41【玉竜旗大会最終日・三ノ森高校戦】〜小笠原浬〜
玉竜旗大会、四回戦。浬にとってはこの試合がデビュー戦となる。
負傷した毛利の代わりに次鋒として選出された浬は、緊張しながらもワクワクして出番を待つが……
その先に待っていたのは、対上段戦の試練だった。
玉竜旗大会の二日目――。朝、九時を回る頃、浬は会場の廊下の隅で、航の隣に座り、面をつけていた。会場内は熱気のせいか、空調がついているのを疑いたくなるほどに蒸し暑く感じるのに、指先だけが、やけに冷たくなっている。きっと、緊張しているのだろう。思えば浬は、この選手用の胴着と袴で、試合に出るのは初めてだった。上腕のあたりに、きれいな緑色の「市立船戸」という刺繍が入っているのがかっこよくて、この選手用の胴着を着たときは、早くこれを着て、試合に出たいと思ったはずなのに、今はその刺繍を重く感じてしまう。昨日からずっとつけていたはずの、胴や垂れも同じだ。浬はとうにつけ慣れたはずの面を、何度かつけ直したあと、やっと面紐をパンッ、パンッ、と、打ちつけるようにして、硬く結んだ。
――それにしてもさぁ、九星学院負けたの、残念すぎるだろ。今年はまぐれのくせ者が出てきたせいで、台無しだよな。
――ほんと、それだよ。玉竜旗で九州勢に勝ったってさぁ、いつかはまたどっかの九州勢に負けるんだから、無駄なのに。なに頑張っちゃってんだか。
――あーあ、どうせなら、九星学院と阿蘇南の対決が観たかったわー。
脳内には、昨日、会場内のトイレで聞いた、陰口が響く。浬は指先が冷えた手を、ぎゅっと握った。底意地の悪そうな、あの他校の二人組の声が、今も忘れられない。あのとき、浬が鏡越しに見たのは、彼らが着ていたジャージだけ。情けないことに、怖くて顔までは見れなかった。どこの高校かはわからない。ただ、言葉に訛りや違和感はなかったから、おそらくは関東の高校だろう。大地は「三ノ森高校の生徒なんじゃないか」と、言っていたが、もし、本当にそうだとしたら「九星学院と阿蘇南の試合を観たかった」なんて、言うだろうか。その二校の対決を見るには、三ノ森高校は、勝ち上がってきた九星学院に負けなければならないことになる。それとも、九星学院とあたったところで、優勝候補に負けることなど当たり前で、そのあと、九星学院と阿蘇南の試合を見たかったとでも、彼らは言うのだろうか。
どうせなら……って、どうせ負けるんだからって、ことだったのかな……。
そんなことを思いながら、かぶりを振る。大地の言う通り、あの陰口は、単に浬のメンタルを崩すための、陰口だったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。だが、浬は思う。どちらにしても、浬がやることは変わらない。陰口を言われても、言われなくても、必死に戦うだけ。相手が誰であっても、目の前の相手に勝つ。それだけだ。
おれにできることを、しっかりやる。しっかり、やるんだ……。
せっかく巡ってきた出番だ。なんとしても活躍して、このチームで勝利をつかみたい。このチームで戦うのは、この大会が最後なのだ。三年生の市鷹や将鷹、毛利は、今日が終われば引退してしまう。今日が過ぎてしまえば、もう彼らと一緒に戦うことはできないわけだ。しかも、浬はその毛利の代わりに、戦うのだから、チーム全員の思いと期待を、託されているといってもいい。しかし、そんな大事な場面で、役割だからこそ、浬はいつになく緊張していた。
絶対、負けたくない……。
一方で、航はすでに面をつけ終わって、少し離れたところで竹刀を振っている。緊張など感じられない、普段通りのその姿に、浬は自分との決定的な差を感じていた。航のメンタルは、やはり強く堅く、ブレがない。これはもはや、才能だ。浬はそんな航を、少し羨ましく思った。
「航……」
「ん?」
「ちょっと、打ちたいんだ。元、やってくれる?」
「あぁ、いいよ」
航はすぐに、浬に向かって構えた。場所が狭いので、近間ではあるが、浬も航に向かって構え、彼の面や小手を軽く打つ。本当に、子どもが遊んでいるような感覚で、軽く。これでは、体なんか温まらないし、準備運動にもならない。だが、これくらいで打っているほうが、浬は安心した。子どもの頃、市民大会に出たとき、浬はきまって、楓を相手にこうして遊んだものだった。
「おーい、集合するぞー」
「あ、はい……っ」
不意に、市鷹から声がかかって、浬は航とともに、そこへ駆け寄った。そのまま、密に円陣を組んで、ごくん、と唾を飲む。背中に乗せられた手には、不思議なほど熱を感じた。両隣は、羽柴と航だ。ふと、彼らに目をやった瞬間、視線がぶつかった。背中からは、彼らの熱が伝わってくる。その熱は、そのまま、浬の体に入って、ひとつになっていくような心地さえする。不思議な感覚だった。
「いいか……九州勢じゃないからって、気を抜くな。この大会に、楽に勝てるようなチームは一校もいない」
「はい」
「だけど、強いのはおれたちも同じだ。絶対に負けない。常に意識するのは、渋い一本勝負だ。渋って、粘って、一本を取る。どんな場面でも慌てないで、常にそれだけ考えよう」
「はい!」
徐々にアリーナの方がざわつき始めている。いよいよだ。いよいよ、二日目の試合が始まる。
「よーし、それじゃ、行くぞ。市立船戸、ファイトォっ!」
「ファイト!」
試合前のミーティングが終わり、やがて、審判員から声がかかる。浬は航と将鷹の間に立ち、整列する。目の前には、相手チームが並んでいた。面紐の結び目の位置、防具の付け方、少し色褪せた、胴着と袴。その出で立ちを見て、すぐにわかる。さっき市鷹が言った通り、彼らはとても楽に勝たせてくれそうにはない。おまけに、すぐそばの観客席には、大きな応援幕が下げられていて、応援組も大勢いるようだ。その数から、浬は相手チームの選手層の厚さを、嫌というほどに感じていた。
三ノ森は強い。強いってことは、わかってる。だけど、勝ちたい……。おれはみんなと、もっとこの大会で、上へ行きたいんだ……!
