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僕らの情報共有

姉様とセライラ市の外で再会して、とりあえずルイザ達に用意して貰っている宿に移動した。

姉様の身支度をする侍女を連れて来なかったので僕の侍女のルイザを付けようと申し出たら、大丈夫と断られた。

理由を尋ねたら馬車の中にいた何処かのお嬢さんを紹介してくれた。

「えっと……こちらは?」

「ふふっ私の友達兼侍女候補のラナちゃんよッ!」

嬉しそうに告げる姉様と、デイドレスを着てとても綺麗にカーテシーする少女に、一瞬思考が停止する。

「ラナと申します。リナリア様のお世話はお任せ下さい。」

「あ、ああ…はい。……ん?」

ラナ、という名前に僕は覚えがあるぞ?

「ラナ…って姉様と一緒に攫われた下町の少女と同じ名前じゃなかったっけ?」

「ええそうよ。よく覚えてたわね!ユリウス。」

「では彼女が?」

「そう!誘拐仲間のラナちゃん。」

誘拐仲間って…せめて被害者同士とか、もっと他に言い方があるよね?

「確か屋敷に置いてきたタキ少年と兄妹だったよね?そんな彼女に侍女が務まるとは思えないんだけど?」

そう、家庭環境が悪すぎて目に余ると騎士の一人が連れ帰ってきた下町の少年。姉様が誘拐されたといち早く知らせに来てくれた。

そんな少年の妹ということは育ちも一緒だろう。その少女に大切な姉様を任せても大丈夫だろうか?この誘拐で酷い扱いをされた姉様を僕はできるだけ癒したい。そんなお世話をこの少女が本当に出来るのか?

僕の不審に満ちた質問に姉様がフフンっと笑って、

「彼女と一日過ごして問題ないと確信したわ!」

と、自信満々に言った。

ジッと二人を見るが…ダメだ。どうやら意思は硬そうだ。

「まぁ姉様がそこまで言うならそれでいいよ。でも帰ってから父様にはちゃんと説明しなよ。」

「もちろん!」

僕の釘刺しにも笑顔で元気に返事して、姉様とラナは部屋に入っていった。

二人の仲良さげな雰囲気に少し寂しさを感じたのは僕がまだまだ子供のせいだろうか。

「…なあユリウス…僕もユリウスと同じ部屋がいい!」

僕の後ろに居たカインが突然そんな事を言ってきた。

「はぁ?」

「だって学園に入ったら僕とユーリは同室で生活するんだろ?ちょっと練習してみようと、思ってさ。」

いやいや、絶対今の姉様達を見て羨ましくなったんだろ!?

練習!?…まぁたしかにこんな機会でも無ければ練習もしようがない…か?

僕だってあの楽しげな姉様達を見たらそりゃちょっとは羨ましく思うけど…

「僕は良いけどアルフレッドの許可は要るよ。」

僕はちらっとカインの後ろにいる護衛のアルフレッドを見る。カインもつられて後ろを振り返るとアルフレッドは肩を竦めて言った。

「構いませんよ。どっちにしろワンフロア貸切ってるんで。」

「やったッ!」

アルフレッドの言葉にカインが歓声をあげる。

その後僕らはそれぞれの侍女に入浴と着替えをさせて姉様と一緒に晩餐をした。

大丈夫と言われていたがたしかになんの不都合も無いようだ。

ラナは晩餐には来なかった。侍女として遇するなら僕らと同じテーブルには着けない。そこは姉様も分かっているのだな。カインはラナが居ないことに残念そうにしていた。

なぜ残念がる?

今回の誘拐についての姉様の話は大体は馬車の中で聞いたので、この晩餐の席ではそんな無粋な話はしない。

代わりにビックホワイトベアと冒険者達の話を聞いた。

姉様の話はまるで目の前にその光景が見えるかのように迫真に迫ってて料理を口に運ぶ手が何度も止まってしまい、ルイザにやんわりと注意された。


「では姉様今日はゆっくり休んでね。」

「ええ、ユリウスもカインも夜更かしせずに早く寝なさいね。私のせいで昨日もろくに寝てないのでしょう?探しに来てくれてありがとう。嬉しかったわ!じゃあおやすみなさい。」

