教官選び~後編~
「なあ、離れたままじゃ話しにくい。集まってクラスのわけ方とか、話し合いをしないか?」
「そうしよう」
俺達はレンの傍へと集まっていった。
雨宮だけは一人、ファイアー・ドレイクの教官を確保するため動かない。
多分、ファイアー・ドレイクを作った者が一番、凄腕の生成師なんだろうな。
見た感じからも、カエデの反応からも。
「レイさんが作ったものは、おそらくゴーレムだろうな」
レンの言葉に他五人は頷く。
「ゴーレムもヴァンパイアもいいと思った。もし俺が外れるなら、ヴァンパイアの方に移りたい」
大勢でいる時は消極的な印象の強いコウヨウが、珍しく大勢の前で自己主張した。
「なるほど。ヴァンパイアなー。ナツキとセツナとアヤメはどう思う?」
「あたしはゴーレム以外の選択は考えられないわ。我がまま言って申し訳ないと思うけど」
アヤメはカエデと同じく、既に意思決定しているようだ。
「ナツキは?」
「俺は迷ってるんだ。ファイアー・ドレイクにするか、デス・コードにするかで。俺はゴーレムという選択はしないつもりだ」
「えー!?」
アヤメが驚きの声を漏らす。
デス・コードもあまり機能がついていないものの、かなり凝った設計図になっていそうだ。
どんな設計図なのか、作った人に聞いてみたい気がする。
教官に選ばないと教えてくれないんだろうな。
もちろんファイアー・ドレイクが術者の中で最高級の能力を持っているのは間違いないだろうが。
「なら、ファイアー・ドレイクはナツキとカエデ、それにあたしが選択して、残りのメンバーはゴーレムにするのはどうかしら? ナツキやカエデはあたしが傍にいて見ていてあげたいの。何だか小さい子二人で心配で……」
セツナの言葉に俺は迷う。
「残りあと五分だ」
城主がタイムリミットを告げる。
「ナツキ、決めたのか?」
「いや、まだだ」
「急げ!!」
レンが急かされても、俺はまだ答えが出せない。
苦し紛れに、プールに視線を走らせた。
すると、デス・コードが不快な音を鳴らし始めた。
リーン、リーン、リーンと続けざまに何度も鼓膜を刺激する音がする。
誰だ、必死にアピールしてくる生成師!!
不快な音に、俺達は耳を覆ってしゃがみこむ。
「やめたまえ、デス・コードの生成師!!」
城主に注意され、デス・コードは動きを止めた。
俺はファイアー・ドレイクを眺めた。
それと視線が合うと、俺は微笑みかけてみた。すると奴はきゅーんと可愛らしい鳴き声をあげる。
ファイアー・ドレイクはもっと遊びたいと言っている。そう感じた。
もしこれが、生成師本人と性格が似ているのならば……。
「決めた。俺はファイアー・ドレイクにする!!」
「じゃあ、セツナとナツキ以外はゴーレムでいいんだな?」
アヤメ、ユズハ、コウヨウとレンの言葉に頷く。
俺とセツナはファイアー・ドレイクの塔に向かって走った。
「締切一分前、この時間が終われば最終決定となる。最後までよく考えたまえ」
最後までも何も、今向かった場所からさらに移動するのはもはや不可能だ。
俺は正直、デス・コードにも未練があったが、カエデが引くのだから、失敗しないだろう。
正直に言おう。
俺はカエデに負けたくない。
それには、この教官を選びで失敗すれば、確実に差をつけられてしまう。
「10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0……」
カウントが0になった瞬間、四つの塔の扉が開く。
中からは各一人のロングマント姿の男が姿を現す。
レンの予測通り、ゴーレムの製作者はレイだった。
そして、俺達が選んだファイアー・ドレイクは……。
「俺のクラスからは落第者は一人も出さん。厳しく指導するから、覚悟しておけ!! 俺は売り上げナンバーワン生成師ユイだ。覚悟はできてるんだろうな?」
それは青灰色の髪をし、こんな場面でも黒いサングラスで顔を隠したままの男だった。
その威圧的な言葉と、ハスキーな声に、俺は震えあがる。
最後のは明らかに俺に向けられた言葉だ……。
よくも俺をヒロインにしたな、覚悟しておけ!!っと。
デス・コードの製作者は少女のような愛らしい男、ヒスイだった。
「残念~!!」
彼は無表情のまま一言つぶやいて、さっさと部屋から去っていった。
「忠告したでしょう。あまり一人の先生に集中するなって。僕は四人も面倒をみきれませんよ……」
「え……?」
レイの言葉に、レン達は呆然としている。後悔したのだろうか。
ここで四人に死亡フラグが立ってしまったのだろうか?
それとも、俺達三人、いや俺達七人とも死亡フラグが立ってしまったのだろうか……。
だが俺自身はファイアー・ドレイクの生成師を選択したことに後悔はしていない。
ユイをヒロインとして攻略するつもりではないのだけれど……。
生徒的にあまり好かれていそうにないのは、残念だが。




