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手前は桜花です。

 忍者!?

 俺は自己紹介としては久しく聞いてない単語を聞いて驚いている。というか、自己紹介で忍者と言った奴を見た、聞いたのは初めてだ。

「で、『自称』忍者さん、いくらなんでも無茶なんじゃないの? 今の時代、忍者なんて居やしないって……」

 俺は本気で警察に連絡するべきだと考え、携帯を開き電話する準備をした。

 だが、此処で電話したら危ないか。一応こいつがどんな行動を取るか見定めなきゃいけないな。

 そうなってしまって動くのであれば遅いのだろうけど。

 どちらにせよ良い選択は出来そうにないっぽい。

「で、あんたなんで家なんだ? 他にも忍び込む家とかあるだろう?」

 俺は一応、目の前の女の子が忍者であるという事を信じて聞いてみる。

「え、此処は『高坂殿』のお住まいですよね? 高坂 こうさかやいば殿の…」

 女の子は懐から携帯を取り出す。

 目の前の女の子の格好はなんというか……ミニスカ忍者?

 くのいちと忍者を足して二で割って、ミニスカにしたという格好かな?

 忍者とかの格好は時代劇を参考にしてみた。

 というか忍者が携帯持つな。

 鳩を飼え、手紙を手書きで書け、情報は自分の口で伝えろ。

 で、刃というのは俺の親父の名前で、ちなみにお袋がこころという名前だ。

 そこ、笑うんじゃないよ。

「ああ、その名前の知り合いは居るな…しかも親族で。で、そいつがお前さんに何を言った、何をした?」

 流石にぱっと見、十五〜十八の娘さんと結婚はないだろう……。

 親父にそれぐらいのモラルがあると信じたい。

 もしや援交!?

 俺が親父に対していろんな疑惑を考えていると……。

「あの、高坂殿? ちょっと貴殿の考えていることとはちょっと違いますよ」

 なに、こいつ読心術が使えるのか!?

 流石は忍者だな。

 …じゃなくて!!

 顔に出ていただけでしょうが…俺!!

 しっかりしなさい、俺!!

「それは、まだ手前が未熟だった頃……今でも未熟ですが。とにかく、修行中に食べ物を全て駄目にしてしまい、危うく餓死するところに、刃殿が救いの手を手前に」

 女の子は拳を握り締め、涙ながらにエピソードを語っている。

 泣くとこなのかと無性に突っ込みたい衝動に駆られたが、此処は大人しく我慢だ。

「そして、何とか第一段階の修行を終え、刃殿に一食分の恩を返そうと……あ、今手前は修行の第二段階目です。それで、恩返しをしようと刃殿の所を訪ねたら、一人で暮らすご子息が心配だと言い出して、手前の第二段階目の修行をかねて息子の所へ行ってくれと言われたのです!!」

 親父、つまりは俺に厄介を回したのか。

 こいつはお礼を断っても『お礼させろ』って五月蝿そうではあるが、それを息子に回すかよ、普通。最低な父親を持ったものだ。

 それよりも気になったことが。

「いくつか聞いていいか? まず一つ、その修行って何だ? 二つ目、修行場所離れていいのか? 最後に、ギャグじゃないよな?」

 他に聞くことあるのだろうが、なんかどうでもよくなってきている。

「えっとですね……修行は忍者としての修行です! 第二段階目は心の修行で、人と係わりながら心を鍛えます! だから連絡さえ出来れば何処でもいいのです。最後の質問は……ギャグ言ってどうするんですか?」

 どうやら本気で言っているようだ。

 ギャグであってくれたならどんなに楽だったか。

「で、その恩返しってのは何をやるんだ?」

 なんかもう、『非』現実的な会話になじんでいる自分が嫌だ。

「えっと、ですね、手前が高坂殿の生活を手助けします!!」

 どんっと胸を張って胸を叩き、咳き込む女の子。

「いや、今のところ生活は大丈夫だよ。うん、ありがとう、こうやってお話できたのが恩返しだ」

 なんか本能が、遺伝子が俺の危機を知らせている。

 こんな『非』現実的なことに係わってはいけない! そんな気がする。

「いや、でも手前はまだ恩返しをしていません!しかも食生活だってカップラーメンとは偏ってますよ!!」

 む、痛いトコ突かれたなぁ。

 ん、そういやこの子の肩のとこ、今動いたぞ?