「バレてた!」

「姉様も良い夢を。」

就寝の挨拶をして僕らは自室に戻った。

だからって晩餐後すぐに寝る訳ではない。

就寝の身支度をしてルイザとメアリーを下がらせると僕とカインは部屋のソファに座った。ローテーブルの上にはアリエスとシェリーそしてフウカも揃ってる。

「それにしてもリナリアは凄いな。」

カインが心から感心している。

「目が覚めたら岩牢で、自分とラナともう一人ファミーユ子爵令嬢が捕まっていたって!?あの真っ暗な地下だよね?」

(そうじゃ。こう…首から下を袋詰めにされてたのじゃ。)

僕の言葉にフウカが身振り手振りを混ぜて補足する。

「なんでそんなめんどくさい拘束するんだろ?縛った方が早いと思うのだが?」

カインが状況を思い浮かべてもっともな疑問を口にする。

「おそらく、手足を縛ると傷が着くからじゃないかな?あと、子供だし袋詰めの方が動きにくい?」

僕が何となく思ったことを言う。

「そういうもんかな?」

カインも半信半疑な返事をする。

「それで?あの地下からどうやって脱出したの?」

僕はフウカに続きを促す。

(うむ。その袋は我が切り割いて自由に動けるようにして、フリーナが魔法で筋肉男に出口まで案内させて、ラナが隠し扉を見つけて、出たらじーさんの屋敷だったのじゃ。)

「「((フリーナ????))」」

全員で聞き返す。

ここに来て新たな人物の登場とか、地下牢どうなってんだ?

(精霊じゃ)

だがそんな僕らの疑問をフウカが一言で片付ける。

「精霊…つまりファミーユ子爵令嬢にも精霊が付いているのか…」

ラナには精霊は付いてない。

ということは消去法で考えてファミーユ子爵令嬢の精霊と考えるのが妥当だろう。

貴族の子供達に精霊が付いてるかそうでないかは基本的には秘密だ。僕とカインと姉様はなし崩し的にバレてしまっているが、本当は知っていてはいけないことだ。

そしてまた一人精霊付きだと知ってしまった。

「ファミーユ子爵令嬢に姉様も精霊付きだと知られてしまった…よね?」

はぁ…とため息を着いてフウカに確認する。

(そうじゃな…そういう意味ではラナも知っているな。)

「あの娘も精霊付きなのか!?」

カインが驚いて聞き返す。

(いや、そうではなくリーナが説明しておったから知ったのじゃ。…まぁあまり驚いてもおらなんだが…)

フウカの言葉の後半は小声過ぎて聞き取れなかったが、やっぱり元凶は姉様なのか。

(だが三人で脱出する為には仕方が無かったと思うぞ?目の前で突然布袋が裂かれても説明しにくかろ?)

「それは…まぁそうだね。」

状況的に隠し通すのは無理だろう。

姉様の秘密を知ったファミーユ子爵令嬢は今後しばらくは注意しておこう。

「ファミーユ子爵令嬢の方は帰ってから調べればいいよな?」

カインの言葉にふと思い出す。

「…そのご令嬢、去年の王宮お茶会には参加してなかったはずだ。ファミーユ子爵家に招待状を送った記憶が無い。」

「?そりゃ自分達で書いてないからだろ?」

僕の疑問にカインが当然な事として答える。

「いや、そうじゃなくて…名簿に無かった気がするんだ。」

「まさか!?突然養女にでもしたって言うのか?」

冗談のつもりで放ったカインの言葉にフウカが反応した。

(そういえばそんな事を言ってたような…?)

「「えっ!?」」

首を傾げながら言ったフウカの言葉に思わず詰め寄る。

「本当に!?」

「冗談のつもりだったんだけど…」

(明日リーナに聞けば良いじゃろ?)

「「それはそうだけど…。」」

ファミーユ子爵家の養女が誘拐されるなんて…しかも姉様と同じタイミングで…まさか精霊付きってことが誘拐条件じゃないよな?う〜ん…

「それにしてもあの地下道でよく隠し扉を見つけれたよな〜真っ暗だったじゃん!」

僕の思考を遮ってカインが話題を変える。

「そういえばその隠し扉の先が前クーベルタン侯爵の別邸に繋がっていたって言ってたね。」

それもなんだかモヤッとするんだよな。

(とても親切じゃったぞ?)

