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闇のかくれんぼ 籠城作戦2

 カエデがタブレットを出して時間を確認する。

「十二時間が過ぎた」

 すぐさま、見つからないようにタブレットを消す。

 指輪も。

 ちょうどその頃、上階が騒がしくなった。

「始まったようだな……」

「始まったって?」

「誰かがバレたようだ。戦闘に入ったようだ」

「戦闘訓練を受けていないのに? 援護にいかないと!!」

「ムリだ。随分上のフロアだ。途中で別の相手に遭遇する。それに24時間は相手を倒すことができない」

 厄介なルールだな……。

 大丈夫か? みんな!!

 思っていると、火花が散った。

「本当に大丈夫なのか!? 相手の魔法をくらったんじゃあ……」

「おまえ、戦闘レベル10だったんじゃないか?」

「え?」

 偽のステータスではなく、本物のステータスの方を確認する。

 戦闘レベルは10になっていた。

 生成師の方は1だ。

「カエデもなのか?」

「いや。だが、HPが高い奴は戦闘レベルが10だと思った」

「なら、アヤメもレベル10なのか?」

「そうだ。奴はMPも高かった。初期から攻撃魔法を習得してるんじゃないか?」

「俺達が突っ込んでも意味がないかもしれないのか……」

 話しているうちに、上階の戦闘は終了した。


20時間以上が経過した。

 そろそろ俺が変身ができなくなる時間だ。

「どこかに隠れないと……」

「隠れているだろう?」

 こんな、花壇みたいな場所、意味があるのか?

 上階はまた騒がしくなった。

「ユズハは時間切れだな」

「合流したほうが……」

「最上階ならかなり遠い。西館だけでもかなり広い。それに守りが弱くなる」

「?」

 思っていると、収納している俺のタブレットが振動を伝えた。

 MPがもうすぐ0のお知らせだ。

 そこで気が付いた。

「俺、カエデと別行動をした方が良いんじゃないか? カエデはまだ変身できる時間なんだろう? 変身できる間だけでも……」

「それでは一緒に行動した意味がないし、合流できる保証もない」

 なぜ、カエデはこんな場所で篭城するのか。

「もしかして、カエデは土の中に隠れる魔法でも使えるのか?」

「そんな魔法は使えない」

 じゃあ、何なんだよ?

 思っていたときだった。

 0.

 俺の変身が終了してしまった。

 運悪く、そのタイミングで一階の階段辺りから声がする。

 カエデは俺を引っ張り、花壇の近くの倉庫の陰に隠れる。

 こんなの、すぐに見つかる!!

 カエデはナイフを取り出すと、指を切り、土に血を落とした。

 魔界後の羅列のような物が地に姿を現す。

 これって、生成じゃないか!!

 こんな場所でできるのか!?

「生成レベル10だとゴーレムぐらいなら、土か水があれば作れる」

 カエデは初期から生成レベル10なのか!!

 一分ほどで2メートルほどのゴーレムが完成した。

「注意をひきつけろ」

 ゴーレムは叫び声を上げて、庭をどすどすと歩きだした。

「なんだ!?」

 二人組の忍者の格好をした敵がゴーレムの叫び声に刀を抜く。

 ゴーレムは花壇とは反対のブドウ畑の方に向かって逃げていった。

 忍者達は後を追う。

「ひっ!!」

 ゴーレムの殴打を受けたらしく、悲鳴が上がった。

「こんな奴、相手にする必要はない」

 だが、カエデはもう一体、ゴーレムを生成していた。

 ゴーレムは完成し、忍者の方に向かっていく。

 忍者は挟み撃ちに遭い、命からがら西館の中へと逃げ込んだ。

「大したことなかったな」

 だが、本番はそこからだった。


 残り時間が三十分をきる。

 カエデが作ったゴーレム二体に守られたまま、俺達は庭で24時間が過ぎるのを待っていた。

「そろそろ、客は帰り支度をするはずだ」

「そうなのか?」

「リュウセン城では、住人証がないと一瞬では外の世界に出られない。滞在証も簡単には入手できない。そういったものがないと不法滞在者になってしまう。よほどわけありの者でない限り残らない……」

 だが、カエデの読みは外れた。

 忍者に少し似た、暗殺者と呼ばれる職業の黒装束に洋剣を操る者が一人、現れた。

 相手の情報を見る。

 暗殺者。

 HPは極端に低いのだが、かえって殺してしまう恐れがある。

 そして、暗殺者は能力のほとんどを攻撃力に特化した職業だった。

 二本の洋剣装備のため、盾が装備できず、装備品は布の洋服のみだ。

 忍者のような回避能力もなく、攻撃を剣で受け止めないと、瞬殺されてしまうことも珍しくない。

 だが、その二本の剣は大きく相手のHPを削る。

「友のかたき……」

 奴はゴーレム一体を異常な速度で破壊した。

 ゴーレムは537ポイントのダメージを受けていた。

 カエデが一回動く間に、こいつに殺されてしまうんじゃないか?

