0583 ホウジョウ子爵領の人事
さらに俺は根拠地となる大アンジュに行くに当たっていくつかの人事を考えた。
まずは受付をしていてくれた三人だ。
この三人はマージェ学長の紹介で雇ったが、とても優秀で役に立ってくれた。
出来ればこのまま俺について来て欲しかったので、それを聞いてみた。
「このまま、私達について来てくれないかな?
基本的には今までと同じ仕事で給金は今までどおりに支払うから」
その俺の誘いに二人は即座に返事をくれた。
「はい、喜んで」
しかし一人の魔道士は少々戸惑った。
「あの・・・こちらのお屋敷はどうなるのでしょうか?」
「そうだね、基本的に我々は大アンジュに引き上げるけど、3年間は影主たちが学校に通うのに使う事になるかな?」
「その間の受付は?」
「オリオンかバルキリーを一体残しておこうと思っているけど?」
「その後はどうするのでしょうか?」
「ん~そうだね、一応私の別宅になる訳だから、誰か管理人でも雇って屋敷の管理をしてもらう事になるかな?
ここは帝都やロナバールと違って、執事や家政婦長を置くほどではないし」
「それでしたら私をその管理人としてこれから雇っていただく訳にはいかないでしょうか?
出来れば私は親戚の関係もあって、マジェストンから離れたくないものですから」
「そうか・・・うん、それでも良いよ」
どうせいずれは誰かを雇わなければならないのだ。
それだったら信用できる人間を今から雇っておいた方が良い。
そう思った俺は採用した。
「それと私の従姉妹で私と同じ魔道士なのですが、私の仕事をやりたがっている者がおります。
その者を私の代わりに大アンジュへ連れて行って雇っていただけないでしょうか?」
「うん、じゃあ今度面接をしてみるからここへ連れて来て」
「ありがとうございます」
そして面接に来たその従姉妹は特に問題もなく、ペロンの面接も通過したので、うちで雇う事となった。
さらに俺はヘンリーとイロナに聞いた。
二人は今まで同級生として公私共に3年の間、色々と俺に尽くしてくれた。
「ヘンリー、イロナ、君たちは今後どういう予定になっているんだい?」
「ええ、我々はクレインさんから学校にいる間はホウジョウ様や、エレノア様の補佐的な事や場合によっては護衛を任じられておりましたが、それも卒業と同時に終わり、以前の通りにロナバールの食堂で働く予定になっております」
「はい、その通りです」
「ふむ、では君たちに少々聞きたいのだが、このまま私やエレノアの副官になるのは嫌かな?」
その俺の質問に二人はキョトンとした顔で答える。
「え?」
「それはどういう事ですか?」
「うん、君たちも知っての通り、私はこの学校にいる間に貴族になって、魔法使いとしても天賢者にまでなってしまった。
まさに予想外の事さ。
こうなると、私は今後、自分の領地である大アンジュとロナバール、帝都、マジェストンとあちこちに動いて忙しくなるだろう。
そうなると、エレノアやシルビアも首席秘書監や次席秘書監として私の名代となってあちこちに行く事が多くなるだろう。
そうすると、今までは二人を私の副官みたいな者としても色々としてもらっていたが、これからは二人とも代官的な立場になってしまうんだ。
そうなると二人以外にも常時私のそばにいる新しい副官的な者が必要になるんだ。
ミルキィや豪雷、疾風も手伝ってくれるが、その3人は基本的に護衛だ。
アンジュやライラは戦闘要員だしね。
だから常にそばにいて私を手つだってくれる新しい秘書や副官が欲しいんだ。
君たちはこの3年間、この学校で影になり日向になり、私を手伝ってくれた。
料理部の事だけでなく、他の事も色々とね。
それに同級生だから気心も知れている。
だから出来れば君たちに今後も私の副官として勤めて欲しいんだ。
だが無理強いはしたくない。
君たちとしてはどうかな?」
その俺の言葉に二人は顔を見合わせると大きくうなずいて俺に話す。
「是非やらせてください!」
「ええ、ホウジョウ様の副官だなんてこれほど名誉な役目はございません!」
「でも多分、もう食堂部門へは戻れなくなるよ?