「はじめぇッ!」
「せぇりゃああああっ!」
「うらぁああああッ!」
玉竜旗、四回戦が始まった。相手校である、都立三ノ森高校の先鋒は、「阿部」という選手だった。航と阿部は、立ち上がりから、激しい間合いの攻防をはじめる。攻め方やそのテンポを見たところ、阿部はかなりスピードがあるタイプのようだから、おそらくは典型的な前衛向きの選手なのかもしれない。
「小手ぇッ、面ッ!」
「おおっ!」
「面りゃあッ!」
間合いが一足一刀に入るか、否か。阿部が飛び出し、小手と面で一本を狙った。だが、航はそれを竹刀で受け、素早く近間から引き面を狙う。狙いどころはよかったが、阿部はそれを予測していたようだった。彼は体を大きく反らして避けたあと、すぐに航を追ってくる。だが、追われた航もまた、素早く体勢を直していた。それを見て、浬はハッとする。
あれ、航って……。こんなに試合のとき、テンポ、速かったっけ……。
「小手、面りゃぁああっ!」
「いいとこー!」
「胴ォーーッ!」
浬は、ごくん、と生唾を飲み、じっと航の試合を見つめる。目の前で、どんどん展開されていく航と阿部の試合に、目が釘付けになった。三ノ森高校の応援がどれだけ盛り上がっていても、双方が激しく打ち合っているように見えても、これまでの航の試合と、今のそれはまったく違っている。その違いに、浬は気付いていた。
気のせいじゃない……。この試合、完全に航のペースだ……。打ち合ってても、阿部くんは、ただ、航についていってるだけだ……。
九州に来て以来、航は大抵の場合、試合のペースを相手に支配されていた。練習試合のときも、玉竜旗の大会中も、おそらく経験したことのない九州勢の素早い相手のペースに必死についていき、わずかな隙を探り、必死にチャンスを作って一本に繋げていたのだ。しかし今、この試合でペースを握っているのは、航だった。たとえ、先に打ったのが阿部だとしても。彼は、航の速い技の展開に懸命についていっている。少なくとも、浬にはそう見えていた。
そうはいっても、決して阿部のテンポが遅いわけでもない。彼の攻めや技のスピードを見れば、それは明らかに千葉の県大会で見たレベルよりも圧倒的に速いのだ。だが、航と比べると、わずかな差であるものの、一歩、遅れを取っているように感じられる。
そっか……。たぶん、航が速くなったんだ……。九州の人と戦って、スピードを急激に引き上げられたんだ……。
このテンポはまるで、九星学院高校の立花と戦ったときのようだ。あの一戦が影響しているのだろうか。航のペースは以前よりも格段に速くなっていた。
航、すごいよ……。たった数日で、急激に変化してる。強くなってる……!
試合が動いたのは、鍔迫り合いになった、その瞬間だった。航が阿部をいなし、わずかにタイミングをずらして引き面を打つ。航の剣先は、阿部の面金に当たった。
「面りゃぁああっ!」
「おおっ!」
有効打突の鈍い音とは違う、金属を叩いたような音が響き、審判旗は下げられたまま、同時に左右に振られる。一本にはならないのは、おそらく航も、打った瞬間に察しただろう。けれど、彼は距離を取るために残心を取っていた。残心を取り、相手と距離を取ればそれだけ、次の技を出すための時間が作れる。たった数秒。たとえ一秒に満たない、ゼロコンマ数秒だったとしても、体勢を整える時間ができる。それに気付いた阿部は、焦ったように航を追ったのだ。
ここ……!
市立船戸高校の応援が湧く。航が残心を取り、ここをチャンスとばかりに阿部が追う。その距離、近づいてくるスピード、タイミングに、浬は思わず、胸を高鳴らせ、息を飲んだ。同時に、小手を嵌めた手に力が入り、ぐっと竹刀を握る。
飛び込んでくる。……狙える!
「面――っ!」
「コテぇぇえっ! コテだぁああッ!」
「おおっ!」
「いいとこー!」
「小手あり!」
バグッ、と音がした直後。航が鮮やかに残心を取り、審判旗が三つ、一斉に上がった。歓声が湧き、主審の声が響く。出鼻を狙った、出小手が見事に決まったのだ。浬は、思わずガッツポーズをしそうになったのをこらえながら、試合場のすぐ近くで準備運動を装って、懸命に竹刀を振った。
すごい、すごい、すごいぞ……。今、航とおれ、たぶん、おんなじこと考えてた……。しかも一本! すごいきれいに決まった! なんか……、めちゃくちゃ興奮する……!
ときどき感じる、航との不思議な一体感。試合を見ているときも、彼と戦っているときも、彼の思考とリンクする瞬間が、浬には時たまある。浬は今、思いがけず、それを感じてたまらなく興奮していた。気分が一気に高揚して、高鳴る心臓から、全身の末端まで血液に乗って熱いものが送られていく。なんだか、途方もなく心地いい感覚だ。緊張のせいで、冷たかった指先までがたちまち温まっていく。
なんか、いい感じ……! 体、あったかくなってきた……!
「二本目ぇッ!」
「うらぁあああっ!」
二本目が始まった会場を横目にしながら、浬は何度か跳躍素振り《すぶり》をくり返す。そうして、自分の中で、急激に高まっていく興奮を発散していた。航の脳内とリンクしたかのような展開には感動したが、あまり浮ついたようなテンションでいるのはよくない。ほどよい興奮は、エネルギーになるが、あまり過剰になると、カラ回りの原因になる。浬は必死に自分に言い聞かせる。
だめ、だめ……、冷静でいないと……。おれは冷静に、渋く粘る試合をするんだから……。
織田は、何度もそれを言った。ゆうべのミーティングでも、朝のミーティングでも。「冷静に、渋く、粘れ」と。そして、いつも一本勝負を意識するように、と話した。ただし――。
――浬。お前はとりあえず、無理しなくていいぞ。思いっきりやってこい。
織田は浬にだけは、付け足すように、そう言った。その言い方はまるで、はじめて試合に出る子どもを相手に言うような感じだった。理由はわかりきっている。浬にとっては、この試合がデビュー戦だからだろう。
中学時代は、剣道部に所属せず、道場の稽古のみで、大会に出た記憶といえば、小学生の頃の市民大会くらい。それなのに今、浬は高校剣道三大大会のひとつともいわれる、九州の玉竜旗大会の四回戦で、毛利の代わりに途中出場している。当然、緊張も興奮も、これでもかというほどにしている。その精神状態を、織田は多少なりとも心配してくれているに違いなかった。ただ、浬はそのとき、ほんの少し、悔しさを感じていた。織田に「無理をしなくていい」と言われたことが、どこか自分だけ、期待されていない気がして、悔しかったのだ。
たしかに、大会出場経験はまるっきりないけど……。でも、おれだって、毛利先輩みたいに勝ちたい……。みんなの役に立つ、戦力でいたい……。っていうか、出るからには絶対勝つ……!