 注意してその物体を見つめる。

 何かついてるな……クモかな?

 足が一杯あって、ひょうたんのようなボデー。間違いなくクモだ。

「ちょっとじっとして」

 俺は急に女の子を停止させ、女の子に近づく。

「いや、ちょっと高坂殿……なんですか!?」

 女の子は赤くなり手を振る。

「ちょっと、動かないで」

 俺は女の子の腕を握り、肩に手を伸ばす。

 女の子は真っ赤のまま目をつぶる。

「い、いきなりそのような行為は……で、でも手前は高坂殿がどうしてもというのなら」

 ひょいっと肩に付いていたクモを回収。小さいけど精一杯生きていて、なんだかしっかりしているような姿のクモだった。

「ほら、肩にクモが付いていたんだよ」

 俺は女の子にクモを見せる。

 とたんに顔が青くなる女の子。

「い、嫌です! 抹殺です、今すぐに!!」

懐から短刀を取り出し、小指の先ほどのクモを殺そうとする。

「いや、ちょっと待てーーーッ! 殺すな、夜のクモは殺すなと言われてるだろう! 一寸の虫にも五分の魂!?」

 俺は急いで外へ出て、階段を駆け下り、草むらにクモを解放する。

 俺はクモに心の中で『危なかったな、くっつく相手は選べよ』と語りかける。

 ちょっと遅れて女の子が俺の後ろに立っている。

 しまった、寂しい人間だと思われたか!?

「まぁ、小さい生き物だからってあんまり殺すのはいけないよ」

 俺は笑いながらそう言って、抜き身のままになってる短刀を取り上げ、鞘に入れて女の子に返す。

 短刀を受け取った女の子は……。

「感動しました、手前はまだまだです、さすが噂どおりのお方です!!」

 何の噂なんだろう? とりあえず気になるが聞きたくない噂だろう。

「で、結局のトコ断ってもお前さんは俺の周辺に居るんだろ。その『恩返し』ってのをやらない事には気がすまないんだろう? でもな、何をしてもらうとか、そういうの全部保留でいいかい? 事が大きすぎて一日じゃ決められないよ。それが決まるまでは勝手に何をしてもいいから。携帯の番号教えといて、決まったら連絡するから」

 女の子は携帯の番号を言う。

 そして決意に満ちたまなざしでこっちを見ながら口を開いた。

「決めました!手前は貴方を主、主君、時には師として仕えます!これを行うのは私の勝手ですので、断られても行います!!」

 そうきたか。

 チクショウ、こりゃ上手い事言いくるめられちまったな。

「はは、わかった。参った、こりゃ降参。君の思うように行動しなよ」

 俺は両手を上げて笑う。

 こんな非現実な事が実際にあっても別にいいか。

「俺は忍。高坂 忍って言うんだ。忍者のお前さんの名前はなんて言うんだい?」

 手を差し出して俺は女の子に聞く。

 女の子は肩膝を地面付け、片手の拳を地面に着け、腰に手の甲を添えるポーズを取り……。

「手前は桜花おうかと言います、忍殿」

 ちょっと堅苦しい彼女に俺は『友好の握手を求めてるんだ、手ぐらい握ろうよ』と言って握手をし、そのまま手を引いて立ち上がらせる。

 こんな大変な事を後先考えずに決めてしまったのは、周囲には平然と一人で居ても『寂しくない』と振舞っていても、実際は『寂しい』と心の隅、頭の隅で感じて、考えていたからかもしれない。

 色々と考える事はあるが、それこそ全部まとめて保留する事に決めた。

 自分の出した答えに後悔しないように。

さて、ようやく忍者の名前登場。

どうも、水無月五日です。

不安な感じでスタートしたこの作品、どうなるのやら…

読んでいただいた皆様には感謝感激です。

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