09.学べ!課外授業で側近見習い⑥
「何なら、ディノも授業に参加したら?」
「貴族の勉強会に、俺も?いいのか?」
「多分。席もあるし、貴族のことを学びたいと思えるなら、参加は問題ないと思う」
以前、たった二人相手の授業で申し訳ない、こういう授業をやって欲しい生徒は他にもいるだろうに、という話をヴォイドにした時、困った顔をさせてしまった。
貴族社会の独自の価値観を知ることは、様々な背景がある平民にとって、受け取り方によっては却って溝を深める可能性がある、という話だった。
だからこそ自発的に、必要を感じて求められたからオレとサラサには忌憚なく教えられるのだと。
「貴族について、か」
ディノは少し、複雑そうな顔をした。
平民として生きてきた記憶が曖昧なオレは、認識が中途半端な分受け入れ易いだけで、今まで貴族との身分差の中で理不尽を受け入れてきた立場からすると、敢えて知りたくないと思う気持ちも分かる。
生まれだけで強制的に決まる以上、貴族社会について知ったところで手に入れられるものでもなく、違いを受け入れるしかできないという現実がある。
平民の価値観や暮らしとの差について、授業中のサラサはよく、切ない顔をしていた。
「――――いや。たしかに俺も、知っておいた方が良いのかもしれない。サラサは特待生として、視野を広げて行きたいと言っていた。俺も、機会があるなら学びたい」
「ディノ……」
「ヴォイド先生に、頼んでもらってもいいか?いきなり参加するわけにもいかないだろうから」
「ああ、わかった」
ヴォイドに話をしてみると、あっさりと許可が下りて、課外授業は三人で参加することになった。
ディノが加わった教室で、より賑やかに課外授業を進めていく。
側近見習いの実績部分が整えば、一年生の終わりまでには側近試験を受けられるだろう、というヴォイドの言い分を信じて。
通常授業も試験が迫っており、課外授業についてはもう少ししたら暫く休止になる予定だという。オレはふと、試験スケジュールの話を聞いて、デジャブに襲われた。
ゲーム本編でも、「試験前だから暫くは課外授業を休止にする」というやり取りがあった気がする。
「課外授業って、ヴォイドルートとシズルルートの、アレか?」
急に思い至り、自室のベッドで跳ね起きた。
サラサが居るのだから、シナリオに関係する内容なのは、考えれば分かる話だった。
しかしオレは側近試験のことで頭がいっぱいで、今の今まで忘れていた。
これには思わず、冷や汗が出る。
サラサはわざわざ詳細を話してはいないが、生徒会で貴族である他の役員と折り合いが悪く、シズルの指示もあってヴォイドの課外授業を受ける、といった流れがあったはずだ。
ディノの心配は正しくて、ヴォイドとの親密度がアップしたり、たまに様子を見に来るシズルと親しくなったり、そんなシナリオがあったはず。
しかしこれにオレが初回から参加したため、サラサがヴォイドと二人きりということはなくなった。
またシズルも、課外授業の教室まで顔を出したことはない。カイの側近見習いであるオレが側近試験の準備をしている所に、わざわざやって来る訳にはいかないのだろう。
やってしまった、と思わず頭を抱える。
サラサのシナリオ状況は知りたいが、邪魔したり操作するのは本意ではない。
というか、その結果何が起こるか分からないため、不測の事態は出来るだけ避けたいと思っていた。
「ディノまで呼んじゃったし……」
課外授業に、ディノが参加するシナリオはなかったはずだ。それをわざわざオレが招いてしまった。
セーブデータで戻れるのなら、ヴォイドに相談したあの日からロードしたい。
しかしそんな便利な機能はない。
「今更課外授業をやめるわけにも行かないし、やめたところで元に戻るかは分からないし、側近試験にはヴォイドの協力がないと……仕方ない、か」
シーツに包まり、もう一度頭を抱える。せめて、ドジを踏んでしまったことを、教訓として覚えておこう。
これから起こるサラサ周りのイベントには、細心の注意を払おう。
ミスをしても、一晩寝たら善後策を考えられるのは、きっとオレのいい所のはずだと信じて。
次話、生徒会のことで悩んでいるカイにハヤテは......
『転章.登場人物まとめ-第2回-』を挟んで、引き続きご覧ください。