浬はこれがデビュー戦だろうと、慣れない大会だろうと勝ちたかった。航に託されたものを守って、ちゃんと勝って、将鷹に繋ぎたい。ただ、思いっきりやってこいと言われて、無邪気な子どものように出て行って、本当にその通りに戦うのではなく、みんなと同じように、頭を使って、全力で、とことん渋く、粘る試合をして、勝利に貢献したかった。それが、織田の率いる市立船戸高校チームの戦い方であり、必勝法だと、浬は知っているからだ。ただし、織田にとって、今の自分はあくまで「毛利の代わり」であって、応急処置的な穴埋めなのかもしれない。――と思うと、浬はやはり無性に悔しくなった。
おれだって、戦力になるぞ……。織田先生に心配してもらわなくても、航みたいに勝って、活躍して――……。
「おーい、こら。浬……」
「あっ」
跳躍素振りに熱が入っていたところを、不意に声をかけられて、振り返る。そこに立っていたのは、面をつけた将鷹だった。
「マサ先輩……?」
「お前なぁ……、試合直前になにやってんだよ」
「えっと、跳躍素振りです……、けど……」
そう答えると、将鷹は呆れたような目をして、ため息を吐く。そうれから、浬の面金を竹刀で軽く叩いて言った。
「あぃた……ッ」
「緊張してんのはわかるけど、ちょっと落ち着け。試合やる前にバテちまっても知らねえぞ」
「あ、はい……。すみません、つい……」
素振りをやめると、将鷹は安堵したような顔で、航の試合に目を向ける。浬も釣られるようにして、航の試合を見つめた。今、航は、一本を取り返そうと躍起になっている阿部と、激しい攻防を続けている。そうしながら、阿部の反応を窺っては技を出し、隙を探っているようだ。浬の体感で、残り時間はもうあと一分もない、といったところだろうが、航のスピードは変わっていない。以前、速いままだった。
やっぱり、攻めるテンポ、技のスピード、技と技の間の繋ぎ、全部が速くなってるな……。
「航はだいぶ、試合に慣れてきたみたいだよなぁ。スピードも相当、速くなってきてる。あいつ、ほんとにスポンジみてえなヤツだよ。こっちきてからいろんなもん吸収しまくってさ。ほんと、すげえわ」
「はい……」
浬は返事をしながら、ぎゅっと竹刀を握る。航を目の前で褒められて、こんなに悔しかったことなどなかった。航の面のスピードに憧れ、恵まれた体型や背丈を純粋に羨ましいと思っても、悔しいと思ったのははじめてだった。
「おれも……、航みたいにがんばりたい……、です」
「まぁ……、お前はあんま焦んな。ここまで来て、いきなりやったことねえことなんか、できねえんだから。ひとまず今日は、細かいこと気にしないで、自分のできることをやってくればいい。それで今は、百点満点だよ」
「でも……ッ、お、おれだって……、勝ちたいんです!」
思わず、そう返してしまって、浬は口を噤む。織田と似たようなことを将鷹にも言われて、少しムキになってしまったが、将鷹は浬のその反応を見た途端、にやりと口角を上げた。まるで、浬がそう言い返すと、彼はわかっていたかのようだった。
「……お前さ。朝のミーティングで、先生に無理しなくていいって言われたとき、ちょっとムカついたろ」
「え……」
「やっぱりな。あれさ、べつにお前に期待してない、とかじゃなくって、手綱引かれてんだぜ。お前、昨日の夜から、ワクワク感が顔からダダ漏れてっから」
「ワクワク感……」
「お前は今、超強火状態なんだよ。だから、とりあえず、どうどう、ってこと。あんまり興奮してすっ飛ばしすぎると、チャンス見失うぞ。もうちょっと、火弱めとけ」
どうやらいつも以上に興奮していたことを、将鷹には気付かれていたらしい。それも、浬が自覚するずいぶん前からだ。たぶん、今朝のミーティングでムッとしたのも、将鷹にはしっかり見られて、悟られていたのだろう。浬はちょっとだけ恥ずかしくなって、口を尖らせた。
「わかってます……」
「わかってんなら、いいけど」
たしかに、ゆうべはなかなか寝つけなかったし、朝もそわそわと落ち着かなかった。緊張と興奮で、脳がずっと覚醒しているような感覚だった。だが、それは試合に出られることが嬉しいとか、緊張するとか、そういう単純なものではなく、もっと複雑な感情が入り混じったものだった。昨日の陰口のこともあったから、余計だったのかもしれない。
「中火……、くらいにはしときますよ……」
仏頂面でそう答えると、将鷹は、ぶっと噴き出して笑ってから、浬の頭にポン、と手を乗せた。
「……そうだな。浬、いいか。お前はうちの秘密兵器みてえなもんなんだからな。自信もってけよ」
「秘密兵器……?」
「そうだよ。ここに出場してる高校は、オレら以外の誰も、お前のことを知らねえ。なにが得意とか、速いとか、遅いとか、なんにも情報がないんだ。オレらは昨日、出場してる分、誰かに見られてたり、動画に撮られて、対策練られてるかもしんねえけどな」
「はい……」
「だから、思いっきり、やりたい放題やれるってこともある。お前がどういう剣道をすんのか、みんなにちゃんと見せてこい。そんで、オレに繋げ。お前が航から受け取ったもんは、オレが羽柴とイチにちゃんと繋いでやるから」
「……はい!」
返事をすると、将鷹はやっと納得したように、浬の肩をポン、と叩き、チームの控え場所に戻っていった。その背中を見送って、浬は試合場の外で、大きく深呼吸をすると、再び、航の試合に目を向ける。将鷹の言葉が、浬の体の中に入って来て、沸騰しかけた過剰な興奮を、静めてくれたような気がした。
その後、航は制限時間まで粘り、一本を守り抜き、先鋒の阿部との試合を勝ち抜いた。一本勝ちのあと、迎えた対次鋒戦は、惜しい場面もあったものの、引き分け。浬に繋がったのは、中堅の松平との対戦だった。
「悪い、浬。あと、頼んだな」
「うん!」
「ファイト!」
航に背中を叩かれ、ドクン、ドクン……と、心臓が高鳴る。歓声と拍手が鳴り響き、浬は試合場に一歩、入った。松平は、背丈はさほど高くない選手だった。一六八センチの浬よりはやや高いようだが、もしかしたら、その差は数センチほどで、あまり変わらないかもしれない。あっても一七〇センチ強だろう。体つきも、極端にがっしりしているわけではなく、浬は少しホッとしていた。大会での試合経験もほとんどないのに、初戦から体格に差がある選手と戦うのはあまりに煩わしい。浬は、松平と呼吸を合わせて、開始線まで進み、蹲踞をする。
試合に出場している、という感動とともに、浬の竹刀を持つ手には、ぐっと力が入る。将鷹の言葉を、お守りのように感じながら、真っすぐ前を見据える。
――お前がどういう剣道をすんのか、みんなにちゃんと見せてこい。
はい……、マサ先輩!
「……はじめぇっ!」
主審の号令を合図に、浬は立ち上がる。途端にぶわぁっと、全身に鳥肌が立った。つま先から、面をつけた脳天までがぞわぞわしている。ついに、デビュー戦がはじまったのだ。
「うりゃああああッ!」
松平が威勢のいい声を上げ、浬を威圧する。だが、浬は声を上げずに、立ち上がり、すぐに一歩前へ攻めた。これは、九星学院の選手によく見られた、攻め方だった。
おれは試合には出なかったけど、ただ、ぼーっとスコア表書いてただけじゃないぞ。
立ち上がりからの、素早い攻め。特に立花の素早さには、目を疑った。攻めるための、気合いの声を上げる前に、相手よりも先手を取って攻める。前へ出る。それから、相手の反応を見て、技を出す。立花は常に相手より先に攻めることを意識しているような、そんな戦い方だった。浬は彼を真似るように、先を取って攻める。すると、少しずつ攻めるうちに、松平は手元を上げて、反応を示すようになってきた。
この人、手元が上がるタイプか……。
ほんのわずかではあるが、これは松平のクセかもしれない。利用できる。浬は素早く頭を巡らせ、技を組み立てた。手元が上がりやすいのなら、小手か、胴が狙いどころになるだろう。浬がここで確実な一本を取るには、自信を持って出せる技で狙っていくのが一番だ。
よし、いける! 四分たっぷり使って、一本勝負だ……!
