当の事だ」


 力無い言葉に、やはり怒りよりも憐れみを覚えてしまう。こんな人だったろうか?


 愛娘であるソフィア姫の記憶と魔法を封印し、城内に軟禁状態。


 さらに、10年前の事件の被害者のはずのマリーを…当時、まだ6歳の子供を国外に追放した王…


 そこまで思考して、言っておきたい事の中に、マリーの事があったのを思い出す。


 再びマリーを追放するなんて事が無いように、少し脅してでも先に釘を刺しておきたい。


 だが待てよ…今ここにいる人物はマリーがこの街にいる事を知っているのだろうか?


 エリザベートなら、そんな情報を入手していてもおかしくない気はするけれども、仮に知らなかったとしたら、今ここでマリーの話をするのは得策ではない気がする。


 シバース教に追われてたマリー。


 状況から見て、捕らわれていた所を隙を見て逃げ出したとかだろうか?


 思えば10年前も、彼女がシバース教に捕らわれ、それを救いだすためにソフィアが…


 そういえば、その時の状況と今回に共通点がある。


「他に何か聞きたい事はあるかい?」


「戴冠式…」


「?」


 10年前のそれは戴冠式の日に起こった。


 そして4ヶ月後ではあるが、当時シバース教アナトミクス派のクーデター未遂事件で中止となった、戴冠式が行われる事になっている。つい先程聞いたばかりの話。


「戴冠式があると聞きましたが本当ですか?」


「本当ですかも何も、逆にお前は知らなかったのか?」


 思わぬ返答に言葉を失うクルーア君。


「驚いたー。多分全国民で知らないのクルーア君だけじゃないの?」


 スカーレットがまた嬉しそうに言う。


 考えてみたら戴冠式なんて国家行事、全国民で一人だけは大袈裟にしても、普通に情報に触れていれば知らないはずの無い事。


 それはクルーア君がいかに世捨て人の様な暮らしをしていたかという事に他ならないのだけれど、それはそれとして


「アナトミクス派の動きも、それに合わせてるように思うのですが…」


 それが気掛かりである。


「ふむ…ちょうど良い。実は本題というのは、その事とも関係してるのだ」


 思わぬ方向から、急に話が本題へと戻ってきた。


 さあ何を言われる?とクルーアは身構える。


「お前には剣王祭に出て、優勝してもらう」


 さて、何がどうして戴冠式と剣王祭での優勝が結び付くのかは分からない。


 分かるのはエリザベートが、いろいろ大事な事を端折って結論だけ言ったという事。


 にしてもだ…「してもらう」とはどういう事だ?それではまるでクルーアに拒否権が無いみたいではないか。


 飛躍しすぎの話に対する「お前は何を言ってるんだ?」という思いと、まるで拒否権が無いような物言いに対する「ふざけるな」という思いがこもるから、それに対するクルーアの返事は


「は?」


 という事になるのです。

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