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闇のかくれんぼ 籠城作戦1

「カエデと一緒に行動する。あんまり大人数だと目立つと思うから」

「そう……なの?」

 アヤメの赤い瞳は、寂しげに揺れたけど、諦めたように伏せられた。

「ユズハ。おまえは?」

 カエデの意外な言葉に、場の空気が凍る。

 何を言い出すんだ?

 こいつらは別の学校で、人間関係がややこしい事になるんじゃないか?

 思ったとおり、アヤメのうさぎの様な赤い目がカエデを睨みつけている。

「意外だな。あんたが俺にそんな事を言うなんて」

「MPが1008ないだろう。変身は一分に0・7MP、24時間変身するのに1008MP必要だ。24時間エルフに化ける事はできない。1008MPある者とは一緒に行動すると邪魔になる。篭城メンバーに入れようかと思ったのだが……」

「それで、コウヨウには関心なくって、俺とナツキか。ありがたいこった。だが、遠慮するね。悪いが、組んできた仲間と一緒に行動したい」

「そうか。廊下の壁際に武器が入っている場所がある。指輪をかざすと、開いて取り出せる」

 西館の廊下の下のほうをカエデが指差す。

 そこには、黒い小さな扉のようなものがあった。

「……? そんな仕組みがあるのか?」

「城の防護機能の初歩的なものだ。西館も剣や斧などが備蓄されている。おまえはおそらく戦う事になる」

 予言すると、カエデは部屋を出た。

 俺は慌てて後を追う。

 ユズハは追ってこなかった。


「どこに篭城するんだ?」

 篭城といえば、防戦。

 城にこもって状況が変わるまで防ぎきるって戦法だ。

「庭だ」

 意外な場所だった。

 もっと狭い場所だと思ったんだが。

「その前に、武器を入手しておいたほうが良さそうだな」

 カエデは西館の一階の隠し武器を開けていく。

 入手できたのはソードとナイフ。

「飛び道具はないようだな」

 諦めた様子で、西館の庭に向かう。

 なんと西館の玄関で待機するつもりらしかった。

「ナツキは3時間と35分。もう既に15分は経過しているな」

「なぜここで?」

「ここは周りに窓も踊り場もない。入口からしか攻めてくることができない」

「戦う気なのか?」

「防戦だ。何も、あるのはMPだけじゃないだろう?」

 そうだけど、俺達ジュエリーボックスは持ってないぞ。

 ガードモンスターも使えないし。

「騒がしくなってきたな。エルフも投入される頃だろうし、化けるか」

 俺はカエデの言うとおり、化ける事にした。

 マリオネットを選んで、マスク、ウィッグ、城で入手したエプロンドレスも身につける。

「この近辺で自然に動くにはどうしたらいいか考えようか」

 カエデは西館の入口付近の探索を始めた。


 外では黒い月が禍々しく輝いている。

 エルフたちが小声で喋りながら、あたりをうろついている。

 彼女らには、命の危険より重要な使命がインプットされている。

 生成師候補生を隠す森となること。

 わらわらと掃除用具入れの前に集まりあけて、掃除を始めたりして存在するのが自然な感じを演出している。

 カエデと俺も、武器をタブレットに収納し、タブレットを住人の証の指輪に収納する。

 指輪は変身している時は、消す設定にもできる。

庭掃除のほうきを手にし、城を掃除しはじめた。

 時は既に黒い月が出てから三時間は経過している。

 ぴゃー!!

 エルフたちが悲鳴をあげて逃げまとう。

 斧を手にした女が一階まで侵入してきた。

 斧使いのハンターだ。

「ぴゃー!! ぴゃー!!」

「悪魔はどこだ?」

「ぴゃーー!!」

斧使いは、エルフの一匹を蹴飛ばす。

エルフは悲鳴をあげて、床に転がった。

どうやら、フェイクのエルフだったようで、床に転がっても誰も助けようせず、我先にと、上階や庭へとエルフ達は散っていく。

俺はカエデだったエルフを見失わないように、後を追って、花壇まで逃げた。

「追加がきたようだ」

「ちっ!!」


 弓使いだと思われる男の言葉に、斧使いは斧を振り回した。

「ぴゃー!!」

 このエルフの悲鳴、マスクを製作すればそっくりな声を出すことができる。

 俺も時折、ぴゃーと悲鳴をあげていたが、カエデは悲鳴をあげていなかった。

 バレないか?

「どいつが本物だ?」

 一匹を捕まえて斧を叩きつけても、エルフは返事をしない。

「無駄だ。フェイクのエルフは喋れないらしい」

「ちっ!! くそう!! どいつだ!!」

 斧使いは次々とエルフを切りつけていく。

 俺の隣の奴も切りつけられた。

 エルフの体に傷ができ、白い血が噴出す。

 まずい!! 

 変身していても、出血すれば俺の血は色が違うはずだ。

 攻撃を受けて、負傷すればバレてしまう!!

「よせ。そいつは同族だった奴かもしれないぞ!! 我らの目的を忘れたのか!!」

「くっ……」

 奴らの目的。

 確か、人間を魔物に変えられるのの反対してるとかだったような。

 当然、攻撃してくるわけでもない魔物を傷つけるのは主義に反するのだろう。

「こんな場所だ。たくさんいるが、全部違うのかもな……」

「どこだ?」

「ともかく、仲間と一旦、合流しよう」

 斧使いと弓使いは、西館の中に戻っていった。

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