それでもよいのかな?」
「はい!もちろん食堂部門も捨てがたいですが、ホウジョウ様の副官を望まれたとあらば、否はございません!」
「私もです!」
どうやら二人も納得してくれたようなので、俺はこの二人を俺の副官にする事にした。
「うん。ありがとう。
ではクレインには私の方から言っておくよ」
「かしこまりました!」
「今後ともよろしくお願いします」
そして次は戦闘序列で強制的に雇っていた連中だ。
強制的に働かされていたとはいえ、中々の働きぶりだった。
それにこの連中が腕っ節が強いのは確かだ。
しかも最後の半年はほとんど7位より上位には入れ代わりはなく、安定した強さだ。
俺は8位以下の者たちは普通に解雇した。
そして残る3位のフォルカーから7位までの5人に言った。
「さて、我々のマジェストンでの生活もこれで終わりだ。
諸君も契約に従ってこれで解任しようと思う。
今日で君達の強制雇用は終わりだ。
しかし、私は君達を結構気に入ったんだ。
もし君達さえ良ければ、今度は正式に雇いたいと思うんだがどうだい?」
俺の言葉に序列3位のフォルカーが質問をする。
「今までと同じような感じで挑戦者用人員ですか?」
「それもやってもらうが、それプラスうちの軍事要員だな。
何しろこれから僻地へ行くんでね。
そういった人員が欲しいんだ。
ま、私も子爵になった事だし、うちの領軍の正式な兵士ってとこかな?
もっとも正直最初は雑用などもやってもらうがね。
迷宮へ行ったり、魔物との戦闘、開墾の手伝い、他にも色々としてもらうかも知れん。
もちろん給料は支払う。
待遇は他の領地で言う所の小隊長待遇だな。
まあ、最初は君たち以外に誰も部下はいないがね?
それでも良いかな?」
その俺の質問にフォルカーが真っ先に答える。
「問題はありません。今後ともよろしくお願いします」
そして4位以下の連中も同じ答えだ。
「あっしは構いませんぜ」
「俺もよろしく頼みたい」
「俺もだ、子爵様の正式な部下にしてもらえるってんなら恩の字だ」
「ああ、小隊長待遇の給料がもらえるってんなら文句はない」
結局上位5人は全員が俺と一緒に行く事となった。
そして俺は次に1位のアランと2位のアラベルだけを呼び出して別個に話をした。
「さて、アラン、アラベル、君たちには特に別の役職を頼みたいのだが?」
「何ですかい?」
「これから編成する私の魔法軍団の副司令官とその補佐兼副官さ」
「どっちが副司令官なんだい?」
「もちろんアラベルの方さ。
その方が君は良いだろう?」
実力はアランの方が上だが、アランはアラベルの尻に敷かれている。
俺が笑いながらそう言うとアランも笑って答える。
「ははっ、ちげえねぇ!
で、アラベルが副司令官って事は、司令官は誰なんだい?
まあ、大体予想はつくがね?」
「ああ、司令官はアンジュだ。
正確に言うと、私の戦闘集団の総司令官をエレノアにして、その補佐がシルビア、アンジュはその部下の魔法軍団司令って所だな。
要は君たちはうちの魔法軍団の次席と三席だ」
「なるほど?で、どうする?アラベル?」
「何で私に聞くのよ!」
「正直俺はそろそろどこかに腰を落ち着けても良いと考えている。
それにはこの子爵様の所は最適だとも考えている。
だが、お前がその気にならないなら俺はあきらめる。
それに俺はこの子爵様にお前を助けてもらった恩があるからな」
「それならこの1年近く、ここで挑戦者の相手をしていたじゃない!」
「そりゃ単に俺とお前が勝負に負けた分の支払い分だ。
恩の分はこれからさ」
「何よ!それじゃそれで私が断ったら恩知らずになるじゃない!」
「まあ、そういう事だな?」
しれっと言うアランに俺が答える。
「まあ、私に対する恩うんぬんは他にしてアンジュを司令官にすると、それを補佐して止められるのは君たち位しか思いつかなかったんでね?