フウカが力説する。

だがどう考えてもなんかおかしいんだ。明日父様に訊ねてみよう。

「でもさ、王都まで送ってくれるって言ってるのにわざわざ大回りして西の街道通るって意味分かんないよな!」

そうだ。そこだよ。

何故街の中を通らずに街の反対にある門から出たのか?

御者と姉様とラナのたった三人でなのはまぁしょうがないとして、乗ってる馬車に侯爵家を示す物が何一つ無いなんておかしいよな?そんな馬車で街道を行くなんて…盗賊にとったら格好なカモじゃないか!?

実際出会ったのは盗賊じゃ無くてビックホワイトベアだけど…。

「あのホワイトベア本当に大きかったよなぁ」

カインが思い出してつぶやく。

「アレをあの冒険者達が討伐してしかも担いで来るなんて…凄いよな!」

王宮にいたら絶対に見れない光景にカインはとても喜んでいる。

僕だって最初見た時は思わず足がすくんだ。死んでると分かっていても怖いと思った。姉様達はアレに追いかけられたって言ってた。どんなに怖かっただろう…

「ビックホワイトベアのワイルド種も居るって言ってたよな…ワイルド種……美味いんだろうな……」

「カインは、そういう基準なんだ…」

僕の感想とは全く違うカインの言葉に呆れ半分感心半分で言葉を返す。

「だって以前食べたワイルドビックレッドボアがあんなに美味かったんだぞ!?期待するだろ!?」

あ〜まあたしかにとても美味しかったからね。

「あのホワイトベアのお肉…ちょっと貰えないかな…」

「どうだろうね?明日誰かに聞いてみよう。」

「冒険者になれば自分の物ってなるからお肉食べ放題かな?」

「お肉食べ放題って…王子の発言としてどうなんだよ?」

苦笑しながらカインの言葉に返す。

するとカインは身を乗り出して力説し始めた。

「ユリウスも分かるだろ?王族ってそんなに贅沢してないって!毎日ワイルド種のお肉は食べれないんだぞ!?」

「毎日ワイルド種食べてる人間がいるとは思えないけどね。」

「やっぱり冒険者か……」

「?」

コンコンッ

ノックと共にメアリーが入ってきた。

「殿下、ユリウス様。そろそろ就寝のお時間です。ベッドにお入りください。」

「ええ〜」

「ほら、カイン。寝る時間だって。」

渋るカインをベッドまで連れて行き自分もベッドに入る。

自宅以外のベッドなんて生まれて初めてだ。

寝心地が悪い訳では無いが、なんだかよそよそしい肌触りに、ああ知らない場所なんだと改めて思った。

「では良い夢を。」

そう言って灯りを消してメアリーは部屋を出ていった。

「ククッ」

カインのベッドから妙な音がする。

「カイン?」

「なんか、不思議な気分。全然眠れる気がしない。」

横並びのベッド

真っ暗なのに自分以外の人間の気配

知らない感触のシーツ

疲れてるはずなのに眠くならない不思議

「なぁユリウス。」

「ん?」

「早く学園に行きたいな!」

「うん。そうだね。」

学園…毎日こんな風に寝るまでおしゃべり出来るのか。たしかに楽しみだ。

(ほらほらもう二人とも黙って寝るんだよ!)

(眠れるようにリラックスさせてあげるからね〜)

(我もリーナのところに帰るのじゃ。)

(フウカまたね!)

(フウカ、おやすみ〜)

(うむ。お主らもおやすみじゃ!)

「おやすみ。」

「ふわぁ…おやすみ…」


次の日

僕らは無事帰宅した。

結論から言うとラナは姉様付きの侍女見習いにはなれなかった。

彼女はあまりにも優秀すぎるという事と姉様の強力な推薦により僕らの義妹になったのだ。だが養子になったのはラナだけで彼女の兄はそのままウチの騎士見習いのその下の予備軍に入れられた。

予備軍と言うとなんだか物々しいが、将来ウチの何らかの使用人もしくは騎士団に入る為の教育を住み込みで出来るという事だ。下町の子供にしては破格の待遇だ。





初めてのお泊まり。興奮して眠れないかもと思いきや強制リラックス効果で朝までぐっすりって…寝かしつけにちょ〜便利。

無事誘拐からの帰宅です。

そしてラナは養女に…え、そんな予定無かったんだけど……((汗))

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