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お茶会企画準備中

姉様の用意してくれたパズルは、子供だけで試してみると言ったカインの言葉も虚しく、王族ご一同とてもおハマりあそばして、満場一致でお茶会の中に組み込まれることになった。

姉様が最初に頼んだ木工工房に王家の名前で正式に依頼を出しに行ったら親方がひっくり返って驚いていたとかいないとか....

ともかくも、大まかなお茶会の予定は決定し、今日は座席表を決める事が課題になっていた。


円形のテーブルに大体六~八人ずつ、出来るだけ身分が釣り合うように組み合わせる。

この時に名前と爵位を覚えるのが王族の義務だ。そして当日の開始時に挨拶に来た時に顔を覚えるのだ。今年は僕がカイン達の後ろに立って爵位と名前をこっそり教えなければならないのでとても責任重大だ。


僕も去年参加した時に出席していた人達の名前と顔は覚えたが、今年初めての参加の子息令嬢は今覚えなければならない。普通に参加するだけなら当日に覚えればいいんだけどね。



会場は例年通り王宮のお茶会棟二階である。

奥宮からは庭園専用馬車で庭園を抜けて行くか、歩いて行く。

なんせ王宮と一言で言っても城壁の中には式典用の正殿、行政を行っている行政区、各資料庫、王族の住居である奥宮、騎士兵士の鍛錬場、兵士宿舎に馬場と馬房、メイドや下働き用の宿舎、庭園に至ってはガゼボ付き庭園に噴水の有る流水池と水上東屋、迎賓用の離宮も有る。


王宮と池を挟んだ反対側にお茶会をやる離宮は有る。そこではお茶会の他に夜会やダンスパーティ等も催される為、イベント用の専用門が有るのだ。なのでお茶会の時にはそちらから皆入城するので正門に回る必要は無く、執務のために登城する貴族や平民の役人等と会うこともない。

ちなみに僕が毎日使っている奥宮の玄関からだとほぼ反対側だ。だが僕は今回主催側なのでカインと一緒に奥宮から離れに行く事になっている。



王宮お茶会の大体の流れは、まず子息令嬢が会場入りして着席後王族(今回はカインとシャスリーン王女)が入場して開始の宣言をして上座のソファに座り身分の高い貴族から順に挨拶を受ける。王族が参加者と挨拶をしている間、挨拶前後の貴族達は全員の挨拶が終わるのを談笑して待つ。王族が全員の挨拶を受けたら一番身分が近い、近くのテーブルに移動して席に着いたら会食の始まりである。


例年通りならおよそ二時間程でお茶会はお開きとなる。


今回は会食が終わった時にパズルをする予定だ。パズルは各テーブルに一個づつ、ある程度の飲食が終わったタイミングで、メイドに置いてもらうようにした。最初から置いておくと邪魔だろうからね。


「今回僕らが座る座席は....ん〜ちょっと難しいですね。」

僕が出席者リストを見ながらちょっと困った状態な事に気付いた。

「どうした?」

「僕らが座るとこのテーブルだけ十人になりますね。」

「じゃあ二つに分けるか。」

「そうすると殿下とシャスリーン王女殿下も別れて座ることになるのですよ。」

そうなると、兄妹で離れて座ることになる。だが、王族を片方のテーブルにだけ座れせてはもう片方が釣り合わない!ああっしかし!?


今回このお茶会のために貴族の一覧表と夏に編纂された戸籍表を隅々まで調べたら、我が国には公爵家が一つと侯爵家が十二、伯爵家が三十、辺境伯家が三、子爵が二十、男爵家が十二、準男爵家が五、騎士爵家が三十ある事が分かった。

このうち公爵家は現国王の弟が王族から臣籍降下された際に公爵の位を賜ったのだが、我が国では公爵位は本人のみで、その子供たちには継承されない。公爵は王弟ただ一人の身分である。その子供たちは婚姻するまでは公爵家として遇されるが婚姻後は配偶者の家に入る事が決められている。なので現在の公爵家にはお茶会に来れる年齢の該当者は居ない。


また、男爵位の下の準男爵は貴族の義務が伴わない爵位なので当人のみの身分であり、その子供にお茶会の参加資格は無い。

騎士爵はいわば個人の名誉を寿ぐための名誉称号なので関係無い。


つまりお茶会資格が有る貴族家は七十四家。

今回の王宮お茶会の参加者は百二十名。

王太子殿下の結婚時期を見て、王子または王女と自分の子供を!っと頑張った貴族の努力の賜物といった感じか、近年稀に見る人数である。もちろん我がシャルマー二家もその頑張った貴族家の一つであろう。

息子が王子の従者になる事まで産まれる前から計算されていたとは思いたくないが、あの父様と王太子殿下の仲の良さならなくも無い話なのか....?

