覚書/太陽から10光年の星系:『銀英伝』40年
小説『銀英伝』こと『銀河英雄伝説』は、1982~87年にかけて執筆されたスペースオペラだ。その中に「シリウス戦役」と「バーナード戦役」というイベントがあったことを記憶している。両者ともに太陽から10光年の距離にある恒星である。物語の中では、シリウスにもバーナードにも系外惑星があって、植民星があるという設定になっていたと思う。
小説発表後、2025年までに、直接観測法、トランジット法、ドップラー分光法(視線速度法)、マイクロレンズング法といった観測方法が確立され、系外惑星が続々と発見されてきた。
そこで、太陽系から10光年以内にはどのような恒星があり、系外惑星がどのくらいあるかをみてみようと思う。
恒星は主系列星、赤色巨星、超新星爆発、白色矮星のプロセスを踏んで消滅するかブラックホールになる。主系列星とは、中心部で水素をヘリウムに変換する核融合反応が起きている状態で、この段階が、星が一生の大半を過ごす最も安定した時期となる。白色矮星は、超新星爆発で外層を失った主系列星終末段階で、だんだん冷えて恒星は寿命を終える。
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太陽系から10光年に位置する主系列星は、シリウス、バーナード、ウォルフ359、ロス248と、ロス154が挙げられる。
主系列星とは、:恒星の一段階であり、中心部で水素をヘリウムに核融合させることでエネルギーを生成している状態の星のことだ。恒星が放つ光のスペクトルで、アルファベット順に分類がなされている。
シリウスはA型主系列星で、太陽のようなG型主系列星よりも大きく、高温で明るいA型主系列星。スペクトル分類がA0またはA1で、光度階級はVである。
ケンタウルス座α星系は、太陽系から約4.3光年しか離れておらず、最も近い恒星系である。三重連星であり、ケンタウルス座α星A、ケンタウルス座α星B、そして暗く小さな赤色矮星であるプロキシマ・ケンタウリからなる。
ケンタウルス座α星AはG型主系列星で、黄色く輝き太陽に類似している。
ケンタウルス座α星BはK型主系列星で、太陽と赤色矮星の中間型だ。太陽の0.5倍から0.8倍の質量。桃色をしているので桃色矮星と呼ばれている。
プロキシマ・ケンタウリはM型主系列星である。太陽の約1/7の質量と半径を持ち、木星の約150倍の質量でありながら、大きさは1.5倍程度。赤色矮星は中心部の水素核融合のコスパがよく、数千億年から数兆年存続する可能性がある。またここには系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」がある。地球の1.3倍の重量をもつ地殻(岩石)惑星だ。生命の生存可能な「ハビタブルゾーン」圏内であるため、将来の植民星候補として注目されている。
太陽はG型主系列星だ。表面温度は5,800K。比較的明るく、表面温度が約5300Kから6000Kの恒星のグループG型である。
バーナード星はM型主系列星で、赤色矮星である。表面温度は約3,200K。バーナード星系には系外惑星が4つある。いずれも地殻惑星で、質量は地球の20~30%程度で、38%である水星よりもさらに小さい。
この他、太陽系10光年内には、ウォルフ359、ロス248と、ロス154といった赤色矮星に分類されるM型主系列星が存在する。ロス248が、4万年以内、約3光年まで接近すると考えらえている。これは現在太陽家に最も近い恒星(主系列恒星)ケンタウルス座αの4光年よりも近い距離にある。
ここで赤色矮星について説明しておきたい。赤色矮星は、宇宙で最も一般的な恒星の種類だ。太陽よりも小さくて暗く、寿命が非常に長いという特徴がある。スペクトル型は、M型、L型、T型、Y型に分類される。表面温度は、3,500K(約3,200℃)以下から、低いものでは2,000K(約1,700℃)程度までと、かなり幅がある。赤色矮星は恒星中心部の水素核融合に必要な質量が、木星質量の80倍以上ある。
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――備考――
赤色矮星関連:
赤色矮星の寿命:
赤色矮星は、他の恒星よりも質量が小さいため、中心核での水素燃焼が非常にゆっくり進む。そのため、数千億年、場合によっては数兆年という非常に長い寿命を持つと予想される。
太陽系‐プロキシマ恒星間航行:
プロキシマ・ケンタウリは地球から約4.246光年離れている。約40兆kmだ。光の速さが秒速約30万㎞。現在の宇宙船の速度は、光速の数千分の一程度。光速の1/1000の速度で移動すると、到達までに4246年かかることになる。
ショルツ星:
7万年前に太陽系をかすめた主系列星で、いっかくじゅう座に属し現在は、太陽から20光年前後(17‐23光年)の距離にある連星系である。この星は8(あるいは7)万年前、太陽系に、0.9光年まで接近したことがある。赤色矮星。氷河期最終氷期の発生と、ネアンデルタール人、デニソワ人、ホモ・フローレンシス人が5万年後前に絶滅したこととの因果関係があるかもしれない。/NEWS 20150220 「7万年前に恒星が最接近、地球に彗星の嵐か:太陽系をかすめた赤色矮星、ネアンデルタール人も見たかもしれない」 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150219/436162/
トラピスト‐1 (TRAPPIST-1):
地球から約40光年離れた場所にある赤色矮星で、その周りを7つの系外惑星がある。いずれも地殻惑星で、うち3惑星が生命の生存可能な「ハビタブルゾーン」圏内であるとされる。
褐色矮星:
恒星になれなかった、恒星と木星のようなガス惑星の中間的な天体だ。恒星よりも質量が小さく、中心で水素の核融合を起こすことができないため、恒星のような輝きを放つことはできない。赤外線を放射する。木星は質量が足りず、褐色矮星になれなかった。
ノート20250812