 しかも、こいつは異常な奴っぽかった。

 帰る気がないらしい。

 片道列車の死への旅への道連れ探し。

 だが、カエデは平然と呟いた。

「こいつが、向こうのチームの方に行かなくって良かったんじゃないか? ナツキ?」

「どうするんだ?」

「残ったゴーレムと、五分、時間を稼いでくれ」

 俺は剣を取り出す。

 こんな奴をどうすればいいんだ!?

「防戦だ。右手の方の黒い剣を防げ」

 言っている間に、敵がカエデに攻撃を仕掛けてきた。

 俺が横から蹴りを入れると、その体は西館の壁に衝突した。

 カエデは生成に入る。

 かなり無防備な状態だ。

 暗殺者は俺ではなく、カエデを警戒している様子だった。

 次の斬撃もカエデを狙う。

 俺が体当たりをすると、ようやく向きを変えた。

 暗殺者は剣を握りなおし、俺に向かって切りかかってくる。

 右手の黒い剣を受け止め、左手の短剣をあいた左手で防ごうとするも、それは俺の肩を切り裂いた。

 HPが473減る。

 かなり痛い。

 思っていると、さらに肩をざくざくと切り裂かれる。

 HP698が消失した。

 俺が右手で握る剣に力を入れて、相手の剣を弾くようにすると、相手は大きく跳んで後退した。

 ゴーレムが背後から暗殺者を押さえつける。

 どうしようと一瞬迷い、武器を奪おうと思うが、ゴーレムが蹴られて悲鳴をあげて、敵を離してしまった。

 戦闘訓練を受けていないと戦うのがきつい。

 何やらぶつぶつ言っているなと思い、はっとする。

 攻撃魔法を使おうとしている。

 俺は暗殺者に向かってナイフを投げた。

 その顔をナイフが掠めるが、暗殺者は詠唱をやめない。

 俺はカエデの前に回りこんで、盾になった。

 黄金に輝く羽がいくつも空から舞い落ちてくる。

「天使の祝福……」

 これは、本来は回復魔法だが、悪魔に浴びせると攻撃魔法になる奴だと説明が出る。

カエデの前で仁王立ちしていた俺は2000以上のHPを持っていかれて、地に崩れた。

 立つのも苦しい。

ゲームオーバーなのか……?

 その時、大地を揺るがす叫びが聞こえた。

 花壇の土が花ごとなくなり、十メートルはあるゴーレムが出現した。

「待たせな」

 だが、相手にダメージを与えられないのに、どうするんだ?

 思ったが、地面に体のくっついたゴーレムは俺達と暗殺者を分断するようにその姿を造られていた。

 暗殺者はゴーレムを倒すまで俺達に近づけないので、必死に剣をふるってゴーレムにダメージを与える。

 腕がもがれたところでカエデが背後から新しい腕を生成するような状態だった。

 だが、俺は気付いていた。

 カエデのCPがどんどん減っていっている。

 これがなくなれば、ゴーレムを増強できなくなるはず。

 どれだけ、ゴーレムと暗殺者の格闘が続いただろうか。

 ついに、カエデのCPが0になった。

 そして、暗殺者が数回、攻撃を繰り出すと、ゴーレムは悲鳴をあげて崩壊した。

 もはや、俺達と暗殺者を遮る物は何もない。

「これまでだ!!」

「おまえがだ」

 カエデの言葉に、暗殺者の目が見開かれる。

次の瞬間、暗殺者の胸から剣が付きだして見えた。

 剣は暗殺者から引き抜かれる。

 暗殺者はその場に倒れた。

 庭に血だまりができていく。

 暗殺者の後ろに立っていたレイが、剣を振り下ろして、その血を払い落とした。

「タイムオーバーです」

 彼の青い目はいつになく冷たい色をしていた。

 カエデはどこか安堵した表情を見せる。

 彼女のそんな顔を見るのは、初めての気がした。

 結局、俺はカエデを選んだから、死なずに済んだのかもしれない。

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