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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました~元・世話焼き長男、誤解されがちな騎士団を立て直します~  作者: k-ing☆書籍発売中
第一章 黒翼騎士団のおかんになる

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30.団長、こんなはずじゃなかった ※エルドラン団長視点

「ソウタは寝たか?」

「ぐっすり寝ていたっす!」


 ジンがソウタが寝たのを確認すると、俺らの宴が始まった。


「エルドラン団長、あのワイン飲ませてくださいよ」

「ちゃんとあれは隠していただろうな?」

「当たり前っすよ!」


 コソコソと調理場からジンは頼んでいたものを持ってくる。


「エルドラン団長、パンと煮込みハンバーグを奉納します」

「ほぉ、さすが黒翼騎士団長の隊長だ」


 ジンが持ってきたのはさっき食べたばかりのパンと煮込みハンバーグだ。

 あいつが俺のワインも持ち去ろうとした時に、俺はあることを持ちかけた。


「夕飯を別のところに隠しておけってまるで孤児院じゃないですか」

「けっ! ソウタにバレたら騎士団長としての示しがつかないからな!」


 今日は俺が料理を手伝うことがなかったから、酒と一緒に食べるものを隠すことはできなかった。

 だから、ジンに頼んだが同じ孤児院出身のあいつなら隠すなんてお手の物。

 孤児院では少ない食事でどうやって生き抜くかの戦いだった。

 それで俺たちは至る所に隠すことを身につけたからな。

 今は俺たちが孤児院に資金を寄付しているから、そんなことをしなくても前よりは裕福だろう。

 あの当時を思い出したくないから、もう何年も見に行ってない。


「さぁ、ジンも飲め」


 俺はジンのグラスにワインを注ぐ。

 黒に近い澄んだ紅色のワインが光に照らされ、血のような深紅となって静かに透けていた。

 まるで王家の血と言わんばかりの最高級ワインだ。

 それに合わせるのはもちろん――。


「煮込みハンバーグもうまいっすね!」

「ぬぁ!? 俺の分まで食うつもりか!」


 ジンはワインを片手に素早く煮込みハンバーグを口に詰め込んでいた。

 気を抜いたらすぐに取られるからな。


「エルドラン団長、実は隠さなくても調理場にたくさんパンと煮込みハンバーグが残っていたっすよ?」

「はぁん!?」


 俺はすぐに調理場に向かうと、きれいな調理台の上に山のように積まれたパンと鍋には煮込みハンバーグが残っていた。


「ソウタも俺たちが食べすぎないように分けてたのか……?」

「つい食べ過ぎるから仕方ないっす!」


 今日も消えるように煮込みハンバーグとパンはなくなった。

 ソウタが食べ過ぎると夜中にお腹が痛くなるって言っていたから、俺たちへの配慮だろう。

 そんなことをしなくても、俺たちは丈夫なのが取り柄なのにな。

 まぁ、そこがソウタの優しさでもある。


「ここにあるってことは食べてもいいっすか?」

「ああ、食べても良いんじゃないか?」


 俺とジンはコソコソと調理場で煮込みハンバーグを食べていく。


「エルドラン団長とジンは何やってるんですか?」


 偶然通りかかったのはゼノだ。

 匂いに釣られてきたのだろう。


「お前も食べるか?」

「いや、私はもう寝ます。ソウタが早寝早起きした方が良いって言ってたからね」


 あのゼノが人の言うことを聞いている。

 こいつも黒翼騎士団に配属された時は問題児だった。


「相変わらずソウタ思いだな」

「ええ、私はソウタに関しては誰にも負けないぐらい想いが重いですからね」


 ソウタと出会って数日しか経ってないが、ゼノはソウタの何にそこまで惹かれているのか分からない。

 ただ、あいつも家庭環境が複雑だからな。

 確か貴族である親父が女好きで側室が何十人もいたって言ってたっけ?