幸い、体格差がそんなにあるわけではないので、面も武器としては使えそうだが、ひとまずは得意技で勝負をしたい。浬は、間合いの攻防を続けながら、手元が上がるように何度か足を踏み鳴らし、少しずつ間合いを詰めていった。そうして、一足一刀の間合いから隙を狙っていく。
「……小手ッ、面やぁッ!」
「おおッ!」
「いいとこ!」
我慢できなくなったように、松平が飛び出してきて、三ノ森高校の歓声と拍手が鳴り響く。浬は竹刀で技を払いのけながら、素早く相手の懐に入るようにして、鍔迫り合いに入った。たいして惜しくもない技だったと思うのに、彼らはずいぶんと応援が派手だ。しかし、浬は動じない。試合には出ていなくても、浬はそんなチームをたくさん見てきた。すでに慣れっこだ。
「面――ッ!」
続いて引き面を狙われるが、それも浬は竹刀で避け、残心を使って距離を取ろうとする松平を追った。余裕を与えないように、なるべく素早く、距離を詰めていく。そうして、竹刀の剣先が触れ合うところで、少し大げさに振りかぶる。同時に、ダンッと足を踏み鳴らした。その瞬間、再び手元が上がる。
「ッ手ぇえええッ! 小手だぁああッ!」
「おお―っ!」
自チームの歓声が一斉に上がる。フェイントで手元が上がると予測して、小手を狙ったが、惜しくもその剣先は拳に当たった。審判ははっきり、紅白の旗を左右に振っている。
いい感じだったのに、外しちゃったか……。でも、今度は外さない……!
悔しい気持ちを抱えながらも、頭をすぐに切り替える。近間から、素早く引き面を打ち、そのまま距離を取り、一足一刀の間合いまで松平を遠ざける。そこから、もう一度仕切り直す。
「うらぁああっ!」
気合の声を張り上げ、威圧する。そうしながら、前へ攻める。不意に体を沈み込ませると、松平はすぐに浬の動きに反応した。ふわりと手元を上げ、剣先を逸らし、そのまま焦ったように飛び込んでくる。
「面りゃああ――ッ!」
「おおっ!」
あー……、なんか……、なんだろう……。この感じ……。
浬は松平の打ってきた面を避けながら、素早く距離を取り、再び一足一刀の間合いから攻める。だが、攻めながら、気付いていた。いつの間にか、こんなにも息が上がっている。妙だ。試合中、打ち合ったといっても、浬はまだ、それほど激しい打ち合いはしていないし、制限時間だって、半分も使っていない。
あと一歩のところが、微妙に合わない感じだ……。そのせいかな、この人、やけに疲れる……。
手元が上がるクセがあるということは、もうわかっているのだから、そこは絶対に狙いやすいはずだ。それなのに、浬はどこか松平と息が合っていない感覚がしていた。さっきから、技の選択は決して悪くないのに、技が当たらないのは、たぶん、そのせいだろう。このむず痒いような違和感がたまらなく煩わしい。おそらく浬は今、余計に体力を消耗しているのだ。
今まで、試合なんか、稽古でも練習試合でもいっぱいやってきたのに。大会の試合って、なんか違う……。たいして激しい打ち合いしたわけでもないのに……。
多少なりとも、普段より緊張しているせいもあるのだろう。想像以上に息が上がっているが、浬は焦りたくなる気持ちを必死にこらえていた。ここで焦っては、大事なチャンスを逃してしまいかねないし、逆に相手にチャンスを奪われ、一本を取られる可能性もある。浬は気持ちを落ち着けて、今一度、頭を巡らせた。
――ここまで来て、いきなりやったことねえことなんか、できねえんだから。
ふと、試合前に将鷹に言われたことを思い出す。それの意味を、浬は今、真に理解していた。彼の言っていたことは真実だ。ここまで来れば、誰もが持っていない武器で戦うことなんかできない。体力も精神力も、技も、経験も。それまで培ってきたものだけを、使うことができる。それが、武器になってくれるのだ。もっと技を磨いておけばよかったとか、もっと体力づくりをすればよかったとか、そんなことをこの舞台に立ってから思ってみても、もう遅い。それは本当に無駄な思考と後悔にしかならないと、浬は理解していた。
今、体力のことを考えてもしょうがないや。確実に一本、狙ってくぞ……。
浬は攻めながら、感じていた。今の自分では、何試合も連続で戦える体力はないのかもしれない。せいぜい二試合くらい。――いや、激しい打ち合いになれば、一試合をこなすだけで、かなり苦しいかもしれない。勝ち進んだとしても、体力不足が祟って、おそらくは、どんどんパフォーマンスが下がっていくだろう。しかし、そうであったとしても、浬は今、この試合で体力を温存しておく気はなかった。この試合でへとへとになったとしても、だ。
おれは、おれの剣道やって、松平から、一本を取る……。それが最優先だ。
全力で、自分の剣道をやる。そうでなければ、強者を相手に確実な一本など取れるはずもない。ましてや、合わない、やりづらい、と言い訳をしながら、いたずらに時間と体力を消耗して、一本も取れないまま下がるなんて、そんなかっこ悪いことがあるだろうか。
まともに動けるのが、この試合だけでもいい。勝ち点を取る。そんで、マサ先輩に繋ぐんだ……!
「面――ッ!」
「……っ」
もう一歩、前へ攻めてみようとしたところで、また松平が打って出てくる。それを再び避け、浬と松平は近間になった。だが、その瞬間、浬は気付く。ここはチャンスかもしれない。
狙える……!
近間は、危険な間合いだ。相手と中途半端な距離で、激しい打ち合いになりやすく、また打たれやすい。ただし、それは逆のことも言える。足を止めずに、策さえあれば、この近間が一番打ちやすい間合いにもなるのだ。浬は近間で、やや大げさに振りかぶり、松平の引き小手を狙った。
手元が上がるクセがあるなら、なにも間合いの攻防に限ったことじゃないはずだ……!
浬は鍔迫り合いから、松平の手元をいなすようにして、引き小手を狙った。わずかに手元が上がる。その瞬間、タイミングを合わせ、竹刀を素早く左の脇下へ引きながら、落とすようにして打った。
「――コテぇええッ!」
「おおっ!」
鈍い音とともに、歓声が上がる。手には、松平の小手を確かに打った感触が、しっかりとあった。浬は、松平から、逃げるようにして夢中で残心を取る。引き技が一本になる決めてとして、残心を取ったときに、相手と距離が取れているかどうかは、かなり重要なのだ。距離が取れていないと、いくら有効部分に当たっていても、引き技の場合は一本として認められないことも多い。松平が慌てて追ってくるが、すでに距離は十分に取れている。直後、審判の白い旗が、三つ揃って上げられた。
「小手あり!」
「おぉーッ!」
「いいとこ―!」
と……、取ったぁああ……!
思わず、チームの控え場所に目をやり、それから将鷹のほうにも振り返る。航は拍手をして、「浬、いいとこー!」と叫び、将鷹は場外の隅で、何度か頷きながら、拍手をしてくれていた。織田も頷いて拍手をくれる。それを見た途端、たちまち嬉しさがこみ上げてきて、自然と顔がにやけてしまった。
よっしゃあ……、やった……! 大会の試合で、はじめて一本取った!
