闇夜の世界のアリスモール
俺はリュウセン城墓地の入口にもたれかかっていた。
助けられなかったんだな……。
墓地の中には入れない。
五十年以上城に住む者しか、墓地の中に入れないとルールがあるそうだ。
指輪が反応しないと墓への入口が開かない。
なんと、ヒスイさんですら、五十年以上城に住むものに該当しないという。
城に来て、十年にもならないらしい。
「ナツキ!! こんな場所で、何をしている!! 今日の授業に出なかったな!!」
ユイが俺を探し回り、ようやく見つけたっという感じで、息を切らせながら歩み寄ってきた。
「やる気がでないんです」
「感傷に浸っていればおまえもいずれ、死ぬ!! あいつもだ……」
「誰ですか?」
「アヤメが授業に出ていないと、レイが言っていた」
アヤメが授業に出ていない?
彼女も死に近づいているのか。
「どうすればおまえのやる気が出る?」
「すごく、難しい事です」
俺は絶対にありえないだろう事を思いつき、本当は笑っていない笑顔になった。
「なんだ? 言ってみろ。俺のできる範囲でなら何でもしよう」
「アリスモールが欲しいです。この世界に」
「ありすもーる……?」
ユイの顔から表情が消えて、首を傾げる。
「俺達が捕まった場所です。この世界にアリスモールが欲しいです。売ってる物も全部一緒じゃないといやです」
むちゃぶり過ぎるのは分かっていた。
だが、意外なことに……。
「分かった。俺に不可能はない!! 男同士の約束だぞ!!」
ユイは大きく頷いた。
翌日、俺のタブレットに、リュウセン公国にアリスモールがオープンするというお知らせが来た。
そんな事があるのか……?
ありえないだろう、普通。
外に出ると、荒地になっていたリュウセン城下町の南方にゴーレムが山のように集まり、建物を作っているのが見えた。
「うるさくて仕方がない」
カエデは工事の音がうるさくて、よく眠れないのか機嫌が悪かった。
「アリスモールができるの? 本当にできるの!?」
「はい。ユイが作ってるみたいです。販売員のエルフも製作してるみたいで」
教室に向かうと、アヤメとレイが話しているのが聞こえてきた。
アヤメはBクラスにやってくる。
「若葉、アリスモールができるの!!」
セツナに嬉しそうに話しかけて、ぴょんぴょん跳ねる。
言ってみるもんだな……。
俺が驚いていると、ユイが俺の席の前にやってくる。
「どうだ? 俺に不可能など、ないだろう?」
「確かに……」
いつできるんだろう、アリスモール。
「いつか、おまえがこれぐらいできる生成師になるんだぞ」
「え? できるんだろうか?」
「できるんだろうかじゃなくって、やるんだ!!」
「大したことないさ」
そう言うカエデも、さすがにいつもの威勢の良さはなかった。
俺達は本当にずっとこの世界で暮らしていくのだろうか……?
俺は建物を造る音を聞きながら、ぼんやりと考えた。




