第24話 塗り替わる思い出
――また、この夢だ
「行くぞ、アリス!」
「うん! ハヤト!」
ハヤトと一緒に戦う夢。いつもハヤトの力強さに助けられて、だから戦い続けることができた。
「ハヤト、危ない!」
「すまんアリス、助かった!」
時にはハヤトを助けて、アリスは勇者として戦ってきた。
「お前が勇者として認められればなあ……もっと豪勢な食事とかできるんだろうけどなあ……」
「正体不明のドラゴンファイターには言われたくないよ……」
どうでもいい会話をして。
「これが……勇者のマント……!」
「やったな! アリス!」
一緒に喜びあって。
「ハヤトの変態! 覗きなんて最低!」
「間違って男湯に入ってきたお前が悪いだろ!」
ケンカもして。
「ハヤト、魔王軍との戦いが終わったら、どうするの?」
「元の世界に帰りたい……が、帰れるのかな……手がかりも見つからないし……」
「もし……よかったら、一緒にライファ村で……」
「ん? なんか言ったか?」
「……なんでもない!」
アリスは、ハヤトと一緒にいたかったのだ。勇者とかドラゴンファイターとか関係ない。お互いに支えあうことができる相棒と、ずっと一緒にいたかった。
なのに……
ハヤトは処刑された。
いなくなるなんて想像もしていなかった。
アンリミテッドとオーバードライブの長時間使用の影響で気絶していたアリスには、何もできなかった。
目を覚ました時、ハヤトは死んでいた。
「ハヤト……ハヤト……!」
アリスは飛び起きた。
空は暗い。まだ夜のようだ。
「ハヤト……」
どんなに呼んでも、ハヤトは戻ってこない。アリスにはもう、勇者として戦っていける自信はなくなっていた。
それでもアリスが戦っているのは、それがハヤトの最期の願いだから。
「弱音は吐けない……魔王軍を倒すまで、僕はもう止まれない……」
『勇者の仲間たち』と共に旅に出ると決めた時、アリスはそう決めたのだ。
大丈夫、ハヤトはずっとそばにいる。
それでも、
もしそうなると分かっていたのなら、
もっと早く、ハヤトに――
「……それにしても、なんかボーっとするなあ。いいにおいがする」
寝ぼけているのかな?
そういえば、このきれいな首飾りは何だろう?
「アリスちゃーん」
ボルトさんの声が聞こえる。
「……どうしたんですか、ボルトさん」
ボルトさんは……勇者の仲間で……
いや、違う。ボルトさんとはずっと一緒にいたじゃないか。
封印の森で初めて出会って、一緒に戦って……
「なんでもないよ、アリスちゃん。おやすみ」
「……うん。おやすみ、ボルトさん」
ボルトさんは、ライファ村を出た時から共に戦ってきた相棒だ。
いろいろな苦労を共にしながら、ここまで旅をしてきた。
後から加わった、他の勇者の仲間たちとも仲が良い。
僕はこの人と一緒だから、勇者として戦ってこれた。
ドラゴンファイターに騙されそうになった時も、必死になって僕のことを救い出してくれた。
だからこれからも、ボルトさんと一緒に戦う。
「魔王軍を倒したら、ボルトさんと一緒にライファ村で暮らせるかな……?」
しくじり10 仲間を洗脳