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手前には家族が居ません。

 桜花と名乗る忍者が家に正式に住み込むように決まった夜、忍者と関わって俺に被害が無いのかを問い、多分ないと言うことを聞き、少し安心した。

 だが、問題はその深夜だった。

 俺は自分がいつも使っている六畳半の畳部屋に入り、寝ようと明かりを消したのだが、なにやらもそもそと何かが入り込んでくる感覚が。

 俺は明かりを点けて目を見開く。

 其処には忍者が居た。

 多分、ギャグマンガなら建物が愉快に空中に浮くような演出がされると思えるほど声を張り上げた。

「桜花、お前にはちゃんと四畳半の部屋を与えただろう!!それでは不満なのか!?」

 俺は半身を起こし、桜花に四畳半の部屋に戻るように言う。

「いや、手前は……そうです、主の寝込みを襲う輩が居るかもしれませんから、忍殿の身の安全を!」

 わたわたと手を振りながら桜花は言う。

 いや、寝込みを襲うって……一番に襲ったのは桜花だろう。

「俺の安全はいいから、それよりも俺の理性のことを心配してくれよ……さっきのは、天使の不意打ちで悪魔が負けたが、次はどうなるかわからないからな」

 何とか脳内戦闘で悪魔を打ち倒した天使を褒めつつ、あっさり負けてしまった悪魔に次はがんばれよと激励して、俺は桜花に向き合った。

「あのな…俺は誰かに命を狙われるようなことは今のところしてないから、付きっきりにならなくても大丈夫だよ。というわけで自分の部屋に戻れ」

 そう言うと俺は指を四畳半の部屋の方向を指して言う。

 桜花は少しおろおろしている。

 なんか様子が変だな。

 なにやら四畳半の部屋に戻るのを嫌がる桜花。

 忍者だから何か見えるのだろうか? 例えば幽霊とか…そのほかもろもろが。

 いや、しかし忍者は忍者であって霊能力者ではない。だが昔の忍者は陰陽道を究め、体得していた者も居ると聞く。

 その可能性があっても不思議ではないな。

「どうした、桜花? もしかして幽霊とか悪霊とかそんなのが四畳半の部屋に居ると言うのか!?」

 俺は前屈みになって桜花の顔を覗き込む。

「じ、実は…手前……」

 桜花が恐る恐る口を開く。

 俺は思わずツバを飲み込む。

「一人じゃ寝れないんです!暗い中に一人で長時間居るとかあり得ません!!忍者養成学校でもルームメイトが寝るときにはそばに居たし!」

 俺は『こて』っと前屈みのまま、倒れた。

 忍者が暗闇怖いって何だよ……忍者が一人で寝られないって何だよ……というか一人で寝られないのは忍者じゃなくても問題だぞ。

「どうかお願いです、手前を一人にしないでください、忍殿!!」

 桜花は倒れた俺の手を取り、ひたすら懇願している。

 とはいっても…一晩中女の子がそばに、しかも手が届きそうな位置に寝ていると流石の俺も。

「いや、とはいっても、一緒に寝てたり、川の字…というか二の字だな。兎に角そんな状態で寝ていて、間違いが起こらないとかそういう自信、俺にはない!!」

 ちょっと情け無いが事実だ。

 健全な男児ならば。

「手前はそれでも一向に構わないのですが……そうだ、押入れで寝ます、手前!!」

 桜花は俺の寝床、折りたたみベッドの後ろのふすまを開けてそう言った。

 ネコ型ロボットか、お前は。

「ほら、一応個室ですし……」

 押入れの中には上下段、何も入れてなく無駄な空間になっていたのだが、こういう形で利用することになるとは思っていなかった。

 というか押入れを個室と思って良いのだろうか。

 数分後、桜花は自分の寝具を持って押入れの中に移住完了。

『俺、なんか桜花に振り回され始めてないか』と密かな疑問が生まれ始めていたことは言うまでもない。

 俺は西に頭を向けて、足先側のふすまを少し開けてやった。

 流石に朝起きて隣で死人が寝てたとかなったらいやだもんな…

 俺はその後、ふすま越しに聞こえる吐息が耳から放れず、なかなか寝付けなかった。


 翌朝、エプロンをした忍者に起こされた。

 忍び装束にエプロンって何だよ。

 微妙に似合ってると思いつつ、寝癖で跳ねた髪もそのままで居間へと移動する。

 本日は土曜日。

 先日、夜まで寝てしまったことを後悔しなかったのは今日、明日が休みで、自由な日であるからだ。

 そして俺は昨日できなかったことをするために、携帯を開いた。

 メモリーからとある名前をプッシュ。

『トゥ…トゥ…トゥ…』と呼び出し待機音が流れている。