それはさておき、そんな中で侯爵家だけで僕も含め八人参加である。さすがに八人テーブルに十人は狭すぎるだろう。

だから侯爵テーブルを二つに分けてカインとシャスリーン王女も別々に座るという事に行き着くのだが、姉様大好きな僕としては兄妹が離れて座ることに少しだけ抵抗を感じてしまうのだ。

「ユリウス様は何を躊躇っているの?」

シャスリーン王女が理解できないって顔で僕に直接聞いてきた。

「あ、いえ、頭ではわかっているのですが....」

僕が歯切れの悪い返事をすると、カインがポンッと手を打って言った。

「ああっ!ユリウスは僕ら兄妹が別れてテーブルに着くのがちょっと引っかかってるんだよな!」

「うぐっ」

「なんだ、そんな事を思っていたのね。お母様からも王族たるもの私情はニノツギですよと言われていましてよ!」

「はあ、まあ、おっしゃる通りです。」

自分より年下の少女にど正論を言われてしまった。

「とはいえやっぱり話しやすい人と同席が良いので私のテーブルにはこの方とこの方は欲しいですわ。」

「じゃあこっちはリナリアは当然としてこのメンバーにしよう!」

「この方は今年初参加ですね。覚えておかねば....」

「伯爵家ってなんでこんなに多いの!?私、今年初参加ですのよ!?覚える人数がとても多いじゃないッッッ!!!」

「ああ~そういえば、今年初参加の人数も多いですね。」

「家名と名前を覚えるだけで当日になってしまいそうですわッッ!?」

等など、僕らは外には出せない本音を言いながら座席表を埋めて行った。

この作業が結局名前を覚えるのに一番効率がいいからだ。


出来上がった座席表を持って王太子妃様の所へ行く。

この座席表が問題なければ準備段階の山場は越える。

じっと書類を見る王太子妃様を前に僕ら三人は固唾を飲んで裁可を待っていた。

「ちゃんと調べて作られていますね。こちらの把握している名簿と比べても記載漏れも無さそうですし。」

にっこりと微笑みながらの王太子妃様からの合格が貰えた。

僕らは同時にほうっっと息を吐く。

無意識に呼吸を止めていたようだ。

「開催日は例年通り十二月の最初の金曜日。場所も離れのお茶会棟二階お昼丁度から開始という事で。あとは....後半にパズルをする事はサプライズで、ということでどうですか?」

僕が手元に控えておいた蝋版を見ながら補足説明をした。

「それならば大丈夫そうね。ではそのように招待状を作成してもらって発送してきなさい。」

「「「はいっ!」」」

僕らは元気よく返事をして王太子妃様のお部屋から退出した。



「はああ、お母様とはいえ、緊張しましたわ~」

シャスリーン王女が普段では見られないほど肩の力を抜いた発言をしながら廊下を歩く。それほど緊張していたのだろう。

「公務となると普段おっとりとした母上があんなに真剣になるのだな。」

カインも普段の様子と公的な立場の時との雰囲気の違いに何か感じるものがあったらしい。

「王室主催ですからね。やはり間違いがあってはいけませんから、厳しくもなりますよね。」

二人の一歩後ろを歩きながら僕もやや緊張感から解放された気分になっていた。


「ところで僕らは何処へ向かって歩いてるんだ?」

奥宮を出た所でカインが聞いてきた。

「招待状を作成して発送してくれる所ですよ。」

王宮からの招待状は、もちろん王族が手書きしてるわけもなく、専用の部署が間違いのないように作成してそれぞれの家に届けてくれている。僕も先日父に聞いて初めて知ったんだけどね。



さっきとは逆に場所を知ってる僕が先導して王子と王女を連れて歩くのは、ただでさえ子供が居ない行政区でなかなかの注目を集めていた。

「ユリウス様、何故ここの方々は貴族だけでなく平民もいらっしゃるの?」

周りの様子を見てシャスリーン王女が僕にたずねる。

「僕もまだまだ勉強中ですから詳しくはないですが、どなたも皆さん国のために働いていらっしゃるのですよ。」

勉強中の僕は本当の意味でこの行政の仕組みの良さがまだ分からない。

別に平民が嫌いとか貴族だけが偉いと思っている訳では無い....と思っているけど、そんなに平民が王宮に必要か?とも思う時がある。特に父様と朝登城する際、貴族は馬車で城に来るのだが平民は歩いて登城する。門から貴族用玄関までの間、馬車道から見えにくい様に植木が植わっているとはいえ、その植木の向こうの平民用歩道を隙間なく城に働きに来る平民が歩いているのを知った時にはとても驚いたものだ。父様は「凄いだろう?」と、得意げになっていたが、実はよく分からず頷くことしか出来なかった。

