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霧の摩天楼

 月曜日の昼休み。

 再び俺たちが、池の畔で話していると赤石先輩らがやってくるのが見えた。

「何の用だろう?」

 コウヨウが眉をしかめて、小声で囁く。

「静かに。返事をするな」

 雨宮に言われ、俺たちは黙り込んだ。

「やあ。何をしているんだい?」

 赤石先輩は聖紫陽花学園中等部の生徒会長。

 引き連れているのは、内海先輩と吉野先輩。

 それぞれ、生徒会の副会長、会計。生徒会役員たちだ。

 男ばかりの生徒会。

「別に」

 雨宮は不良っぽく、無愛想に返事をする。

「何か話があって、集まってるんじゃないのかい?」

 吉野先輩が俺たちを睨みつけてくる。

「除け者同士、集まってるだけですよ」

 またしても、雨宮がそっけなく、どこかバカを装った感じで答える。

「あ、あの……霧の摩天楼、入賞おめでとうございます!!」

 俺がふと思い出し、口にした言葉に、コウヨウは首をかしげる。

 雨宮が生徒会役員らに見えない角度を狙って、俺に肘打ちをくらわせてきた。

 痛い……。

「知っててくれたのかい? 校内でもあまり誰も関心がないみたいで、残念だったから嬉しいよ」

 内海先輩が急に満面の笑みを浮かべて、俺の手を握る。

「へ?」

 コウヨウが間抜けな声を出す。

「パリで開催された絵画コンクールで受賞されたんだよ。出品されたときに、実物の写真が確か……学校の掲示板にはってあって、新聞部も取り上げてた」

 雨宮が俺を睨みつけてくる。

 無視しろとその目が怒鳴りつけてくる。

 絵は夜の町に超高層ビルが幾つも建ち並ぶ風景画で、下から上を見上げるアングルで描かれ、地上付近のフロアはきらびやかなのだけれど、上階に行くにつれて、あかりの灯った部屋が少なくなっていき、やがて霧がかかり、空では紅い月が嗤っていて……。

 心理学者などが見たら、将来が不安な心理を描いた作品とでもコメントするのだろうか。

「将来は画家を目指されるんですか?」

「それがまだ決めてないんだよ……」

 表情を曇らせる内海先輩。

「おい、内海。行こうぜ」

 赤石先輩に腕を引っ張られて、内海先輩は吉野先輩と共に俺たちから遠ざかっていった。

 また、不意に頭痛がする。だがそれは一瞬だった。

「バカか、おまえは!! 生徒会役員らが連続少年殺人事件の犯人ではないかという疑惑があるんだぞ!! 追っ払おうとしているのに、変に話しかけるな!! 特に赤石は残虐画像をよく閲覧しているとかで、警察にマークされているそうだ!!」

「え? そうなの?」

「本当に、どうしようもないバカだな、おまえ……」

 呆れきった顔をする雨宮。

 まさか、生徒会長が連続殺人事件の犯人かもしれないなんて……。

 さっき見た、内海先輩の嬉しそうな笑顔。

 絶対に犯人であってほしくない。

 悪魔になった俺は、神に願ってもダメだと思ったので、今夜、月に願うことにした……。

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