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十話

「アンジェラさん…」


階段から落ちそうな所をアンジェラに助けてもらった。というのを理解したエマは手すりに手をかけて体勢を直した。エマが安全な体勢になったのを確認するとアンジェラは手を離した。


「あ…ありがとう」

「別に、足元気を付けた方がいいよ」

そういえばアンジェラとちゃんと話すのはこれが初めてだ。そのまま歩き去ろうとするアンジェラに、何か言わなければ、と思い思わず声を上げる。

「アンジェラさん、あの…運動神経いいの?」

「は?」

しまった。失敗した。アンジェラが怪訝な顔をしている。

「走るの早いし、この間息切れもしてなかったから…」

「…ああ、この間の金髪に絡まれた時の話?」

「あっ」

しまった。やぶ蛇だった。

キャロルにいじめられていたのを知っていたのに、見て見ぬ振りをしていたのを思い出してしまった。キャロルがいなくなり、急に転校してアンジェラへのいじめもなくなったが、アンジェラは気にしてるかもしれない。それに、自分の事をいい風には思っていないだろう。と思っていたのだが。

「あの時はみんな弱くて、つまらなかったな。敵意を向けてきたから歯ごたえを期待したけど、特に工夫もなくて。弱くて群れるしか脳がない動物なのだから適当に鳴いていればいいのに」

などと、髪の毛をいじりながらこぼす。

「…へ?」

「なに、変な顔。あなた同じクラスの人でしょ、あそこの群れの一人だよね。申し訳なさそうにこっちを見てたね」

「…!」

気付かれていたなんて。エマは羞恥心に苛まれた。

「…別に群れの暴行を止められなかった事を申し訳なく思う必要はないよ。あなたは弱いんだから、できなくて当たり前。…許しはしないけどね」

「あ…」

冷たい目。本当に、実験動物でも見るような目だ。

「足元には気を付けた方がいいよ。じゃあね」

「…アンジェラさん」

そのままアンジェラは去ってしまった。

だけど、エマの胸にはぐっさりとアンジェラの言葉が刺さって抜けなかった。

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