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26.決着!第四王子の側近②

「うん?」

 試験結果が出て、カイの側近候補ではなくなってしまったら、オレにはもう為す術が無い。だから、その前に。

 

「オレが消えたら、カイ様への干渉をやめて貰えますか?」

 

 ミュジカが言っていたことが本当なら、オレがこの世界に転生して、カイの側近候補として動き始めたことと、ノリスの暗躍は無関係ではないだろう。

 本来のララブならゼントラントにいるはずのノリスを、呼び寄せてしまったのはオレかも知れない。

「消える?どうやって?」

「それはまあ……色々あるじゃないですか。パプリカ村に帰れば、王都からは消えますし」

「なるほどねえ。……ま、正直どうでもいいかな。平民のお前が何処に行こうと、何してようと」

 そりゃそうか、とガクッと肩が落ちそうになった……が。

 

「――――どうせカイの方から、お前が消えれば動くだろう。今のアイツはもう、側近全員に逃げられた頃とは違う」


 ミュジカは出涸らしとまで言っていたが、ノリスはカイのことを認めているのかも知れない。

(それはそれで、厄介……)

 ノリスからも着目される存在となったのは喜ばしいが、無茶をする所まで見越されているとなると苦笑いだ。

 ケラールトが側近となったら、カイが無茶する時にも止めてくれるだろうか。

「まあ、カイの屋敷がダメなら、おれの所に来たらいいじゃねーか。王子のヨシミで、カイの情報だって入って来るぞ。田舎に引っ込むより、よっぽど手応えある仕事をやらせてやる」

 オレが考えたのと同じように、ノリスも想像したのだろう。再就職は現実的ではない、と。

「以前お断りした通り、カイ様を否定する貴方の下なんて、オレが働くわけないでしょう?何言ってるんですか」

 そんなに人の機微が読めないタイプでは無さそうなのに、何故頑なにオレを勧誘して来るのかが分からない。

 しかしノリスは、ニヤリと笑う。

「――――他に選択肢なんて、無いだろう?お前は損得が分かる人間だ。カイの側にいられないなら、おれの近くで監視出来る方を選んだ方がトータルで得だろう」

「そんな、腹に一物あるような人間を近くに置くつもりですか?」

「ああ。おれは別に、誰も信じちゃいないからな。でも、ソイツが信じてるモンと、譲れないモンを分かってやることはできる」

「“弱味を握って利用してやる”――――と聞こえますが?」

「ハハハ、当たってる」

 相変わらず、ノリスは悪びれない。

 ミュジカは呆れたような表情だが、何も言う気はないらしい。

 ノリスの言うことは図星で、オレは頭のどこかで、ノリスの言葉に乗っかった場合について、シミュレーションくらいはしてしまっている。

 ――――悪くないかもしれない。

 金を稼いで、衣食住を確保して。カイやネリィのことだって、王族なのだから動向を追うことが出来るだろう。

 しかし……。

 

「それでも、ノリス様を選ぶことはできません。オレは、何を為すかより、誰とするかを選びたいです」

 

 視線が交わった時、ノリスが笑みを引っ込めた。

 その直ぐ後に、鐘が鳴る。結果発表の時間が近い。


 +++++


 応接間に戻ると、他の王子が揃っていた。直ぐにノリスとミュジカもやって来た。

 それぞれの王子は側近達を伴っており、壮観だ。それだけに、カイがひとりでいることに胸が痛む。

 視線を感じて動かすと、この場には何故かネリィまでがいた。

「先ほどまで一緒にお茶をしていたから、誘ったんだ」

 セラがにこやかに笑うが、ネリィは眉間に皺を寄せるような、神妙な面持ちでいる。

「お腹でも痛いですか?」

「デリカシーのないこと、仰らないで。……試験はどうでしたの?」

「善処しましたが、ぼちぼちですかね。ありがとうございます」

 苦笑いすると、漸く彼女は少し、表情を緩めた。

「その様子なら、いつも通りのハヤテさんだったんでしょうね」

「良くも悪くも、ってやつです。オレはそんなに器用じゃないので」

「ふふ。……よく、存じていますわ」

 向かいにいるカイとふと目が合い、聞こえていたのか静かに頷いたのがわかった。


 オレには、カイのことを第一に考えて側近として勤められるだろうという自負がある。

 しかしそれが国にとってどうなのか、なんて大きな視点では分からない。

 ましてや、オレは異物のようなものだ。この世界がオレを選ぶのか、排除するのか。

 その選択を――――審判を受けるような気持ちで、国王がやって来るのを待った。

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