手前は忍者です。
事の始まりは一通のメールだった。
『ハッピバースディしのぶちゃん。十七歳の誕生日おめでとう。私からプレゼントを送りました、この手紙が着いてしばらくすればプレゼントは届くでしょう。 ー父よりー』
俺の名前は高坂 忍高校二年生で、十七歳になったばっかりだ。
母は早くに亡くなり、親父は出張中。
ローンの残っているアパートを手放すわけにはいかず、俺は一人家に残る事になった。
2LDK。二つの部屋にリビング(居間)ダイニング(食事室)キッチン(台所)がある家のことをこう呼ぶらしいのだが、恥ずかしながら俺は最近まで意味がわからなかった。まぁ、調べる気と覚える気が無かったのだが。なお、バスルーム、トイレ付き。
本当に平凡な家なのだが、俺は気に入ってたりする。
ちょっと難点を言うならば、一人で住むには広すぎる。六畳半の和室と、キッチン、居間ぐらいしか使ってない。生活は主に六畳半の空間で事足りている。
まぁ、俺の生活状態なんて、本当にどうでもいいことだけど。
俺は親父から届いたメールを閉じて、そのまま倒れる。
親父からのプレゼントを貰うのは何年ぶりだろうか。いつの間にか誕生日プレゼントをねだるのをやめたような気がする。
俺はそのまま目を瞑る……そのまま意識は闇へと沈んでゆく。
目が覚めてみれば、辺りは真っ暗で、手探りで携帯を探し、時間を確認。
『19:37』
携帯のデジタル時計が現在の時間を指し示す。結構寝ていたようだ。
学校から帰ってきてメールチェックをしてそのまま寝てしまい、晩御飯の準備も当然まだ。
晩飯をそろそろ準備しなくては……そうは思うのだが、まだ頭が働いてないし、いまから何かを作る気にはなれず結局はカップラーメンに落ち着くのだった。
三分待たずに、二分ほどで蓋を開け食べ始める。俺はカップ麺は時間を待たない派なのだ。
半分ぐらい食べたところだろうか?
なにやら視線を感じて後ろを振り向くが、誰も居ない。
当然といえば同然だ。此処で誰か居ればそれはそれで問題なのだが。
俺はテレビを付けて、適当なチャンネルを押す。
番組はマジック特番で、ゲストがそのマジックを見破るという奴だ。
放送ごとにぼちぼちな視聴率らしく、定期的に放送されている。暇つぶしにはもってこいだったりするこの番組。俺も視聴率を上げる要員の一人か。
俺はラーメンを啜りながらその番組を見る。画面の中ではマジシャンが胡散臭くマジックを披露している。
透明なガラスのコップに、ファミレスなどに置いてある灰皿を上に置く。
ゲストの財布から五百円玉を借りる。
どうやら五百円玉が灰皿を貫通して下のコップに落ちるらしい。
マジシャンはそれを紙に包み、オイルライター用のオイルを沁み込ませ、着火。
それを灰皿の上に置く。
それから数十秒後、ことんと五百円玉がコップの中に落ちる。
灰皿の紙の燃えカスを棒で探ってみるが、五百円玉はない。
「すっごいです……」
「ああ、すごい。だがこれはちょっと幼稚じゃない?なんとなくならわかったよ」
何気なく俺は会話を交わす。
って、ちょっと待て!!
俺は横を振り向くと、女の子が居た。
「……誰だよ、お前」
俺は横を向き、きちんと正座をして少し前屈みになってテレビを見ている女の子に聞く。
女の子の格好は何か変。どこら辺が変かと言うと……
なんかやらせっぽい格好というか、安いAV女優が着ている衣装というか……。
「な、貴殿にはこの『壁抜けの術』を見破ったのですか、手前には全く……」
女の子はぎゅっとスカートの裾を握り締める。
スカートは結構ミニスカだな。
「いや、これ灰皿の裏に予め蝋を一滴、二滴垂らして五百円玉をくっつけてたんだろう? ファミレスとかに置いてある灰皿、裏が窪んでいるからさ、そして駄目押しは紙を燃やすとこ。
明らかに熱を加えてるからね。そう考えればこれが一番ありそうだって。」
俺はテレビで見たままを説明する。
テレビではマジックのネタばらしに入ったようだ。
「ビンゴ。な、正解だったろ?」
俺はカップラーメンを平らげてそう言った。
「お、大当たりです…手前には全くわかりませんでした…」
女の子はスカートを握り締めそう言った。
何度も言うが、スカートはミニ。
「で、言っていいかな? というか、今まで待ったからいいよね?」
俺はテレビのスイッチを消して言う。
「お前、何者? そして何処から入った?答えによってはすぐさま三つのボタン押すぞ。時間を争うならば、電話帳で調べて直接電話を署に掛けるが。」
俺は、女の子に聞いた。
女の子の答えは……。
「まず、手前は『忍者』です。で、ちゃんと玄関から入りました」
女の子はさっと肩膝を上げ、もう片方の膝を地面について、地面に着いた足の少し前に拳をつく。
そして余った片手を腰骨の辺りに手の甲を添える。
確かに忍者っぽい。
で、玄関から入った!? 馬鹿を言うな。
家に入って一番にする事はドアの鍵を掛ける事だぞ。
ドアノブを引いて、後ろ手で鍵をひねったぞ。
俺のあとにぴったりくっついていたのなら話は別だが、まずそんなのに気が付かないほど俺は老いちゃいない。
「いや、玄関鍵閉めてたから……」
俺はポケットから携帯を取り出す。
女の子は腰骨の添えてあった手を顔の前に持っていき、人差し指を立て眉間に当てる。
そして女の子はこう言った。
「手前には忍び術がありますから」
これからだ。
俺の生活が変わってしまったのは……。
上手くなるには書け、書きまくれ!!
という事でひたすらがんばる水無月五日です。
ラヴコメかコメディーかまたわからんものを書いています。
お付き合いいただき、誠にありがとうございました。




