第58話 勇猛さを示し王の座を目指す儀式
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……一体何が起こったのか自分でもわかりません。
「くらえ!」
「きゃあああーっ!」
俺の攻撃が、無防備なルティアに撃ち込まれる。
ルティアは為すすべなくダメージを受け、悲鳴をあげた。
だが、その瞳はまだ勝負を諦めていない。
「くっ、流石はアルマさんですわ……
ですが、耐えきりましたわよ! この手の切り札さえあれば、次の攻撃でわたくしの勝ちですわ!」
「……何を勘違いしているんだ?」
おそらく必殺なのであろう、その切り札を手に意気込むルティアに、俺は静かに現実を教えてやる。
「切り札を持っているのはお前だけじゃない……
俺の攻撃はまだ終了していないぜ!」
「何……ですって……!?」
驚愕するルティアに、俺は自分の切り札を見せてやる。
くらえ、これで終わりだ!
「速攻魔法、狂戦士の心!
デッキから一枚カードを引き、それがユニットカードならばカードを墓地に送ると共に場のユニットは攻撃を行う! ユニット以外のカードを引くまでこれを繰り返すッ!」
「な…… は、反則ですわよそのカードっ!?」
「反則ちがう! 俺がルールだ!
いくぞっ、ドロー! 魔法カード!!
……あれっ!?」
まさかの切り札の不発であった。
予想外の展開に、俺は思わず手の中の魔法カードを見つめ、そしてルティアを見つめる。
にこっ。
ルティアはとても優しく、天使のように微笑んだ。
「わたくしのターン! 儀式魔法、英霊召喚!」
「えっ、お、ちょ、待っ……」
「墓地から全てのユニットカードを復活させますわ!
この英霊たちは次のわたくしのターンの最初に全てゲームから取り除かれますが…… 決着をつけるには十分ですわ!」
全てのユニットを排除したはずのルティアのフィールドに、見渡す限りのそうそうたる英霊たちが並び立つ。
馬鹿なっ……! こんなことっ……! 馬鹿なっ……!
「行きますわよ、総攻撃ですわ!」
「ぬ、ぬわーーーーーっ!!」
一回の攻撃につき、一体のユニットがブロックできるのは、原則的に一体のユニットのみ。
圧倒的な数のユニットを受け止めきれず、俺は英霊たちの放つ攻撃の光の中にのみ込まれ、塵も残さず蒸発したのであった。
「やった、勝ちましたわーっ♪」
「ま、負ーけーたー……」
諸手を上げて喜ぶルティアに対し、ぐったりと突っ伏す俺。
馬鹿な…… デッキの八割以上はユニットカードにしてたはずなのに、一発目で魔法カードを引くなんて……ありえん……
一回でも攻撃できていれば終わっていたはずなのに……
「俺がルールだ! キリッ!」
「いや、アヅマ、君は…… 素晴らしく運がないな」
ユズとクロードが半ば笑いながら茶化してくる。
というか、いつの間にか二人だけではなく、ゴルドさんやレジー達、ミーシャ、それに見知らぬ探索士までもが興味津々にテーブルを囲んでいた。
「ところでこれ、結局どうやって遊ぶゲームなんだい?」
「そうそう、絵はいっぱい描かされたけど、ぼくにはよくわかんなかったよ」
「ああ、うん、ユズは大変そうだったねえ……」
そう、このカードの作成にはユズとクロードの力を大いに借りている。
まず、カードと言ってもこの世界には繊維の紙がないので、ベニヤ板のような薄い木のカードだ。
これは触媒法と呼ばれる形式の魔法使いがよく使うもので、魔法の触媒を扱う店や自由市場の露店で結構見かける。
で、コピー機なんてないので、地道に一枚一枚カリカリと書いて作ったのである。
だが俺はこの世界の文字が書けないので、クロードにテキストを書いてもらった。
同じカードの二枚目以降を複製するときは俺が文字を真似て書いたのだが、俺もクロードも絵心はない。
幸い、ユズがある程度描けたので、イラストは簡単なものだがユズに書いてもらってある。
とりあえず俺とルティアがプレイするだけで良かったので枚数はそこまで多くはないのだが、二人が一晩でやってくれました。
俺? 俺は……アイデア係?
勿論、これだけ苦労してただ遊んでいるだけではない。
ルティアがジャベリンウルフを倒すために、必要なことなのだ。……たぶん。
「それでは、次はクロードさんがやってみます?
