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13.謁見!王宮と舞踏会③

 カイは変わった。人に指示する時、以前のように様子を見て「ひと言遅い」状況は随分と減っていた。オレが渡した紙の束だけじゃなく、カイの手元にも別のメモがある。

 朝オレが居ないことに気付いて、「準備」したのかもしれない。寝不足の筈なのに勝手にウロウロする側近見習いをどう大人しくさせようか、と。

 受付の椅子に腰を下ろすと、急に疲労感が襲ってくる。

 試験勉強からノンストップで、舞踏会の準備をしていた。

思えば前世でも、中堅になっても部下を持たない便利屋としてあちこち駆け回る役回りだったのは、これが理由だったような気がする。

 全部を自分でやりたがる。人を信じて任せられない。仕事を人に振るのが下手。

上司との面談でも、オブラートに包まれながら言われて来たことだった。

嫌なことを――――いや、大事なことを思い出したような気がする。

 カイが去り、生徒会有志の生徒と共に受付を始める。

気になることは沢山あるし、考えたいことも多いが、受付の仕事で手一杯だった。

 ゲームのプレイヤーであればあらゆるシーンを把握して然るべきだけど、今のオレはただの平民の生徒でしかない。

前提知識が豊富でも、物理的に、体力的に、できないことが山程ある。オレの手のひらは、とても小さい。


 受付を終えて、ホール内では歓談の輪が其処彼処にできていた。

一番目立つ輪の中心には、ネリィがいる。

そろそろカイの挨拶があって、徐々にダンスが始まるはずだ。

「体調、どう?」

「サラサ……え、カイに何か言われたか?」

 壁に凭れたオレに話しかけたのは、上品に着飾り、こちらも普段とは別人に見えるサラサだった。

「カイ様とは少し、今日の確認で話しただけ。目の所、クマでしょそれ?寝ないとだめだよ」

「――――はい。スミマセン」

「もう。怒ってるわけじゃないのよ?」

「うん……カイにも言われた。今日はダンスはやめておくし、しんどくなったら控え室行くよ。ありがとな」

 元々ダンスの練習までは手が回らず、ステップを軽く覚えた程度だったから悔しさもない。

「ハヤテが頑張ってくれたの、本当に感謝してるんだよ。私も、他のみんなも。聞いた話だと、例年はこんなに一年生だけで動かないんだって。前に立つ役だけ任されて、企画や準備は上級生がやるの」

「……まじか」

「誰の手柄、とかじゃないけど、私は自信がついたよ。ホールを見てても、誰が平民なのか分からないし、ドレスのことが共通の話題になるから、話しやすいの」

 思えば生徒会室で、シズルはいつも相談を受けられる状況を整えていた。

自分から手を出したりしないが、申し出があれば動くスタンスだったんだろう。

最終的にはドレスの管理など信用できる人手が足りない状況もあり、シズル達にも協力を求めはしたが、確かに企画段階からもっと入って貰えば良かったのだ。

 というより、オレが生徒会室で口を出さなければ、自然とそうなっていた可能性が高い。

 そうなると、予算の件もなんらかの意図があったのかも知れない。後から整理した予算額を見た所、王宮で開催しているにしては、人数に対して明らかに小予算だった。

相場感が無いため贅沢と節約のラインが分からず走り出したが、実態として、今回の予算繰りは桁が一つ変わるくらいの頑張りが必要なことだった。ネリィが騒いでいたのも当然のこと。

シズルが何も気付いていない訳がなく、そのまま無理に進めてしまったことが後々問題にならないことを祈るしかない。

 ふと視線を上げると、サラサのことをチラチラと見ている男が多い。その中から、ディノが一歩進み出て、オレとの会話が終わるのを待っているようだった。

「やっぱ、疲れたわ。カイの挨拶だけ聞いたら、大人しく引っ込んでおくよ。サラサは、舞踏会楽しめよ」

「うん!」

オレが独占したままでは良くないなと、ディノと視線で会話した後、オレはその場を後にした。

 挨拶では、カイはあくまでも生徒会役員として振る舞っていた。

ここで王子であることを前面に出すのは、せっかくの学内平等が台無しになるのを理解しているからだ。


 しかし寝不足でぼやけたオレの頭は、処理できていないタスクがあったことを、今更になって思い出した。

カイの挨拶が終わった直後、先触れで思い出しても今更だ。

「国王陛下のおなりです!」

 ――――せめて、国王がこの場に出てくるらしいということだけでも、カイに伝えておけば良かった。

 フロア中の人間が、中央の玉座へ向かう王を待つように礼を取る。

ドレスとヘアメイクで身なりが整っても、社交界の経験がない平民の生徒達は、礼を取るのに遅れたのが分かる。オレも勿論、遅れた側だ。

「国王陛下、宜しければご挨拶をいただけますか」

 壇上から、カイの冷静な声が聞こえた。国王相手に直接話しかけられるのは王子だからこそだが、予定外の状況を悟らせない対応だった。

 以前、父である国王とは例の公示の後からほぼ会話する機会がなかったと聞いており、今現在何を思っているのかは分からない。

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