魔法のない世界
お茶会が終わったあとも、アレンとアリスはセレスティアたちと話をしていた。
「アレンの前にいた世界って、魔法が無かったのよね」
セレスティアが尋ねる。
「そうだけど。どうした?」
「魔法が無くても、軍事力はこの世界より強いの?」
アレンは少し考えた。
この世界の人間に説明するなら、どう表現するのが一番分かりやすいだろう。
「ボタンを押したら王都が消えるぐらい」
「何それ」
セレスティアが固まった。
「魔法がないのに?」
「魔法がないからって、戦う力まで弱いとは限らないだろ」
「よくそんな世界で日常おくれるわね」
フローラも驚いたようにアレンを見る。
「お互いに持ちあって牽制してるんだ」
「……」
セレスティアは少し考える。
「それって、誰かが本当に使ったら終わりじゃない?」
「だから使わないようにしてるんだ」
「怖すぎるわね」
リリアも話を聞いていた。
「アレンの世界の魔法がないという話を聞いて、少し安心していましたけど……」
そこでリリアは自分の魔法を思い出す。
「私のインフェルノが可愛く見えてきたわ」
「そうだな」
「肯定しないでくださいな!」
リリアが抗議する。
「いや、実際そうだろ」
アレンは平然と答える。
王都を消すほどの力を、ボタン一つで発動できる。
それと比べれば、リリアのインフェルノはまだ魔法らしい魔法だった。
「ちなみに――」
アレンがふと思い出したように続ける。
「転生者がオリジナル魔法を開発して、メテオとかブラックホールを開発した時は文明が消えそうになったらしいぞ」
「……」
全員が黙った。
「女神が無理やり発動を止めたらしい」
「メテオって何ですの?」
リリアが尋ねる。
「巨大な隕石を落とす魔法だ」
「……」
「ブラックホールは?」
「説明すると長いけど、まあ、近づいたものを全部飲み込むようなものだ」
「それは魔法として存在していいものなの?」
セレスティアが真顔になる。
「俺もそう思う」
「その人は何を考えていたんですか?」
フローラも呆れている。
「転生者だからな」
「転生者だからで済ませていい話じゃないわよ」
アリスが突っ込む。
「ところで、女神に会ったの?」
セレスティアが聞いた。
「いや、俺は会ってない」
「じゃあ、どうして知っているの?」
「ピーちゃんが詳しいらしい」
「ピーちゃんが?」
全員が驚く。
普段は小さな鳥として飛び回っているピーちゃん。
そのピーちゃんが、女神について詳しい。
「女神って、やっぱり凄い存在なの?」
セレスティアが尋ねる。
「らしいぞ」
「らしい?」
「女神が管理してる星で、強すぎる魔王が生まれたらしい」
「魔王ですか」
「勇者でも倒せないほど強かった」
「それで?」
「女神が直接介入した」
アレンは淡々と説明する。
「女神なら、倒せたの?」
「倒せたらしい」
「それならよかったですわ」
リリアが安心する。
「ただ、そのせいで星が砕けたらしい」
「……」
空気が止まった。
「星が?」
「砕けた」
「女神が戦って?」
「そう」
「それで、どうしたの?」
「時間を巻き戻したらしい」
誰も言葉を返せなかった。
魔王を倒す。
星が砕ける。
時間を巻き戻す。
あまりにも話の規模が大きすぎる。
「……存在が別次元ね」
セレスティアが呟いた。
「そうだな」
アレンも頷く。
リリアのインフェルノが可愛く見えるという話をしていたはずなのに。
いつの間にか、星を砕いて時間を巻き戻す女神の話になっていた。