ふふ、こてんぱんにしてさしあげますわよ?」
「……ほう? 言ってくれるじゃないか。
アヅマ、僕にやらせてくれ。やり方は、やりながら教えてくれればいい」
「あー…… まあ、いいか。熱くなりすぎるなよ?」
一旦お互いのデッキをまとめ、軽くシャッフルしてからクロードと交代する。
全てのカードを裏返してひとまとめにしたものをデッキという。
デッキは一人にひとつ、40枚。
まず、コイントス、じゃんけん、話し合いなどで先攻と後攻を決めてから、互いに5枚のカードを引き、相手に見えないように手元に持つ。
今回はルティアがクロードに先攻を譲った。
「自分のターンにできることはみっつ。
ユニットをひとつ、場に召喚する。
儀式魔法をひとつ、使用する。
罠カードをひとつ、場に伏せる。
もちろん、カードがあっても使用しなくてもいい」
「ふむ。……速攻魔法、というのは?」
「それはいつでも何枚でも使えるカードだ。ただし使い捨て」
手元のカードを触りながら質問するクロードだが、実のところ俺のデッキなので四枚はユニットカード、残る一枚は儀式魔法カードだ。速攻魔法はない。
……ブラフか。初っぱなから飛ばすなあ。
ルールはぶっちゃけ、現代のトレカのあれやらこれやらを参考に、簡略化してわかりやすくしたものだ。
こういうのは基本は簡単でいい。複雑なのがよければ、新しいカードなりローカルルールを後で考えればいいのだ。
ひとまず、クロードは場にグレイウルフのユニットを召喚した。
「おっと、クロード、召喚したばかりのカードは横に倒してくれ」
「ん、横になっているとどうなるんだい?」
「横になったカードは行動が出来ないんだ。召喚したばかりのカードや、戦闘したり特殊能力を使ったカードは横になる」
「ふむ…… 召喚してすぐには戦えないのか」
「召喚直後に横にならない特殊能力持ちもいるけどな」
たとえばアサシンスネークなどの奇襲を得意とするユニットである。
グレイウルフはそこそこの強さを持つが、特に何の特殊能力も持たないユニットカードだ。
ユニットを配置し終えたクロードは、儀式魔法を使用することはせず、ターン終了を宣言した。
「それでは、わたくしのターンですわね。
最初のターンの後攻から、ターンの最初にデッキから一枚カードを引けますの」
「何? それじゃあ先攻は最初のターンにカードを引けないのか。……まさか、そのアドバンテージのために先攻を譲ったのかい?」
「ふふ、勝負はもう始まっていましてよ?」
まあ、実際はカード一枚だけの差だし、やはり先攻には先攻の利点があるので、一概にどちらが有利とは言えない。
「では、わたくしはまず、罠カードを一枚伏せて……
次に、『熟練の剛剣士』を召喚してターン終了ですわ」
「おっ? そのカード、何やらわしに似とるのう」
ルティアが出したのは、高いタフネスと一度に二体までの敵の攻撃を受け止められる特殊能力を持ったユニットだった。
ユニットにはこういう人間も含まれるので、モンスターという言い方ではなくユニットになっている。
ギャラリーのゴルドさんが言った通り、これはゴルドさんをモチーフにしたユニットカードだ。
「他にもディッツさんやレジーさん、アルバートさんにガイウスさんのカードもありますわ」
「ぼくとクロードのカードもあったよね、絵を描いたから覚えてるよ!」
レジーは『軽快な剣士』。仲間ユニットのパワーかタフネスを瞬間的に強化できる便利な特殊能力持ちだ。
ディッツは『弓矢使いの少年獣人』。弓矢で好きなユニットに即座にダメージを与える能力を持っている。
アルバートは『炎の支配者』。タフネスは低いが高いパワーを持っている。
ガイウスは『寡黙な神官』。自身もそこそこのタフネスがあるが、戦闘中に他のユニットが受けるダメージを減らしたり、プレイヤーの体力を回復したりできる。
クロードは『堅固な学士』。ゴルドさんと同様に二体まで同時に受け止められ、ゴルドさんと比べてタフネスは低いがパワーは高い。
ユズは『エルフの隠密』。攻撃時、敵のユニットに受け止められずに直接プレイヤーを攻撃することができる。
ちなみに、ルティアの仲間達のカードはルティアのデッキに、ユズとクロードのカードは俺のデッキの方に入っている。
「でも、わたくしとアルマさんのカードは無いんですのよね」
「そりゃ、俺とルティアはプレイヤー自身だからな」
「ふむ。でも、今は僕がプレイヤーだよ」
「いいじゃん、まだ空白のカード余ってたよね? さらさらーっと描いちゃおうよ」
荷物の中から手早く余ったカードを取り出したユズが、カリカリとペンでイラストを描き込む。
すっかり手慣れたのか、すぐに簡素ながら刀を手にした俺らしき剣士が描き出され、おおーっ、とギャラリーから声があがる。
続いてユズが書き込んだカード名は『三日月刀のアズマ』、テキストは空白だがちょっとパワーもタフネスも高すぎる、バランス崩れ気味のカードだ。
「うーん、俺としては固有名詞は出さない方が好きなんだが」
その方が、プレイヤーに想像の余地があるっていうか。
たとえば「パルスのファルシのルシがコクーンでパージ」とか、まず固有名詞についてわからないとイメージのしようもないし、知っているとそれはそれで想像の余地が無い。
「それに、ちょっと強すぎる。ゲームバランスがだな……」
「強くて何か悪いの?
