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お、お師匠様!?

 唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえる。居間には俺一人しか居ない。テレビをつけていつも通り過ごしているのだが、キッチンや隣の部屋には桜花らが待機し、合図を待っている。テレビのお笑い番組の内容も頭に入ってこない。

 ちらりと時計を見ると午後七時を回ったところだ。ベランダの手すりの所はカラスが居て、じっとこちらを見つめ置物のように固まっている。この時間カラスを見かける事も少なく、見かけるのが珍しい時間帯にこうして居ると言うことは一つの結論が出てくる。

 あのカラスは式神だ。こちらの隙を覗っている。さぁ仕掛けて来い、『居間』には俺一人しか居ないぞ。

『ピーンポーン』

 丁度いいタイミングで玄関のチャイムが鳴る。

「玄関か……」

 この時間尋ねてくる人間なんて限られてくるし、その可能性のある奴らだって、来る前に連絡ぐらいはよこしてくる。となると……。

「コーサカ……」

 キッチンの食器棚に待機している霧雨が刀を手に玄関の方をちらりと見る。

「あぁ、多分奴だ。堂々と玄関から来るってのはまずおかしい、注意して周囲を見ていてくれ」

「承知!」

 これほどまでにこの小さい式神が頼りに思えたことはあるだろうか? いや、霧雨だけじゃない、桜花も秋桜もとっても心強い。

「はーい、今行きますー」

 大きめの返事をして、玄関へと向かい、頬を二回叩いて、覗き穴から来訪者を見る。

 周囲が暗めなのではっきりと姿はわからないが、とりあえず怪しい風体をしている。黒いフードのようなもので顔を隠している。間違いない。

「どちら様でしょうか?」

 チェーンロックをした状態の扉は数センチほどしか開閉せず、その隙間から来訪者を覗き見ると、時代錯誤な格好をしている。やはり襲撃忍者か。

「わらわは忍びの里の者じゃ。少し話があるんじゃが……」

「なるほど、解りました。少しお待ちください」

 扉を閉めると、ロックを外す前に手を一回叩いておく。合図などを決めてなかったのは痛いが、きっとこれで解ってくれるだろう。

「はい、お待たせいたしました。立ち話も難ですし、こちらへどうぞ」

 襲撃忍者を家の中に誘い入れる。非情に危ない行為だが、これしか打つ手は無い。

「迷惑をかける」

 それだけを呟くと襲撃忍者は俺の後をついて来る。俺が招きいれるのは居間じゃなく、桜花、秋桜が潜む使われてなかった部屋だ。

「では、お茶を持ってきますので、中でお待ちください」

 襖を開け、俺は冷蔵庫の前に立つ。襲撃忍者は警戒もせず、その部屋に入る。

『覚悟ッ!』

 二人の声が聞こえると同時に俺はその部屋の中へと急ぐ。

「やったか!?」

 部屋の中央で桜花と秋桜に組み敷かれた襲撃忍者が居た。よし、上手くいきすぎだ。絶対相手は何か手を用意してある。まずはそれをつぶす事が出来たと思う。

『まぁ、主らがそのような行動を取ることは重々承知じゃ』

 映画のボスの登場のように、誰も居ない空間から組み敷かれた襲撃忍者と同じ姿をした奴が現れた。

「高坂殿ッ!」 

「忍殿っ!」

 部屋の中の襲撃忍者が紙に戻ると、すぐさま俺の前に立つ二人。

 襲撃忍者の出現した場所は食器棚の近く。まだ霧雨には気が付いていないようだ。

『全く、人の話もろくに聞かないで……昔っから変わらんのう』

 襲撃忍者は腕を組み、俺というより、桜花に近づいてくる。

 一歩、また一歩と踏み出すたび、襲撃忍者の顔が何となく見えてきた。頭巾のようなものを被っているが、顔つきは二十代半ば、若しくは三十代ぐらいだろう。

「ま、まさかっ!」

 桜花が驚いたような声を上げるのと同時に、食器棚から小さい陰が飛び出す。

「覚悟ッ!」

 玩具のような刀を握り締め、霧雨が一直線に襲撃忍者に向かう。

 完全に不意を付いたのだろうが、襲撃忍者はコップを咄嗟に手に取り、向かってくる霧雨をコップの中に入れ、逆さまにして机の上に置く。

「な、何をするかー! これを退かせ、どかさんかー!」

 コップの中でもがく霧雨。そんな哀れな式神の姿を見て、こんな船の置物があったなぁ、と小さい頃に見たビンの中に船の模型が入っている物を思い出した。

『ヤレヤレ、とりあえずわらわの話を聞け』

 襲撃忍者はそう言うと、頭巾を外すと、桜花が驚いて土下座をする。

「お、お師匠様!?」

 はぁ? お師匠様って言ったよな、というか忍者の師匠ってヤッパリ居たんだなぁ……。

はい、まだ訳がわかりません。

とりあえず次話はいつもの分の二倍ほど長くなりそうです、お付き合いいただき、有難う御座います!

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