「浬ィいいいいーーッ! いいぞ、いけぇええッ、もういっぽーーーーーん!」
不意に、耳をつんざくような、だが、腹が立つほど聞き覚えのある声が耳に飛び込んできて、ハッと我に返る。今のは間違いなく、父、志郎の声だ。浬は面金の中で、下唇を突き出した。
父さん、うるさいなぁ……。審判に怒られたらどうすんだよ……。
仮にも、彼だって町の剣道道場を取り仕切る師範だというのに。浬は観覧席をジトっと睨みつけてから、開始線へ戻って構えた。見れば、主審は観覧席から降ってくるやかましい応援の声に、すでに鋭い視線を向けているではないか。楓と母が、彼を両サイドから押さえつけているのも見えて、浬は呆れる。そもそも、いつの間にか市立船戸高校のメンバーに混ざって応援しているのにも、呆れる。だが、おかげで少し、息が整った。
なんか、すげえ気分、軽くなったかも……。父さんのおかげだなんて、絶対、そんなこと思いたくないけど、でも、これならもう一本、狙えるかもしんない!
「二本目えッ!」
「うらぁああっ!」
よっしゃあ、もう一回! 一本勝負だ……っ!
二本目が始まり、浬は気合いの声を上げて、前へすぐに攻める。ところが、次の瞬間。息を吸ったタイミングで、松平が飛んできた。
え……、やば――……ッ!
「メンだぁあああっ!」
「おおっ!」
剣先がスローモーションのように見えたかと思うと、脳天にずしん、と衝撃が乗る。さっきとは違う方向から歓声が湧き、拍手が鳴った。浬は構えを崩したような格好のまま、残心を取る松平を見つめることしかできなかった。すぐそばで主審が赤い旗を上げる。慌てて振り返ると、背後でも赤い旗が二つ、上がっていた。
だああああッ、やられた――……!
「面あり!」
「いいとこーッ!」
あぁ、もう。なにやってんだ、おれ……! せっかく一本取ったのに……。
不意に、背中に冷たい視線を感じて、浬は織田に目を向ける。すると、織田は鬼のような形相でこちらを睨みつけ、「いけ」とばかりに顎をしゃくった。浬はごくん、と生唾を飲み、助けを求めるように将鷹に振り返る。すると、将鷹は「落ち着け」とジェスチャーをしてくれた。
そうだ……、ひとまずは落ち着かないと。落ち着いて、一本を取り返すんだ……。もう一回やるぞ、もう一回――……。
開始線へ戻る途中、航と視線がぶつかった。浬が小さく頷くと、航もまた、答えるように頷く。
「浬、一本集中!」
不意に、航の声がはっきりと聞こえてきた。浬は目を閉じ、大きく深呼吸をする。航はきっと、信じてくれているのだ。浬なら、もう一本取り返せるはずだ、このままでは終わらない、と。彼の熱い視線を感じながら、浬は目を開け、真っすぐ前を向き、松平を見つめ、構える。そうして、主審の号令を待った。
よし。もう一回、一本勝負だ……!
「……勝負!」
「やぁさああああッ!」
「うらぁあああっ!」
三本目が始まった。歓声が沸く。一本を取った直後、すぐに取り返されてしまったせいで、時間はあと一分くらいは残っているだろう。一分もあれば、十分に一本を狙える。浬は攻めた。間合いは少しずつ近づき、一足一刀の間合いに入る。
あれ――……。
三本目ともなれば、激しい打ち合いになるだろうと予想していたが、松平はさっきと違い、ひどく慎重だった。果敢に、積極的に攻めるというよりも、どちらかといえば、浬の反応を窺いながら、打ちづらい間合いをあえて作っているような感じだ。
もしかして、この人……。守りに入ってんの……?
松平は、三ノ森高校の中堅。市立船戸のチームなら、将鷹のポジションにあたる。チームの中では要となる三本柱のひとつで、点を稼ぐための重要な役割を、彼は担っているはずだ。当然、ここは勝ち抜きたいはずで、浬を相手にもう一本を取れる可能性だって十分にあるだろう。だが、浬のカンが当たっているとすれば、彼は今、無理をしない選択を取ろうとしているのかもしれない。残り一分で、本気でもう一本を取るつもりなら、今の松平の攻め方は妙だ。あまりに落ち着いている。
元々、慎重なタイプなのかな……。でも、悪いけど、おれは引き分けで潰されるなんて、絶対嫌だ。絶対に、絶対に嫌だ……!
勝ちたい。浬には今、それしか見えなかった。浬は攻め、さっきと同じように、ダンッと足を踏み鳴らし、隙を狙う。なかなか、体勢は崩れないが、やはり、わずかに手元が上がるようだ。どんなに攻め方を変えて、策を練っても、クセというものはそう簡単に直るものではない。
「小手ぇっ!」
手元を狙って小手を打つが、鍔元に当たり、そのまま鍔迫り合いになる。引き技を狙ってみたものの、一本目に打たれた引き小手の影響があって警戒されているのか、なかなか体勢が崩れない。
「面――ッ!」
そうこうしているうちに、逆に引き面を狙われた。浬は落ち着いて技を払い除け、残心を取る松平を追う。間合いは遠間になり、再び間合いの攻防に入った。その瞬間、全身にぶわっと鳥肌が立つ。心臓が高鳴る。ここはチャンスだ。それは浬だけではなく、松平にとっても同じことが言える。
きっと、この人……、ここで打ってくる……。そんな気がする。
いくら守りに入っているといっても、亀が甲羅に手足を引っ込めるように、全く打ってこないまま、制限時間までやり過ごそうというわけではないだろう。そんな戦い方をすれば、審判の目に留まり、注意喚起をされるか、あるいは反則を取られるかもしれない。たぶん、絶好のチャンスにのみ、彼は技を仕掛けてくるはずだ。
そして今、守りに入っていることから推測すれば、松平は対処技を考えている可能性が高い。浬が動くのを待って、それに対して技を選択しようとしているのだ。浬はそう予測する。しかし、この状況こそ、浬にとって絶好のチャンスだった。
狙える――……!
浬は攻め合いながら、松平の動きに集中した。一足一刀に入ったところで、剣先をすっと下げる。そうして、松平の竹刀の下をくぐらせるようにして、手元を狙った。
「小手ぇッ……」
狙った小手打ちは当たらない。だが、これも策のうちだ。松平は待ってましたと言わんばかりに、手元を返し、打ち込んでくる。その瞬間。浬は素早く懐に入るようにして、松平の右の腹を狙った。
「面――ッ!」
「ドォりゃーーーーッ!」
「おおーっ!」
パァンッ! と乾いた音が響き、歓声が沸く。浬は松平の左側をすり抜けるようにして、胴を打ち抜き、残心を取った。場外のラインをすでに超えてしまったようだが、気にしない。浬は確信していた。審判を確認する必要なんかない。浬が場外に出るよりも早く、この胴打ちは間違いなく一本になっている。
「胴あり!」
振り返ったのと同時に、主審の声を聞いた。見れば、三つの旗がきれいに揃って上がっている。目の前で、松平はがっくりと頭を垂れていた。胴が入った。一本だ。
よっしゃ、抜き胴決まったぁ……!
