0599 オリハルコン等級昇級試験
スカイインでカーロンの平原を後にした俺たちはオリハルコン等級の試験を受けるためにある場所へ向かった。
オリハルコン等級になるためにはレベル300を超えるドラゴンを倒さなければならない。
しかしこのドラゴンというのが千差万別で、色々いるのだ。
例えばライラもドラゴンではあるが、正確には龍人と言われる人種でもあって、討伐対象などにはならない。
ドラゴンには大きく分けて一般生物としてのドラゴンと魔物としてのドラゴンがいる。
そして一般生物としてのドラゴンも単純に動物としてのドラゴンと、ライラたちのような龍人としてのドラゴンがいる。
これは人間に例えれば魔物のドラゴンがゴブリンや傀儡の騎士のような人間形態の魔物で、動物としてのドラゴンは霊長類で例えればゴリラやチンパンジーなどのような存在だ。
そして龍人が人類扱いという訳だ。
俺たちが倒すのはこの魔物、もしくは動物としてのドラゴンで、これは単純に体力や力などで言えば通常の龍人よりも強い場合が多い。
それはちょうど人間よりもオークやゴリラ、オランウータンの方が力が強いようなものだ。
しかしその生息地は少なく、冒険者や魔物狩人と言えども遭遇する事は稀だ。
もっともそんな物に頻繁に出会うようなら人類はこんなに繁栄できないだろう。
従ってオリハルコン等級の試験はその遭遇が稀なドラゴンを探して倒さなければならないために、場合によっては何日もかかる事があるそうだ。
しかし俺とエレノアにはそのドラゴンの当てがあった。
「どちらへ向かわれるのですか?」
グレゴールさんの質問に俺は笑って答えた。
「はい、マジェストンの迷宮です」
「なんと!マジェストンの迷宮ですと!
ではシノブさんとエレノアさんはアレを倒すつもりですか?」
「はい、その通りです」
「ううむ、確かにアレならば固定の魔物で必ずそこにいますが・・・」
どうやらグレゴールさんも俺たちの狙いがわかったようだ。
俺たちはマジェストンの迷宮へ着くと、グレゴールさんと共に26階層の駐在所へ向かった。
「ここへ来たのはドラゴンを倒す目的もありますが、もう一つは新しくなった駐在所や休憩所を組合長であるグレゴールさんに見せたかったというのもあるのですよ。
まだ見ていないと伺ってますからね」
「ええ、確かに色々と新しくなった事は聞いておりますが、まだ実際には見ておりません。
これは中々楽しみですな」
「はい、では行きましょう」
俺たちは20階層で昇降機を降りると、階段を使って26階層へと向かった。
門番のダークキマイラを難なく倒し、駐在所へと到着する。
受付嬢がグレゴールさんを見て驚く。
「まあ、組合長!
今日はどうしてこちらへ?」
「やあ、実はこちらのシノブさんたちの昇級試験の事でね」
「え?昇級試験?
ですがホウジョウ子爵様はハイ・アレナック等級ですから・・・昇級試験はオリハルコン・・・という事はアレを倒しに行くのですね?」
「そういう事だ」
「なるほど、アレなら固定の魔物ですから探しに行かなくても良いですからね。
他の人たちでしたら、何と無謀なと思いますが、ホウジョウ子爵様ならちょうど良い相手ですわね」
「そうだな」
俺たちが26階層駐在所の中へ入ると、グレゴールさんが感心する。
「なるほど、これは凄いですな!
食堂も広くなり、このような場所で風呂も入り放題とは驚きです」
グレゴールさんが驚いて見学をしていると、トムソンさんに出会う。
「や、これは組合長!
これはまたどういった用事で?」
「やあ、トムソンさん!
何、今日はこちらのシノブさんたちの関係で見学を兼ねてね」
「なるほど!是非ゆっくりと見学をしていってください。
食事も驚きですよ」
「うむ、すでに結構驚いているよ」
「はは・・・全くホウジョウ子爵のおかげでここもずいぶんと快適になりましたよ」
「ああ、私も驚いているよ」
俺たちは休憩がてらここで食事をする事にした。
そしてその食事でまたもやグレゴールさんは驚く。
「これは・・・
このような場所でこんな食事が出来るとは・・・」
それは地上の食事、それもかなり高級な場所でないと、食べられないような料理だった。
「あはは・・・多分、今回は私とグレゴールさんがいるので、奮発したのでしょうね。
いつもはこれほど豪華ではありませんよ」
「むむ・・・私の若い頃なんぞは、ここでは干し肉と乾パンが食べられればありがたかったですよ。
トムソン氏が喜ぶのもわかります」
「ええ、食事と風呂はかなり改善されたと思います」
「全くですな!」
俺たちは駐在所の食堂で食事をすると、27階層へと向かった。
27階層へ到着すると、その出口のすぐ横にあった休憩所にグレゴールさんは驚く。
「ほほう!これが・・」
「はい、ここが27階層「ヒンデンブルク休憩小屋」です」
「なるほど、確かに素晴らしいですな!
それでここから?」
「ええ、ここで一休みしたら早速出発しましょう」
「承知しました」
俺たちが目指す場所。
それはこの27階層の固定魔物であるイビルドラゴンの住処だ!
