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ゲバラとカストロ(仮)  作者: 相馬ゆう
エピローグ
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0話 エピローグ革命の前夜

波が、胃をひっくり返す。

最悪だ。


船が小さい。小さすぎる。


「本来なら八人乗りらしいぞ。」


誰かがそう言って笑った。冗談だと思った。


冗談じゃなかった。

八十二人が押し込まれている。


膝が誰かの肘に当たり、肘が誰かの胃に刺さる。

木の湿気。ガソリン。吐瀉物。

嵐。雨。暗闇。

——それに、人の熱。


吐く場所がない。

吐いたら終わりだ。匂いで、音で、居場所がバレる。

喉が焼けて、水を飲むのも怖くなる。立てなくなる。


そのときは——

上陸しても、撃たれるだけ。


「……海岸だ!」


叫び声。

俺は顔を上げた。闇の向こうに砂浜の輪郭が見えた。

見えた、次の瞬間。


人影。

銃口。

海岸に、兵隊がいる。


「おかしい……なんで……?」


声が自分のものじゃないみたいに震える。

嵐の夜だぞ。こんな日に、こんな場所で。待ってるはずが——


「待ってるさ。」


船の奥から低い声。


「——オレが予告した。」


振り向く。

髭面の男が、濡れた前髪の隙間からまっすぐ俺を見ていた。

疲れている。全身びしょ濡れだ。なのに目だけ冴えてる。


フィデル・カストロ。


「……予告?」


「敵にだ。『上陸する』とな。」


背中が冷たくなる。

理解した瞬間、笑いそうになった。最悪すぎて、笑うしかない感じの。


「……最悪だ。」


誰かが吐いた。

誰かが短く十字を切った。

誰かが銃を握り直す音が、やけに大きく聞こえた。


船底が浅瀬に擦れて、嫌な音を立てて止まる。

止まった瞬間がいちばん怖い。逃げ場がなくなるからだ。


「行くぞ!」


カストロの声が飛ぶ。

怒鳴り声じゃない。合図だ。

——ここで迷ったら終わり、という合図。


俺たちは海に降りた。


波が足をさらう。

泥が靴を奪う。

背中の荷物が俺を沈める。濡れて、重くて、引きずられる。


一歩、二歩——


乾いた音が夜を裂いた。


砂が跳ねた。

人が倒れた。

叫び声が途中で途切れて、そこで“空白”ができる。


「伏せろ!」


俺は反射で腹ばいになった。

心臓が喉までせり上がる。雨が痛い。塩が目に刺さる。

息を吸うたび、肺が拒否する。咳が出そうで、歯を食いしばる。


さっきまで八十人いたはずの気配が、どんどん薄くなる。

消える速度が速すぎる。数を数える余裕すらない。


動け。

止まったら撃たれる。立っても撃たれる。


——だったら、撃たれにくい動きを選ぶだけだ。


俺は這った。砂が口に入って、じゃりっと歯に当たる。

銃が冷たい。手の感覚が薄れる。

それでも引き金の位置だけは分かる。分かるのが、嫌になる。


そのとき、前でカストロが肩で息をしながら言った。


「これだけ残れば……ラッキーだな」


一瞬、耳を疑った。

上陸出来たのは十人そこそこ。

他は砂浜の前に遣られちまった。

狂ってる。いや、狂ってない。こういう奴が先頭に立つんだ。

最悪な夜を“運がいい”と言える奴が。


なぜか、それで足が止まらなかった。

こいつが折れないなら、折れる方が損だ、みたいな理屈が腹の底で動いた。


カストロが振り返る。


暗闇でも分かる。

あの目。眠らない目。決めてしまった目。


「合言葉を忘れるな!」


残った者たちが、喉の奥から声を絞り出す。

雨と血と塩に濡れた、掠れた声。


「――祖国か、死か!」

メイン昨のゲームチェンジャーの合間に書いてます。男の子の友情大好物を詰め込みました。

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― 新着の感想 ―
本編も読まず、あらすじ紹介が気になりましてこの作品に来ております。 まだ内容が冒頭で読み込めていませんが、惹きつけられますね。 これからどこにいって、彼らはどうなるんだろう。 今はちょっと???なカス…
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