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ゲバラとカストロ ~革命は二人で始まり、一人で終わる~  作者: 相馬ゆう
不死鳥の国日本へ~日本とゲバラ編~
23/39

22話 幕間 午前二時の学級会

今回は、史実ではないとされるあの史実から、日本編の序章スタートです。


今回のゲバラ視点で物語は進みます。

【1959年 ハバナ / 臨時政府庁舎】

深夜二時。


チェ・ゲバラは、猛烈な睡魔と戦いながら、椅子の背もたれに深く沈み込んでいた。


軍帽を目深に被り、腕を組んで目を閉じる。

傍から見れば完全に寝ているように見えるだろう。だが、意識は起きている。


耳元で、ラウルの甲高い声と、カストロの野太い声が飛び交っているからだ。


「……いいか兄貴。バティスタは追い出したが、この国の手足にはまだ『鎖』が食い込んだままだ」

ラウルが机を叩く音がした。


「鎖、か」


カストロが重く唸る。


「ああ。表の世界はCIAとユナイテッド・フルーツ社が、インフラと農地という鎖で国民を縛り上げている。そして裏の世界はマイヤー・ランスキー率いるマフィアが、カジノと麻薬という鎖でハバナを飼いならしている」

俺は帽子の下で、密かに眉をひそめた。


(……その通りだ、ラウル)


この国は、二重の支配構造ダブル・バインドにある。


表玄関はアメリカ企業が押さえ、勝手口はマフィアが固めている。


俺たちが命がけで勝ち取ったのは、今のところ「首輪のついた自由」でしかない。


「表と裏。二つの勢力が、この国の喉元をガッチリと握ってるんだ。追い出そうとすれば、経済という首輪を締め上げられる」


「……で、ホワイトハウスの反応は? 俺たちの勝利宣言を聞いて、少しは態度を変えたか?」


「いいや。アイゼンハワー大統領は、今日もご機嫌でゴルフだそうだ。彼にとって我々は、裏庭で騒ぐ野良“猫”程度にしか映っていない」


「クソッ、無関心が一番堪えるな」


カストロが苛立ち紛れに椅子を軋ませる。


俺は、瞼の裏でその光景を想像し、冷めた思考を巡らせた。

これは、ただの「学級会」だ。

先生アメリカのいない教室で、ガキ大将たちが「明日からどうする?」と頭を抱えているに過ぎない。


革命の理想は美しい。だが、現実は見えない鎖との戦いだ。


数字、利権、外交。


俺の最も苦手とする分野だ。

俺はゲリラでいい。いや、革命家って自分では言ってみたい。



(……帰って本が読みたい)




意識が半分、夢の淵に落ちかけていた、その時だった。

カストロの大声が、鼓膜を直接叩いた。


「誰でもいい!経済だ!

この国を縛る鎖を解き放てる、優秀な『エコノミスト』はいないのか!?」


ん?

今、あいつはなんて言った?


いや、俺の耳には確かにこう聞こえた。


『コムニスタ(共産主義者)』はいないのか、と。


(……鎖を断ち切るには、それしかない)


この部屋にいる連中は、まだ日和見ひよりみ主義者ばかりだ。

アメリカの顔色をうかがい、CIA やマフィアの報復を恐れている。


腹の底から革命を信じ、鎖を引きちぎる覚悟のある「本物の共産主義者」は、祖国がキューバでない俺くらいしかいない。

奴らは祖国への愛が強すぎる。


(……やれやれ。誰も手を挙げないのか)


俺はあくびを噛み殺しながら、スッと右手を挙げた。


俺がいるだろ、カストロ。


ここに、筋金入りの「コムニスタ」が一人。


すると、部屋の空気が凍りついた。

気配でわかる。カストロとラウルが、信じられないものを見る目で俺を見ている。


「……ゲバラ?お前、やれるのか?」


「ああ」


俺は短く答えた。

アメリカの鎖?

CIA??

マフィアの脅し?


そんなもの、覚悟さえあれば断ち切れる。『祖国か、死か?』俺は後者担当だ――


「よし決まりだ! 今日からお前が国立銀行総裁だ。頼んだぞ!」



……は?なに?国立銀行??

共産主義関係なくねぇ??......



翌日。

俺は、国立銀行の総裁室で、自分のサインを紙幣に書き殴っていた。


Cheチェ


ただのあだ名だ。


お偉い銀行家たちが卒倒しそうな所業だが、知ったことか。

俺はエコノミスト(経済学者)じゃない。


あの時、俺はとんでもない聞き間違いをしたのだ。取り付け騒ぎで銀行は大忙しらしい。


だが、引き受けた以上はやるしかない。


「鎖」を断ち切るには、これくらいの荒療治が必要だ。


札束なんてものは、所詮ただの紙切れだ。俺たちの革命を、ドルの奴隷にはさせない。


窓の外を見る。

ハバナの空は青いが、どこか息苦しい。


この街はまだ、見えない鎖に繋がれたままだ。



俺は胸ポケットから、愛用のカメラを取り出した。

ニコンS2。

ずっしりとした金属の冷たさが、心地いい。


いや、でも、これ作り話としても面白いですよね。

実際取り付け騒ぎあったみたいですしね。


次回は、2016年の安部元首相のキューバ訪問。そしてカストロの回想。


お楽しみに。


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