闇のかくれんぼ 開始
黒い月が出る。
リュウセン国内に警報が鳴り響いた。
「今日はハンターが出る。城主が西館にはプロテクトをかける。HPとMPの合計が一万を越えてる奴は弾き出される防護だ。弱いハンターしか入ってこれないが、強い悪魔も弾き出されるの対象となってしまう。変身は覚えたな? まだ武器の扱いや攻撃魔法は教えていないから、隠れるように。エルフのメイドを300体、西館に投入する。もちろん、誰が生成師候補生か分からないようにするためだ」
「ミレイとミレルは? 私たちが変身するエルフと外見が違うようだが?」
コウヨウの質問にユイが頷く。
「あいつらは戦闘力が高い。ミレイはぎりぎりで西館に残れて防戦を行うが、ミレルは西館の入口付近で、食い止めを行う。24時間ルールというルールがある。異世界に侵入して24時間が経過すると帰れなくなる。同時に不正入国・不法滞在の犯罪者扱いとなる。各悪魔や城の使用人にハンターの殺傷権が発生する。西館のプロテクトも24時間で切れる。それ以降は援軍が来る」
って事は、二人の心配はいらないのか。
24時間ルールか……。
「どうして、私たちは人間と戦うことに……」
セツナは青ざめ、その手は震えていた。
「彼らは知らされていない。魔物に転生すれば罪が消え、罪人の刻印が消滅する事を。中には魔物に転生する事すら赦されず、地獄に落とされる者もいる」
「どうして知らせないんですか?」
「天界と冥界、それにリュウセン公国の一部の者だけの秘密だからだ」
「そんな……」
セツナが悲痛な声を出すも、ユイは全く反応しない。
「各自にポーションを10こずつ配る。これを使えば、HPが100回復して、出血などの外傷が消える。血の色がエルフと悪魔は違うから、出血した状態だと、ばれてしまうからな。もっといいポーションは西館では使えないように設定されている。ハンターが有利になりやすいからだ」
ユイは俺達に10個ずつ、栄養ドリンクみたいなものを配った。
カエデは真っ先にタブレットにしまう。
そっか。かさばるもんな。
俺も真似した。
「そろそろ時間だ。俺は城の上階に移動する。西館から出るなよ。それと、大人数でかたまっているとばれるぞ。MPが足りないものは、24時間が過ぎるまで、防戦しろ。人間が侵入して24時間以内に殺せば、罪となる。24時間以降は人間側が不法滞在者として犯罪者となる。駆除が可能となる」
言い残うと、ユイは教室を後にした。
「若葉―!!」
レイから同じ忠告を受けたはずなのに、隣の教室からうようよとAクラスの奴らがやってきた。
ただし、コウヨウの姿はない。
タブレットを取り出すと、残り時間が赤で23時間57分とピンクで71時間57分と表示されている。
「じゃあ、早速変身しましょうか」
「ナツキ、来い」
カエデが俺を引っ張る。
「五人では目立つ」
「えー。ナツキはあたし達と一緒に行動しましょうよー」
アヤメが声をかけてきた。
「闇のかくれんぼが始まって、さっそく選択肢が出ましたね」
深紅が姿を現す。
周囲の時間は止まっていた。
「これは好感度がかわってくる奴?」
「誰の好感度もほとんど変わりません。生存率が大きく変わります」
「どちらかがハズレなんですか?」
「アヤメのチームは全員初期から戦力が高いです。が、カエデは初期から周囲の感知能力が高い。どちらを選びますか? もちろん一人で行動しても、コウヨウを探しても、ミレイかミレルと行動しても、ユイの後を追っても構いません」
「全員のステータスは見れますか?」
「HP,(ヒットポイント)、MP(戦闘系魔力値)、CP(生成系魔力値)は見れます。変身魔法はMPを消費します」
「では出してください」
『ナツキHP5202、MP702、CP603
カエデHP631、MP852、CP2209
セツナHP2872、MP1688、CP1664
アヤメHP4393、MP1898、CP706
コウヨウHP764、MP1009、CP1708
ユズハHP3105、MP655、CP470
レンHP2567、MP1111、CP998』
衝撃の結果だった。
俺とユズハはMPとCPがかなり低いし、カエデとコウヨウはHPが低すぎる。
「見方を少しだけ解説しましょう。丸一日変身するのにはMPが1008必要です。つまり、あなたは三時間以上変身時間が足りないのです」
「人間界では常に変身できるのに?」
「それはアイテムが人間の悪意を常にたっぷりと吸ってるからですよ。リュウセン城には人間の悪意が少ない」
「それから……」
カエデはHPが低すぎる上、一日変身するだけのMPがないのか!?
「誰かがHPが0になったら?」
「蘇生魔法を10分以内に使わないと死亡が確定します。これは城主、ユイ、レイ、ヒスイしか使えません。候補生は三年生までテキストでも習いませんし、それまではまず習得できません」
「決めました」
「そうですか。ご武運をお祈りします」
お祈りってこういう時に使われるの、好きじゃないんだけどなー。