 この電話の向こうでは、喧しく呼び出しメロディーが流れているであろう。

 サブ液晶には俺の名前が表示されてると思う。

 なかなか出ない呼び出しを待ってる間、俺はそんなことを考えていた。

 そして忍者はテレビの音を小さくして雑音が入らないように気を配ってくれてる。

 流石、現在で生きる、時代錯誤の日本代表だ。

 待つ事数秒、呼び出し音が途絶える。

 どうやら呼び出しに答えたようだ。

 電話口では『もしもし』と相手が言っている。

 俺は耳から携帯を離し、顔の前に持っていき…

「何考えてんだクソ親父!!」

 俺は朝から自分の限界ギリギリまで声を張り上げ、怒鳴った。

 そして普通の会話スタイルに戻る。

「酷いよ忍ちゃん……鼓膜が……朝からそれはきついんじゃない?」

 多分電話の向こうでは親父が右耳に当てていた携帯を左耳へと当て変えて、応答しているのだろう。

「御託はいいからプレゼントってこれか? あと『ちゃん』で呼ぶな」

 俺は横目で朝のニュース番組を見ている桜花を見ながらそう言った。

「うん、そうだよ、一人暮らしは孤独だからねぇ、忍ちゃんの歳ならなおさら、誰かそばに居ないといけないからね」

 親父は何事も無かったかのように言う。

「それが二年以上ほったらかしにしてた奴の言う事か! 俺が中学三年の時に出て行きやがって、心配なら年に三度のメールだけでなく電話ぐらいしろ」

 俺は久々に聞く親父の声に少し嬉しくなりながらそう言った。

 ある程度適当に親父に近況を報告して電話を切り、桜花に向き合った。

「で、忍者の修行って何すんだ?」

 俺は今回の通話時間を見ながらそう質問した。

「さぁ、わかりません。定期的にメールを入れて、ある程度時間が経ったら二段階目の修行の合格か不合格かのメールが届くみたいです、合格すれば三段階目の修行に……」

 だが、このご時世に忍者になって、職はあるのだろうか。

 何とか党と何ぞと党との議論での攻めの物証でも探すのだろうか?

 それとも、他国へ行って隠蔽している疑惑の解明の物的証拠でも見つけるのだろうか?

 どちらにせよ、とんでもない世界だと思う。

 親御さんはよく許したよな。

 俺は一人でそんなことを考えていた。

「あれ、そういや桜花、お前の親はこの事知ってるのか?」

 俺が親だったら絶対にこのようなこと許さないが。

 実際この事を桜花が親に黙ってて、ある日突然、俺の家に怖いお兄さんが訪ねてくるのは避けたい。

「手前には親は居ません……」

 桜花はうつむいてそう答えた。

 気まずい空気が流れる。

「わ、わりい。変な事聞いてさ……め、飯食おうぜ、飯」

 俺はこの空気に耐え切れず、話題を変える。

 桜花は『そうですね』と微笑み、台所へと消えた。

 そして桜花は次々に朝ごはんを運んでくる。白飯と味噌汁、目玉焼き、ハム、ソーセージ。一般的な朝ごはんだ。

 意外にその味付けは美味く、いつもなら朝であまり飯が入らないのに、自然と箸が進んだ。

「忍殿」

 桜花は俺とは対照的であまり箸が進んでないようだった。

「手前は『友達』と暮らす事は知っていても、『家族』と暮らす事は知りません。忍殿のように、何かあればああやって何か言い合える人が居るという事は羨ましいです」

 桜花は俺と親父とのやり取りを羨ましそうに見ていたのかもしれない。

 なんとなくだが俺は桜花の『一人の寂しさ』が少し感じ取れたように思えた。それは唯の勘違いかもしれないが、俺は気がつけば口を開いていた。

「なら、何か言いたい事、嬉しかったことがあれば俺に言えば良いだろ。こんな形とは言え、知り合ったのは何かの縁で、それぐらいならばしてやれるし、困った事があるのならば力になってやれる。こんな崩壊寸前の家族の食卓のような雰囲気よりもっと楽しそうな家族の雰囲気出そうぜ」

 俺は白飯を口に運びながらそう言った。

 桜花は何か驚いたような顔をしていたが、『ハイ!!』と元気よく返事をした。

 平凡ではないが、いつかこれが平凡な風景になるのだろう。

 朝はそんな清々しい気分、気持ちで居ていられられたのだが、それは昼のサイレンと共に見事に崩壊した。

ん〜ラヴでコメディな展開になりそうですが、がんばってギャグに持って行きます。

どうやってもう少し雰囲気を変えようか悩んでいます。

自己中的なキャラ居ればそいつを基点にできるんですけど…

兎に角、呼んでいただいて有難うございます。

また次回もがんばります!!

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