「よおしっ、浬! いいぞーっ! お見事ぉーーーーっ!」
浬は開始線へ戻り、構える。背後には、割れんばかりの拍手とともに、審判に怒られないか、心配になるほど熱狂する応援の声が聞こえている。だが、それも今は、不思議と鬱陶しいとは思わない。むしろ、背中を押され、エネルギーになってくれる感覚があった。
すごい……。試合に出ているのは、おれだけなのに。ここにいるのは、おれだけじゃない。みんなで戦ってる。みんながここにいる……!
「勝負あり!」
拍手と歓声。そこに仲間の熱い視線と強い思いが含まれているのを、浬はたしかに感じていた。浬は、松平と息を合わせて蹲踞をすると、試合場のライン際まで一度下がる。下がりきったところで、不意に将鷹の声がした。
「浬、いいとこ! いいか、そのまま集中、切らすなよ」
「はい……!」
将鷹の声をしっかり背中で受け止めて、浬は頷く。この市立船戸高校の団体戦で、初出場の試合をなんとか勝ち抜いた浬は、対副将戦に臨んだ。
しかし――。試合場から下がった松平とすれ違いに入ってきた、背の高い選手の姿に、浬は唖然とし、圧倒される。
げえ、デッカー……。
垂れネームには、長谷川とあった。息を合わせて、三歩で開始線まで来ると、さらに、その大きさと自分との身長差を思い知らされる。蹲踞をしても、長谷川の大きさは脅威的だった。おそらく、このチームの誰よりも、彼の背は高い。将鷹よりも、市鷹よりも、航よりも。
すごいな、この人……。背、何センチあるんだろ……。――って、そんなこと今、どうでもいいって! ……集中、集中!
「はじめぇ!」
「せぇやぁあああっ!」
「うらぁああああッ!」
立ち上がり、長谷川と同時に声を出す。すくっと立った長谷川の構えた瞬間、浬はぎょっとした。長谷川は左足を前に出し、右足を後方へ下げる。そうして、そびえ立つ剣山のように、竹刀を掲げた。この構え方は、ついさっき、対九星学院との試合で見たばかりだ。
えぇ……ッ! この人、上段だったの……!
「うらぁああああッ!」
気合の声を上げて、長谷川が攻めてくる。浬は頭が真っ白になって、数歩、後方へ下がった。そこをすかさず、長谷川は攻め込んで、距離を詰めてくる。ところが、その時だ――。
「浬、足ッ! 止めんじゃねえ!」
背後から、将鷹の声がして、浬はハッとした。そうして、慌てて中段の構えから、平晴眼の構えに変化させた。剣先をわずかに右に逸らし、長谷川の左小手へ向ける。同時に、足を動かした。脳内でイメージするのは、ついさっきの大将戦。市鷹と九星学院の大将、大友の試合だ。
そうだ、さっきの試合……。イチ先輩の動き、戦い方、技を……、思い出すんだ……!
浬は自分にそう言い聞かせて、足を動かし、長谷川の左小手を攻める。ダンッ、ダンッ、と足を踏み鳴らし、リズムを細かく変えて、動きを予測されないように、距離を詰めていく。
対上段との稽古は、普段から、技の稽古の中に組み込まれていた。だから、ある程度の戦い方は理解しているし、時々、上段使いの雑賀と稽古をすることもあるわけで、決してそれに不慣れなわけではない。ただし、稽古はあくまで稽古だった。実戦経験が乏しいうえに、残りの体力もやや厳しいと感じる中で、対上段戦は、浬にとって大きな試練のようなものだった。
すごい迫力だ……。背丈が高いってのもあるけど、上段の威圧感って、ほんとにハンパないな……。
足を果敢に動かして攻めても、打っていける気がまるっきりしないし、打ち込む技も決められない。そうしているうちに、長谷川はじりじりと距離を詰めてくる。浬がいくら足を踏み鳴らしたところで、長谷川にはまったく効いていない気がした。だが、それでも、攻め続けるほかに、方法はない。この四角い試合場の中に入ったのなら、逃げることなどできはしないのだから。
思い出せ……。イチ先輩の動き方……。攻め方……。
浬は、必死に足を動かして、ひたすらに前へ、前へ攻めた。どの場面を思い出しても、市鷹が間合いで下がったところなんてなかったはずだ。だが、やがて、長谷川との距離はギリギリまで近づく。これ以上近づけば、おそらく彼は打ってくるだろうが、そうかといって、安易に飛び出せば確実にその動作に入る瞬間を狙われる。
おれの背丈からして、この人が打ちやすい技は面……。イチ先輩は上段相手にガンガン攻めてたけど……。
浬だってさっきから攻めている。けれど、この体格差のせいだろうか。長谷川はちっとも下がってくれないし、反応もない。ただ壁のように迫ってくるだけだ。浬は頭を巡らせる。市鷹と浬は体格もポジションも、プレイスタイルも全く違う。彼と同じように攻めたところで、うまくはいかないかもしれない。
「面だああああッ!」
「おおっ!」
「……小手ぇええええッ!」
長谷川が片手面を打ち、浬はそれを竹刀でかわし、素早く引き小手で距離を取る。策がない状態で、近間にいるのは危険だ。ところが、長谷川は引き小手の残心を取る浬を追ってきている。浬は急ピッチで頭を巡らせた。
よく見て、考えろ……! 上段には慣れてないけど、絶対に勝てないわけじゃない。長谷川がなにを考えてるのか、考えて読むんだ……!
ただし、この流れでは浬は、圧倒的に不利だ。かろうじて体勢を保ってはいるが、追い詰められていることに変わりはない。長谷川からすれば、ここで片手面を狙いたいところだろう。小手や胴も可能性としてはある。だが、浬が彼なら――。
相手が動く瞬間を狙った、片手面……。一択!
浬は下がりきったところで、体勢を整えながら構える。背後にはわずかなスペースしか残っていない。ここは、ほとんどライン際だ。上段に構えたまま、浬を追ってきた長谷川と、間合いが近づく。浬は半歩、踏み込んだ。その瞬間。長谷川が打ってくる。
「面りゃああっ!」
「……ドりゃぁあああーーーッ!」
「おおっ! いいとこ!」
浬は、長谷川の懐に潜り込むようにして、胴を打ち抜いた。抜き胴だ。パァンッ! と乾いた音が鳴り響き、歓声が湧く。一本が決まった感触はあるものの、まだ確認できない。とにかく残心を取り、試合場の反対側まで距離を取った。残心は、少し大げさなくらいでちょうどいいのだ。そうして、振り返る。最初に目に入ったのは、赤い旗だった。
一本……、入った……!
