20 話
ヒナがリラメラ様の研究を手伝うようになり、出産率が飛躍的に上がり、人口が増えつつある。
街を警邏する保安隊の隊員である俺が、ヒナトゥナの番であると知られてから、街へ赴くたびに民衆に揉みくちゃにされる毎日を送っている。
それに加え、感謝の言葉と共に手渡される(無理矢理)ヒナへの贈り物。しかし、中にはヒナへの熱烈なラブレターも混ざっていたりするので、一つ一つ丁寧に確認することは忘れない。
見つけ次第、消し炭にするためだ。
ヒナは誰にもやらん!
ん? ヒナが不安に感じている?
どうしたのか。
何かあったのか?
ヒナと夫婦になってから、時々ヒナの感情が流れてくるようになった。ヒナはこちらに生まれてからずっと、俺の感情がなんとなく分かるのだと言っていたが俺は夫婦になってから解るようになった。テレパスができれば一番いいが、それはまだ訓練中である。
それと、夫婦になってから変わったことがある。俺の不安定だった魔力が安定したことだ。これで低魔力者を気絶させずに済む、と胸を撫で下ろしたのは記憶に新しい。
あー、それと。まだあったな。
約1ヶ月前、ヒナにカミングアウトされた。
その内容は、ヒナがこの世界に生を受ける前の話。
ヒナは神ーーヒナは新人神と言っていたーーの不手際によって、別の世界で生を受け暮らしていたらしい。
それによって、俺が500年以上も苦しむ羽目になったとも、涙を溢れさせ語った。
俺はヒナに言った。
「もし神が負い目を感じているのなら、来世でも夫婦してくれと頼む(脅迫とも言う)こともできるな」
ヒナはキョトンとした後、涙を拭き、それはいい考えだとニヤリと黒い笑みを浮かべ頷いた。ブラックなヒナにもキュンと胸をときめかせてしまう俺に、今更ながら重症だなと気づく。
ヒナの様子が気になる。
一旦、城へ戻るか。
翼を広げ地面を蹴る。
空を舞うと民衆から「おぉっ!!」とか「きゃあ、素敵!!」といった歓声が上がる。
他の隊員に声をかけ城へ向かう俺の心は、なんとも複雑だった。
この世界を破壊しようとしていた自分。
ヒナトゥナに出会っていなければ、俺は我を忘れてこの国、いや、この世界ごと破壊し尽くしていただろう。
俺は誓う。これからは、何があってもこの手でみんなを守ってみせると。
この国を。
愛する者を。
失いたくないから。
最愛の 妻 が懐妊したと知るのは、これから間もなくのことだった。
▽▽
「パぁーパ。僕、大きくなったら、ママと結婚しゅる!!」
そう宣言したのは、シンとヒナトゥナの長男であるサヘラル(3歳)。
全体的な雰囲気は母に似ているが、髪の色や瞳の色は父シンと同じ色。
おませなサヘラルは、いつまでも美しく優しい母に恋心を抱いたらしい。ヒナトゥナの前で、顔を染めモジモジする光景をよく見かけるようになった。
両親とのお茶会でそんな話をすると「あら、あなたも似たような事あったわよ? そうね、あれは4歳の時だったかしら……」と子供時代の恥ずかしのエピソードをヒナに暴露されてしまい焦った。
「シン。今後、男の子が生まれるたびにヒナちゃんの取り合いになるわよ」ふふふと笑う母に、俺はうんざりといった顔をする。
母の言葉は、この先現実のものとなるのだが、この時の俺はまだ知る由もなかった。
おわり
ちなみに。
先に往生したシンは、ゆず(黒猫)の計らいにより、新人神とご対面していた。
「あなたが(新人)神様、ですか?」
「は、はいっ!!ここここ、このたびは!すすすみばぜんでじだぁー!!(土下座)」
「あー、それはもういいです。それよりも、神様にお願いがあるのですが」
「はいぃぃっ!!? なんなりとさせてもらいますともぉ!!」
「(言質はとった!)……俺は、来世も、そのまた来世も、ヒナとずっと夫婦として一緒にいたい。神様なら、何とかなりますよね?」
「(表向きは懇願してる風を装おっているが、内心では『お前のせいでヒナに何百年も会えなかったんだぞ。それくらいして当然だよなぁ。もし断ったら神界ぶっ壊すぞ、あ”あ”ぁん!!』と魂が訴えている。マジ怖いっ!!)……も、もちろん!私は神様ですから、それくらいのこと、造作もないことであります!」
などといった交渉(?)があったそうな。
神様は思った。
あやつのヒナへの執着はハンパねーなと。
まぁでもこの2人のおかげで竜人族の子が増えてこの世界の基盤がしっかりしたし。お願いを叶えてあげよう。
ウンウンと頷いていると、ゆずの視線を感じた。
ゆずの視線が語る。
『そんなこと言って、本当はシン様が恐かっただけじゃないの?もう、ほんと情けないわね』フンスと鼻を鳴らす姿は、できの悪い弟を見るかのようであった。
ゆずの態度にショックを受けた神は、その後100年いじけ続けたとさ。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございましたm(_ _)m