出来れば君たちに頼みたい。
君たちの実際の役割はアンジュの目付け役と、実質の軍団への指示だな。
だから君たち二人が実質的な司令官と副司令みたいなもんだ。
何しろ知っての通り、アンジュはあの通りの娘だ。
魔法の実力はともかく、指揮にはあまり向いてないからな。
しかし何と言っても天賢者になった訳で、わが軍の旗印としては最高だし、他への覚えも目出度いし睨みも効く。
だから名目だけでも軍団司令官にしようって訳さ。
それに何より私自身が彼女に甘いんでね?
それで厳しい部分を君たちに任せたい訳だ。
だから君たちが私の魔法軍団の実質的な司令官とその副官兼補佐と言う訳さ。
肩書きはともかくアンジュには出来るだけ好きにさせてやってくれ」
「アンジュ司令官にも副官とか補佐はつくんでしょう?
それは誰なんです?」
「二人付ける予定だ。
今のところは空席だが、キャロルが高等魔法学校を卒業したら副官で雇うつもりだ。
何しろ本人がやるき満々なんでね。
もう一人の副官というか補佐はシャペロだ」
「ああ、あのサフィール族の嬢ちゃんと帽子の爺か?
まあ、妥当な人選だな?」
俺の説明にアランも納得したようにうなずく。
「で?どうするね?」
俺が促すとアラベルが質問をする。
「・・・アンジュが司令官でも私が逆らっても問題はないでしょうね?」
「もちろん基本的にはアンジュを立てて欲しいが、彼女が馬鹿な事をしたらぜひ君たちに諫めてもらいたい。
その権限は私が君たちに与えるよ。
そのために君たちには厳しさと実質的な司令官を頼む訳だからね」
俺の説明にアラベルもうなずいて答える。
「それなら引き受けるわ」
そのアラベルの返事にアランは少々意外そうに答える。
「おい!本当にいいのかい?」
「何よ!あんたがそう仕向けたんでしょ!
・・・まあ、ここの居心地も悪くはなかったし・・・確かにあんたの言う通り、そろそろどこかで落ち着くのも良いかも知れないしね。
この子爵様なら堅苦しくないし、私たちの言う事にも耳は傾けてくれるからね」
「エメロード族の君が、サフィール族であるアンジュの下につく事になるが、本当にそれで良いかね?」
俺が念を押して質問をすると、アラベルはふぅ・・とため息をついて答える。
「昔の私なら絶対に嫌だったでしょうね・・・
でもここで生活していくうちに、何だかサフィールだ、エメロードだなんて言ってるのが馬鹿らしくなってきたわ。
特にあなたやあのエレノア先生を見ているとね。
毒気が抜けたというか、ここの色に染められたと言うか・・・」
「ははっ、そうかも知れないな?俺もだ」
「だからもうそんな拘りもないわ。
その副司令官の誘い受けるわ。
いえ、違うわね?失礼しました。
ホウジョウ軍、魔法軍の副司令官の任、このアラベル・エメロード、謹んで拝受させていただきます。
どうか今後ともよろしくお願いします。
ホウジョウ子爵様」
「よっしゃ!決まりだな!アラベル!」
「よし、では君も副司令官の副官の件を引き受けてくれるな?
アラン?」
「おおっ!もちろんだぜ!子爵様!
あ、いや、謹んで受けさせていただきます。
ホウジョウ子爵様」
「うん、ではよろしく頼むよ。
ま、もっともしばらくの間は部下もいないし、戦争もないだろうがね。
君たちに頼むのは多分、魔物の間引きとか開墾のための魔法での伐採作業になると思うよ」
「ははっ構わないさ!
まあ、のんびりやらせてもらうぜ!子爵様!」
「ああ、よろしく頼むよ」
こうしてアラベルとアランはホウジョウ子爵軍の副魔法司令官とその補佐兼副官として就任したのだった。
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