第23話 手を組む三人
「スナイト殿、このパーティの面々……アリス殿を除いて、なにか不審ではありませんか?」
「そうですか、ゴーシュさん? まあ、皆さん怖いですけど……」
温泉につかりながら、重装戦車のゴーシュと氷狙撃手のスナイトが話す。
今温泉にいるのはスナイトとゴーシュだけ。今なら、この異常な雰囲気のパーティについて彼と、スナイトと話ができる――ゴーシュはそう考えた。
「でも、そうですね……確かに、皆さん何かに執着しているというか、取りつかれているような……」
「そうです。この勇者パーティは魔王軍の脅威から世界を救うという重大な使命を帯びている……その割には皆様、その意識が低いように思えてならない!」
「そ、それは僕もですか?」
「いや、失礼……スナイト殿とアリス殿は例外です。しかし、他の皆様はどこかきな臭い……」
ゴーシュの発言は、明らかに危険なものだった。共に戦う仲間を疑うなんて、もし他の勇者の仲間が聞いていれば、確実に騒動の火種になる。
「か、考えすぎですよ、ゴーシュさん……」
「そんなことはありませんぞ。スナイト殿も、皆さんの動きには十分警戒なさってください」
「は、はい……」
懸念したスナイトはゴーシュをなだめようとする。だが、ゴーシュの不信は尽きない。気弱なスナイトにはあいまいな返答しかできなかった。
火山と温泉の街に宿泊して、1日目の晩。
「…………」
雷鳴槍のボルトはこっそりと、気配を殺して自分の部屋を出る。
両手に握られているのは、北の経済都市で購入した睡眠効果を持つ葉の粉が入った小瓶と、ここ火山と温泉の街で購入した呪いの首飾り。
「どこに行くのかしら、ボルトさん?」
いきなり背中から声をかけられた。ボルトは思わず後ろを振り向く。
そこには聖術師のティナがいた。
「や、やあ……ティナちゃんか……ちょっとトイレにね……」
「トイレに行くのに、その小瓶と首飾りは不要では? 何を企んでいるんです?」
「ジャ、ジャスティン……!」
いつの間にか後ろに立っていた魔法剣士のジャスティンに問い詰められるボルト。ボルトはティナとジャスティンに挟まれる形となる。
「ど、どいてくれないかな? そろそろトイレに……」
「行くのはトイレじゃなくって、アリスちゃんの部屋じゃないの?」
「な、なにを言って……」
「その小瓶の粉をお香にしてアリスさんを催眠状態にして、呪いの首飾りで彼女を洗脳する。古典的な方法ですね」
「そこまでしてアリスちゃんを自分の彼女にしたいわけ?」
「くっ……!」
ティナとジャスティンに追及され、ボルトは悔しそうに唇をかむ。
「……僕をどうするつもりだ? レオナルド王子に報告して、追放でもするつもりか?」
「まさか。そんな良いもの持っているのにそんなことするわけないでしょう?」
「ボルトさん、僕らに協力してくれませんか?」
「協力……?」
ジャスティンの申し出に、ボルトは怪訝な表情を浮かべる。
「大丈夫。悪いようにはしないわ。ボルトさんの願いも叶えてあげちゃう」
「そ、それって……」
「是非とも協力をお願いします。正義のために」
アリスを自分のものにできる――その誘惑に、ボルトの心が揺らぐ。そして、
「……わかった、君たちに協力しよう」
ボルトは、ティナとジャスティンと手を組んだ。