「胴あり!」
「いいとこーッ!」
割れんばかりの拍手が鳴り響く。浬は上段の長谷川の腹を打ち抜き、一本を勝ち取ったのだ。肩を上下させながら、何度か赤い旗を確認し、試合場の外で待つ、将鷹に視線をやる。すると、将鷹は手の平を胸の辺りで上下させるジェスチャーをしながら、口元を動かしていた。浬はそれを確認する。
落ち着けよ――。
将鷹が言いたいことは、おそらくそれだ。せっかく取った一本を守れと言いたいのだろう。浬もそれはわかっている。今、勢いがついたまま、二本目の試合を始める必要も、無理に二本目を取りにいく必要もない。それよりも、一度冷静になって、この一本をしっかり守ったほうが無難だ。そうすれば、浬はこの試合を勝ち抜き、チームをより有利な状態で勝利に導いていける。
派手に動かなくていい。おれはここを守るんだ。守ればいい――。
浬はごくりと生唾を飲み、面金から覗く長谷川の目を見つめる。そうして、主審の号令を待った。
「……二本目ぇッ!」
「せぇやぁあああッ!」
試合再開を報せる号令とともに、浬は気合いの声を張り上げる。一方で、長谷川はすぐに距離を詰めてきた。当然だろう。長谷川は先取された一本を、取り返しにいきたくて、必死になっているはずだ。だが、浬は彼のペースに合わせなくていい。剣先はさっきと同じ、長谷川の左小手を狙う。ただ、もう必要以上に攻めるよりも、この有利な状況を維持するために、間合いを取った。
残り時間はあとどれくらいだろう。もう半分は消費したような気がするが、感覚だけで確かではない。いつもなら、もう少し冷静に時間経過を感じられるはずだが、浬はその余裕をやや失くしていた。時間はまだまだ、たっぷり残っているような気もするし、ほとんど残っていないような気もする。しかし、視界の隅にいる試合場係の動きを見るほどの余裕もない。長谷川がさっきよりも勢いをつけ、間合いを詰めているせいだ。
くそ……、なにを狙われてるのか、全然読めない……。
間合いが近づけば、浬はその分だけ下がる。また距離を詰められて、また下がる。それをくり返した。だが、そうしているうちに、また背後のスペースが狭くなっていることに気付いた。
まずい……。またライン際だ……。
無理に一本を取りにいく必要はなくても、こうして一方的に攻められて、逃げているだけでは、一本は守れない。だが、無理に攻めて、飛び込んでいくのも危険だ。ここでどう戦えばいいのか、浬は迷っていた。迷いながら、ただ、一刻も早く時間切れを報せるブザーを待ち侘びていた。
時間……。早く時間過ぎろ……!
ひとまずはこうしながら、長谷川が動いたときに、対処する準備だけはしておけばいい。それが安全だろう。ところが、そう思った時だった――。
「……ッ!」
「……おツキだぁあああッ!」
長谷川との距離が、静かに、そして急激に近づいた――と、思うが早いか。浬は、喉元をぐうっと押されるような衝撃に襲われた。同時に、長谷川の声が強烈なまでに響く。直後、視界の隅で白い三つ、審判旗が一斉に上がった。
わぁっと歓声が湧いた。三ノ森高校チームの熱気と歓声が渦巻く中、浬は呆然として、立ち尽くす。
「ツキあり……!」
主審の声が響き、拍手が鳴り響いた。突きの一本だった。長谷川は浬の目の前で、一度、中断で構えると胸を張り、竹刀を片手で持ったまま、軽い足取りで開始線へ戻っていく。その一連の動きに、浬は言いようのない悔しさを抱かずにいられない。今、長谷川の構えた姿が、浬の目には、まるでガッツポーズのように見えたからだ。
くっそぉ……!
どうしてなのだろう。浬は面や小手、胴よりも、喉元を突かれるのが、ほかのどの場所を打たれるよりも悔しかった。理由はわからないが、圧倒的な実力差を見せつけられたような、そんな気がしてならない。幼い頃、兄たちと稽古をしたときのような感覚。追いかけても追いかけても、勝てるはずがない――と絶望した気持ちを、なぜか思い出してしまうのだ。
浬は奥歯をぎりり、と噛み締め、開始線へ戻った。すでに長谷川はそこに戻っていて、ややリラックスした構えで立っている。面金のすき間からは、真っすぐ刺すような視線が浬をとらえていた。
改めて対峙して、浬は背丈の高さを思い知らされる。まるで、高い塔の上から見下ろされているようにも思えて、それが実力差を物語っているような心地にさせられる。だが、かぶりを振った。そうして構え、前を向き、覚悟を決めてその視線を拾う。その瞬間、ぞくり、と首の後ろに鳥肌が立った。
――お前はここで潰すから。
そう聞こえた気がしたのだ。だが、浬だって潰すと言われて、大人しく言われるがままにされるわけにいかない。
いやだ。悪いけど、おれはもう少しここにいたい。まだ、ここで戦いたいんだ。
心の中でそう返し、浬はごくり、と唾を飲み込んだ。そうは言っても、このまま時間切れになってしまえば、浬は一本負け。長谷川を先へ進ませることになる。しかし、浬としてはどうしてもここで彼を沈めておきたいところだった。
中堅である松平を負かした浬に、突きの一本で、まるで仇を討ったように長谷川が勝利をあげたとしたら。長谷川だけではない。三ノ森高校チーム全体が調子が上がって勢いづくのは、目に見えている。
マサ先輩なら、勝てない相手じゃないと思う。でも、おれだってここで負けて当然じゃない……!
まだ勝機はある。そう自分に言い聞かせて、浬はじっと長谷川を見つめた。
「……勝負!」
「うらぁああああッ!」
「せぇりゃああああッ!」
主審の声を合図に、長谷川は上段に構え、気合いたっぷりの声を上げた。浬もまた同時に声を上げ、剣先を長谷川の左小手へ向ける。だが、さっきとは違い、そこから大きく前に一歩、攻めた。
一気に距離が近づき、長谷川はすぐさま反応して、構えた竹刀を下ろし、浬の竹刀をパンッと払った。それから後方へ下がって距離を取る。好ましい反応だ。彼は間合いが近づくのを嫌がっていた。
大丈夫、取れる。一本取り返すぞ……。
長谷川の動作を、浬は静かに見つめる。そうして、ダンッ、ダン! と床に足を踏み鳴らし、また大きく一歩攻めた。長谷川の手元がまた下がる。浬の竹刀を払い、距離を取る。その瞬間、浬はさらに距離を詰め、左足を引きつける。――次の瞬間。長谷川の脳天めがけて、思いきり飛びこんだ。
「メンりゃあああああッ!」
「面だぁああッ!」
「おおっ!」
「いいとこー!」
浬は声を張り上げ、技を決め、必死で残心を取る。同時に、目の前では長谷川もまた、声を上げ、残心を取っていた。会場の脇では、両チームの歓声が響く。まるで「今のはうちの浬の面だ」「いいや、長谷川だ」――と張り合っているかのように。
浬の脳天には今、たしかに竹刀で打たれた衝撃が残っている。長谷川の竹刀が乗ったのだ。だが、同じく浬の手にも、長谷川の面をたしかに打った証ともいえる衝撃が、しっかり残っていた。
相打ちじゃない。今のはおれの面だった……!