 その側室に体の関係を求められて、嫌になって逃げてきたと聞いたこともある。


「ゼノが食べないなら俺が食べるっす!」

「なっ、だから俺の分を残せって言ってるだろ!」

「話に夢中になってるのが悪い」


 ジンは本当に食い意地が張っているからな。

 俺も負けじとパンを口の中に詰めていく。

 しばらくすると、鍋にあった煮込みハンバーグとパンはなくなっていた。


「よし、食ったから俺たちも寝るか」

「そうっすね! さっき早寝早起きは良いってゼノが言ってたからな」


 明日早く起きたらソウタもびっくりするだろう。

 嬉しそうなソウタの姿を想像すると、早く寝るのも悪くない。

 俺とジンはすぐに寝ることにした。

 ワインの瓶を調理場に置いたままなのを忘れて――。



「うぇええええええええ!」


 甲高い声に俺は目を覚ました。

 体をすぐに起こして、部屋から飛び出した。


「ソウタ、何かあったのか?」


 朝早く起きたのは俺だけではない。

 騎士たちみんながソウタの声に反応して目を覚ました。

 これが早寝早起きってやつか。

 こんなにすっきりと目覚めた日は過去にあっただろうか。


「エルドラン団長……ちょっとここに座ってください」

「ん? なんだ?」


 これはソウタが褒めてくれるのか?

 孤児院でも褒めてもらったことはないし、大人になったらさらにそれはないからな。

 俺は嬉しくなってウキウキしながら、ソウタの近くに座る。


「エルドラン団長、正座ですよ?」 

「正座……?」


 どうやら座り方が気に入らなかったのか、ソウタの顔がどこか怖かった。

 顔は笑っているのに、背後にはモヤモヤと魔力みたいなものが見える。

 とりあえず、足を組んで座り直してみる。


「違う!」

「はい!」


 どうやら座り方が違ったらしい。

 褒めるのにわざわざ決まった座り方でもあるのか?


「膝を床につけて、足を後ろにたたんで踵の上にお尻を下ろす!」


 とりあえず言われた通りに座り直す。

 なんでソウタは興奮しているんだ?

 そんなに俺を褒めるために興奮しているって……俺は愛されているな。


「お弁当にするために残しておいたパンとハンバーグを食べたのはエルドラン団長ですね?」

「うん? そうだ……お弁当?」

「ええ、お弁当に使おうと残しておいたものが全部なくなっていたんです」


 ソウタの言葉に俺はジンを見つめる。

 それをソウタが見逃すことはなかった。


「ジンさんも正座!」

「はい!」


 ジンは俺の隣に同じように座る。


「エルドラン団長のせいっすよ!」

「いや、見つけてきたのはお前――」

「そこ、うるさい!」

「「はい!」」


 怒っているソウタは怖かった。

 顔はニコニコしているのに、全く優しさを感じない。

 いつものソウタはどこにいったのだろうか。

 俺たち早寝早起きして、褒められるはずじゃ……。


「この二人以外に食べた方はいますか?」

「たぶんエルドラン団長とジンだけかな。私も寝る前に見たので……ソウタおはよう」


 俺たちに対して何も思ってないのか、ゼノはソウタに抱きついていた。

 あのゼノが朝から目をパッチリとさせて起きているとは……早寝早起き恐るべし。


「ゼノさん……あなたもここに座ってください」

「へへへ、褒めてくれるのかな」


 ジンも嬉しそうに俺の隣に座ったけど、明らかにソウタは怒っているぞ。


「止めなかったゼノさんも連帯責任です」

「ソウターーー!」

「甘えた声で言ってもダメです!」


 ゼノは世界の終わりを見たかのような、深い絶望に染まった表情を浮かべていた。


「じゃあ、この三人以外は関わっていないってことで、朝ご飯とお弁当を作りましょうか」

「「俺たちのは?」」

「私のは?」


 調理場に向かったソウタは一瞬振り返った。

 その顔は感情が抜け落ちたかのような真顔だ。


「もちろんなしです」

「「「なっ……」」」

「あっ、僕が良いって言うまでそこに座っててくださいね?」


 またニコリと笑ったソウタに俺は身震いが治らなかった。

 今までどんな強敵とも戦ってきたが、ソウタはその中でも一番強いだろう。

 ひょっとしたらドラゴンよりも怖いかもしれない。

 俺は初めてソウタを怒らせたらいけないことを知った。


お読み頂き、ありがとうございます。

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