これはレベルが大体320から350ほどの魔物ドラゴンで、27階層のある場所に固定でいる。
ダークキマイラよりも一段上の魔物だ。
そこへ行って俺が昇級試験に使おうという訳だ。
「しかし、イビルドラゴンを昇級試験に使うとは初めてですよ。
アレはレベルもさる事ながら、そもそもここまで来るのに苦労しますからね。
昇級試験に使おうとはまず思いつきませんからなぁ」
「ええ、私も27階層の休憩小屋を作っていなければこんな事は考えませんでした」
「そうでしょうなぁ」
俺たちはイビルドラゴンが生息する場所へ向かい、そこへ辿り着いた。
イビルドラゴンを確認したグレゴールさんが俺に合図をする。
「ではシノブさん、お願いします」
「はい」
俺はイビルドラゴンに突進すると、アレナックの刀をいきなり突き刺す!
そして雷撃呪文だ!
「グランダ・フルモバート!」
やはり大きな動物や魔物相手にはこの方法が一番効く。
火炎や凍結魔法では全身にその効果が行き渡るのに時間差が生じるが、雷撃ならば一瞬だからだ。
イビルドラゴンはのけぞり、叫んで俺に攻撃を開始するが、俺は容赦せず、先手先手を打って行く。
ズバズバとイビルドラゴンを切り裂き、魔法で足を凍結させて、動きを封じる。
そして相手の動きが止まった所でその首を切り落とす!
「これで止めだっ!」
首を切り落とされてはさしものイビルドラゴンも息絶える。
グレゴールさんが死体を確認し、叫ぶ。
「イビルドラゴンの死亡を確認しました!
これにてシノブ・ホウジョウ組合員をオリハルコン等級と認定します!」
その声と共に一緒に来ていた仲間たちから歓声が湧く!
「おめでとうございます」
「おめでとうございます、シノブ様」
「流石です!」
「あれほどのドラゴンをこれほど短時間で倒すとは・・・」
俺たちの仲間が俺を賞賛する中、グレゴールさんが話しかけてくる。
「おめでとうございます、シノブさん。
ところでエレノアさんの方の試験はどうしますか?」
一旦、固定した場所にいる魔物を倒してしまえばしばらくの間は出てこない。
そこでグレゴールさんはエレノアの昇級試験をどうするかと聞いてきたのだ。
それに対して俺が答える。
「ええ、それに関しても、この迷宮で試験をしてしまおうと考えてます」
「では一旦、迷宮を出て再度ここまで来ますか?」
「いいえ、もう一つのドラゴンを試験に使おうかと考えてます」
「え?もう一つとはまさか30階層の?」
「ええ、アレをエレノアの試験に考えます」
「アレはレベル500以上でオリハルコンどころか、ゴルドハルコン等級ですぞ!
もっともエレノアさんでしたら大丈夫でしょうが・・・」
「ええ、それを昇級試験にお願いします」
「やれやれ、数年に一度しか倒されないゴルドハルコン等級の魔物でオリハルコン等級の試験ですか・・・
承知しました、参りましょう」
俺たちは素材として売るために倒したイビルドラゴンを回収し、そのまままずは29階層へと向かった。
「ここが29階層の第2ホウジョウ休憩小屋です」
29階層の休憩小屋を見たグレゴールさんはまたもや驚く。
「これは・・・
マジェストン迷宮の29階層にこれほどの休憩小屋を作るとは・・・」
高レベルの魔物が棲み付くマジェストン迷宮の29階層にこれほど大規模な休憩小屋が出来ているので驚いたのだろう。
俺もうなずいて答える。
「そうですね、前回ここを訪れてからこちらでは4・5年は経っているはずですが、無事なようで安心しました」
「これはもはや「小屋」ではありませんな。
まさに休憩宿泊所かホテルのようです」
「はは、まあここで少々休憩してから30階層へ向かいましょう」
「承知しました」
29階層の休憩小屋はこちらでは数年経っていたにも関わらず、ほぼ完全に機能していた。
俺たちはそこで休憩し、すでに完成していたチルンやテディ、ラボロなどをグラーノ状態にして回収した。
「それでは行きますか?」
「そうですな」
俺たちはそのまま第一ホウジョウ休憩小屋を経由して30階層へと向かった。
30階層の魔物たちを倒し、ついに俺たちはこの迷宮の主とも言える、ダークネスドラゴンのいる場所へついた。
まさかほんの数ヶ月しか経っていないのに、またここへ来るとは思わなかったが、久しぶりに来たグレゴールさんは感慨もひとしおの様だ。
「ほほう、ここへ来るのも久しぶりですな!
ではエレノアさん、お願いします」
「承知しました」
エレノアは一人ダークネスドラゴンに立ち向かうと呪文一発であっさりと倒した!
「マギアインディクト・クヴィンミル・フルモバート!」
エレノアの電撃呪文でダークネスドラゴンは一瞬で黒焦げだ!
うわ~レベル500を超える魔物をこうまであっさりと倒すエレノアってやっぱり凄いわ~!
前回、俺たちがあれほど苦労して倒したのは一体何だったんだろうと思うほどだ!
グレゴールさんも感心して話す。
「流石ですね?
ダークネスドラゴンの死亡を確認しました!
これにて、エレノア・グリーンリーフ組合員をオリハルコン等級と認定します」
「ありがとうございます」
無事にオリハルコン等級を認定された俺たちはダークネスドラゴンを回収して地上へと向かった。
地上ではもちろんまだ二日も経っていない。
「それではロナバールへ戻りましょう」
「そうですね」
俺たちはスカイインに乗るとロナバールへと向かった。
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