「馬車乗り場以外で行政区を歩くのは初めてだから全然知らなかったな。」

カインも物珍しげにキョロキョロしている。

「僕も行政区に来たのはまだ数回しかありませんよ。」

一番長くて先日の戸籍調べの時ぐらいだ。


「あ、こちらの部屋みたいですね。」

僕はノックをする。

中からガチャリとドアが開けられたので、素早く横にずれてカインに先を譲る。

中に入って目に飛び込んできたのはこちらに背を向けペンを動かしている何十人という人達だった。

いや正確にはこちらに背を向けていると言うよりは、窓の方を向いているという方が正しいのだろうか。

次に思ったのは部屋に満ちているインクの臭い。こんなに部屋中インクの臭いがするのは初めてだ。それに人は多いのに言葉は無く、紙の上にペンを走らせる音やインクにつける音、その微かなはずの音が何十と響いていた。

「あら、珍しい!小さなお客様ね。」

一種異様な光景に三人して立ちすくんでいたら後ろから女性に声をかけられた。

ハッとしてそちらを見たら、眼鏡をかけた妙齢の笑顔の女性がドアをそっと閉めて、スタスタと受付と書かれた机の向こうにまわり、椅子に座った。

「あ、....お茶会の招待状を出したいのだが....」

カインが気圧されながら何とか要点だけ言うと、受付の女性は合点がいったのかうんうんうなづいて、

「ああ~もうそういう時期ですものねぇ。あら、いつもはセビリア様がいらっしゃるのに、今年は....お子様?」

後半首を傾げながら独り言のように言う。

「今年は王太子妃様のご意向で、カイン王子殿下とシャスリーン王女殿下が主催でお茶会が開かれることになりました。先程王太子妃様の確認もしていただいたので、招待状を作成して発行していただきたくこちらに参りました。」

僕は相手が貴族か平民かも分からないので、できるだけ丁寧に説明する。

眼鏡の女性は僕の説明にほうっとうなずき、受付の机に用紙を一枚置いた。そしてペンにインクをつけるとこちらに向けて差し出しながら笑顔で言った。

「なるほど、王子殿下と王女殿下と宰相令息でしたか。聞きしに勝る秀才ぶり。お会いできて光栄です。ではここにお一人づつお名前をお願いいたしますね。」

机の上の用紙の下半分の空欄に三人分の名前をそれぞれが書く。

上半分には細かく項目が別れて書き込めるようになっていた。

僕が最後に名前を書き終わってペンを戻すと、彼女はまたインクを付けて、

「では承りますね、開催日は十二月六日、場所はお茶会棟二階、時間は午後十二時開始、子供の王宮お茶会。っと....あ、招待客名簿お貸しいただけますか?」

彼女は流れるようなスピードで上半分のスペースに必要事項を書き込み、名簿を要求した。

「名簿有り、借り受け同日。」

と書き込む。

そして、手のひらサイズのカードを引き出しから出し、それに今日の日付と子供の王宮お茶会招待状 作成 発送、名簿借り受け中、そして彼女本人の名前を書き込み、受付書類との割印を押して僕らの目の前に差し出した。

「え、えっと....?」

さすがのカインもあまりの流れるような作業に追いつけず、全力で戸惑っている。

「はい。コレが受け付け受領証です。お茶会が終わるまでは大切に保管して下さいね。名簿はこちらで書き写しが終わりましたら奥宮にご返却に参りますね。」

「あ、ハイ。」

受領証を受け取って返事をした。

三人してカインの手元のカードを見る。

あまりにも早く受け付けてくれたのでまるで現実感が無く、つい呆然と立ちすくんでしまったのも仕方がないだろう。

「殿下がた?どうされました?もう大丈夫ですよ?」

帰ってくださってもーーーと声にならない言葉が聞こえた気がした。

「ッ、迅速な対応ありがとうございます。ではよろしくお願いいたします。ではカイン殿下、シャスリーン王女殿下、帰りましょう。」

僕は何とかお礼を言って部屋から退出した。


僕らはその後言葉も無いまま奥宮の勉強部屋まで戻ってきた。ソファに座りメイドにお茶を入れてもらって一息ついた。

テーブルに置かれた受領証が、さっきの出来事が現実だと静かに主張していた。





お茶会の準備が整ってきてますね。

子供から見たらテキパキとお仕事が出来るのはかっこいいのだけれど、やってる内容が早すぎるとそれはもう呆然とする出来事ですよね~


良かったら(○-∀・)bいいね!お願いいたします!

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