それにアズマ、狼もゴブリンも実際にばっさばっさ真っ二つにしてるじゃない」
「召喚コストも無いルールなんだし、パワーもタフネスも高いと、全部こいつ一人でいいんじゃないかなってなるだろ。
せめてタフネスをこれくらいに下げるべきだ」
「じゃあ次、次、ルティアのカードを書いて欲しいっス!」
俺が自分のカードに添削入れてる間にも、ディッツからリクエストが入ってユズが次のカードに描き始めている。
というか、ミーシャとか、全く知らない人まで「次は自分!」とか言い始めたぞ。なんか変な盛り上がりが始まってしまった。
「攻撃を宣言するときは、参加するユニットのカードを全て横にしますの。
攻撃側は宣言時に横に倒したユニットだけが参加しますが、防御側は既に横になったユニットも含めて全て自由に参加できますし、参加しても横に倒されませんわ」
「なるほど。では戦闘前にアサシンスネークを召喚するよ。
アサシンスネークは特殊能力で召喚された直後でも横に倒れない。グレイウルフとアサシンスネークの二体で攻撃! この二体を受け止めれば、熟練の剛剣士のタフネスでも耐えきれない筈だ!」
「甘いですわ! わたくしは、あえてグレイウルフの攻撃を受け止めずにわたくし自身で受けます。
これでわたくしのライフも減りますが…… アサシンスネーク一体だけならばゴルドさんが一方的に勝利しますわ!
うふふ、戦闘に敗れたユニットは墓地送りですわよ?」
「えっと、カードは表向きでデッキの外側に積むんだったね」
ルティアとクロードの対戦は、いつの間にかルティアがクロードに教えながらプレイが進んでいる。
普段物知りなクロードに教えてやれるからか、心なしかルティアの笑顔に優越感がにじみ出ているような気がする。
まあ、クロードならすぐに覚えるだろうけど。
「ねえねえアルマさん、ルティアちゃんのカードはどんな感じの能力にすればいいかしら?」
ユズが新たに描いたカードを持って、ミーシャがこっちに来た。
仕事はいいのか、ミーシャ。
「……まあ、そうだな。パワーはゼロでタフネスは最低、ただし存在しているだけで全ユニットのパワーとタフネスが強化。このユニットがダメージを受ける時、別のユニットが代わりに受けても良い……って感じかな」
「なるほどねー。ルティアちゃん強いわねー」
うんうん、とうなずきながらカードにカリカリと書き込んでいく。
ちなみにユニット名は『キラキラお姫様な探索士』。命名ミーシャ。
……まあ、何も言うまい。
なお、特殊能力は『ダメージを受ける時』『他のユニットが受けても良い』なので、ダメージが発生しない即死系の魔法や罠カードを使うとか、場に他のユニットがいない状態でダメージを与えるとあっさり死ぬという仕組みだ。
さて、そこに気付いているのは何人いるかな……くくく。
『なあ、ところでユートよ』
なんだかそわそわした様子で天龍が声をかけてきた。
『私がカードになったらどんな感じだ? やはり強いかな?』
お前もか天龍。
強いも何も、どういうカードにすればいいかもわからんぞ……
ユニットじゃなくて、罠とか魔法かもしれない。
たとえば、天龍眼で相手の手札を見ることができる、とか?
『…………微妙だな』
便利は便利なんだけど、俺はこの手のカードを活用できた試しがないな。
「ところで、アヅマ。このゲームに名前はあるのかい?」
「……そうだな。このゲームのプレイヤーは、勇猛さを示す儀式で王になるために戦う、という設定だから……
題して、勇儀王、というのはどうかな!」
このゲームは後にある商人が目をつけ、複数の画家と協力し、活版印刷を利用して大量生産し、爆発的なブームを巻き起こすこととなる。
数年後には、ここラディオンが「勇儀王発祥の街」として世界的に有名になるなんてこと、今の俺には知る由もなかった。
なお、クロードとルティアの勝負は慎重に防御を固めて長期戦に持ち込んだクロードが、カードドローできる特殊能力を使ったせいもあってデッキを引ききってしまい、
「……アヅマ、デッキがなくなってしまったんだけど、こういう時はどうしたらいいんだい?」
「デッキからカードが引けないときは負けになる」
「……何だって?」
「クロードの負けだ」
という、なんともしまらない結果になったことを記しておく。
次回予告
ジャベリンウルフの戦術を解き明かし、ユートたちは再戦を挑む。
果たして今度こそジャベリンウルフ討伐、なるか?
次回、第59話「タクティクス・ウルフ」