そう言わんばかりに、浬は審判に必死にアピールをして、残心を取る。しかし、視界の隅では、赤と白の旗が下げられたまま、左右に振られていた。これは一本ではない、という審判の意思表示だ。
それを見た瞬間、浬は落胆する。だが、瞬時に気持ちを切り替え、残心を取るのをやめた。そうして、再び長谷川に向かっていく。遠間から一気に距離を縮め、一足一刀の間合いまで近づていく。
認められなかった一本を必死に主張して、駄々をこねるような時間も余裕も、浬には残っていない。時間がまだ許されるのなら、選択はひとつだ。
もう一回……!
技をしかけるチャンスは、これが最後かもしれない。とはいえ、策を考えるような余裕はもうなかった。
浬は半歩入り、長谷川の脳天に剣先を向けた。長谷川はもう、浬の竹刀を払おうとはせず、上段の構えのまま、浬を見つめている。まるで、浬に照準を合わせているようだ。おそらく、浬のわずかな隙を狙って、タイミングを合わせて脳天を打ち抜こうというのだろう。
技を出す瞬間には、必ず隙ができる。つまり、次に打ち込んだ瞬間、浬は打たれるかもしれない。だが、それでも。このままでは終われない。浬は片時も視線を離さなかった。
……大丈夫だ、いける。
浬は手元を上げ、わずかに振りかぶる。視線は長谷川の脳天から離さない。そうしながら、右足を前へ出し、ダンッと、足を踏み鳴らす。長谷川は微動だにしない。やはり、浬の出鼻を狙っているのだ。
……いけえッ!
浬は心の中で、自分に一喝する。そうして、次の一瞬――。素早く長谷川の懐へ入り込むようにして、その右腹を思いきり打ち抜いた。
「ドォりゃあああああーーーーッ!」
「面――ッ」
「おおーっ!」
「いいとこーーッ!」
パァンッ! という乾いた音と、歓声、拍手が同時に鳴り響いた。浬は長谷川の体の右側へすり抜け、ライン際まで夢中で残心をとり、振り返ると、すぐに構えた。
背後から長谷川が追ってきていたら、きっと振り向きざまに打ってくるだろう。そう予想していたからだ。しかし、当の彼は――掲げられた三つの赤い旗に囲まれ、試合場の真ん中で天を仰いでいる。
「胴あり!」
主審の声が響き、割れんばかりに拍手が鳴った。試合場の外には将鷹が立ち、深く頷きながら、小手をしたまま拍手をしているのが見えた。
一本、取れた……。
浬の胴技の一本が決まった。浬は取り返し、試合を五分に戻したのだ。
「浬!」
不意に呼ばれて、声の主を探す。辺りを見渡し、振り返ると、織田がジェスチャーで両手を広げ、上げ下げしている。「落ち着け」と伝えているのだ。その隣で、市鷹が自分の手首を指差し、やはり浬になにか伝えようとしていた。
時間はもうないぞ――。
おそらく市鷹が伝えようとしているのは制限時間のことだろう、と浬は推測する。残り時間がわずかなら、試合が再開されたとしても、もう浬が無理をする必要はない。浬はこの試合に勝利はできないかもしれないが、時間がないのに慌てて出ていけば、少なからず隙を見せることになる。
今、長谷川はなんとしても、状況を有利にして後ろへ回したいと、焦っているはずだ。彼はきっと、試合再開とともに、ここぞとばかりに猛攻撃を仕掛けてくるだろう。そんな長谷川に、浬が合わせる必要はない。
大丈夫。おれがここで下がっても、後ろにはマサ先輩がいる。羽柴先輩も、イチ先輩もいる。だから、大丈夫!
双方、一本ずつ取った状態で、次に一本を取られれば、二本負けだ。負けてしまえば、苦労して取り返した一本も水の泡。それよりは、このまま、引き分けのままで終わらせるほうがいい。そうすれば浬は、長谷川をここで沈めることができる。有利な状態で、後ろの将鷹、羽柴、市鷹に試合を回せるのだ。
長谷川さんをここで沈めて、マサ先輩に回すぞ……!
浬は深く呼吸をして、開始線へ戻り、構える。ほどなくして主審の「勝負!」という掛け声があったあと、数秒して、時間切れを報せるブザーが鳴り響いた。浬はホッとして、構え直す。目の前で、長谷川はがっくりと肩を落としてから、力なく中段に構えていた。
「引き分けぇ!」
浬は長谷川と同時に蹲踞をして、後方へ下がる。下がりきったところで、背中をトン、と優しく叩かれた。浬が一礼をして振り返ると、小手を嵌めた将鷹の手が頭に乗る。
「がんばったな、浬」
「マサ先輩……あと、お願いします」
浬の言葉に中堅の出番を待っていた将鷹は、面金の中で目を細め、静かに口角を上げる。そうして、試合場へ足を踏み入れた。
市立船戸高校、次鋒の浬と三ノ森高校、副将の長谷川の試合は、引き分けで、中堅の将鷹に引き継がれる。残るは大将の太田、ただひとり。将鷹は有利な状況で、対大将戦を迎えることとなった。
「はじめぇッ!」
「うらぁああっ!」
「いやぁさぁあああっ!」
試合場内では、将鷹と太田の試合がはじまった。浬はふたりの気合いの声を背中で受けながら、自チームの待機場所へ戻る。勝利はもうすぐそこに見えていた。将鷹が太田に勝利するか、あるいは引き分けだとしても、市立船戸高校チームを勝利へ導けることには変わりない。
「おつかれ、浬。すごかったな、大活躍だったじゃん」
そう声をかけてくれたのは航だった。憧れにも似た感情を抱いている手前、航に肩を叩かれ、褒められて、浬はちょっと照れくさくなって笑みをこぼす。
とにかく無我夢中で、必死に戦ったデビュー戦の二試合だった。自分が活躍していたとか、すごかったとか、そんなことを考える余裕はこれっぽっちもなかったが、航にそう言ってもらえただけで、浬はただ、純粋に嬉しかった。
「ありがとう……でも、勝てなかったし、上段きつかったよ。長谷川って人、強かったし」
「いや、デビュー戦で上段とやって、あれだけ戦えるのはすごいって」
照れくさいあまり、浬はなにも答えられないで、口を噤む。そうして、そのまま面を取りながら、将鷹の試合に目をやった。
マサ先輩、ファイト……!
浬は心の中でエールを送る。将鷹は勢いづき、前の試合よりもいくらか調子を上げているように見えた。浬はそんな将鷹を見つめながら、はあっと深く息を吐く。チームにとって有利な状況のまま、後方へ繋げられたことに、改めてひどく安堵したのだ。
「おれ、よかったぁ……ちゃんと繋げられて」
そう呟くと、再び航に肩を叩かれる。その後、将鷹と太田の試合は、将鷹の一本勝ちで制限時間の四分を迎えた。市立船戸高校対、都立三ノ森高校の試合は、三対〇で、市立船戸高校が勝利。浬たちは五回戦へと進むことになったのだ。
しかし、試合後、浬たちにはこれまでにない緊張感が漂う。五回戦で市立船戸高校を待ち構えていたのは、誰もが予想していた強豪校。熊本県立阿蘇南高校。通称、阿蘇南だった。
彼らはインターハイ優勝の常連校であり、ここ、玉竜旗大会でも何度も優勝経験を持つ。あの九星学院高校とは、いわばライバル関係ともいえる、猛者揃いの強豪校だった。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!




