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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#8 知らない顔
82/105

#8-10 戦いの渦中で

 

「特異生物なんて、何でこんなところに」


 避難誘導からこっそり隠れて離れ、近くの建物の柱の裏にピッタリとくっついてスマホのカメラを構えてキョロキョロと周りを見渡す。よし。周りには誰もいないな。


 ここはディスティニーランドのエリアの一つ。何でも西洋劇に使ったセットを再現しているようで、普段はウエスタン風のおしゃれな音楽に劇中の登場人物が愉快に踊りカウボーイがカッコよく銃を撃っている。ちょうど取材にきていたところで特異生物騒ぎに巻き込まれてしまった。周囲の人たちからしたら最悪だろうけど、僕からしたら棚から牡丹餅。ここでさっさと逃げるなんて選択肢はない。


「あれ、本物の銃か……?」


 僕が隠れている物陰の先にいる背の高い男性は、シャチの特異生物相手に銃を撃たない。それどころか相手の攻撃を交わしたりうまくいなしてばかりで、ずっと守勢ばかりだ。あの人、あの森で観た長身の男性だ。間違いない。ってことは変身できるはずなのに、何で変身しないんだ?今ならちゃんと録画も回しているのに!


 シャチの噛みつきをひらりとまた躱し、距離をとったことでシャチの方の特異生物がため息をつく。


「ねぇ私ばっかり攻めるの、何だか飽きちゃうんだけど?」


「あぁそりゃ悪いね。俺ここぞって時しか撃ちたくなくって」


「あらあら恥ずかしがらずに!素直に遅漏って言えよ!」


「っ!」


 シャチが近くにあったデザートワゴンを掴んでぶん投げ、大きなそれを背の高い男は人間とは思えない跳躍力で飛び越えたはいいもののさらにそこへシャチが勢いよく噛み付く。これは流石に躱すことができず腕に噛みつかれ、そのまま地面に押し倒す形でシャチが馬乗りになる。


「残弾、気にして勝てるのかしら?」


「………」


「あらあらお堅いお口だこと。じゃあこの素敵な顔面ごと」


 シャチが腕を振りかぶる。てかあの腕、シャチじゃない。まるでヒグマみたいな腕だ。あんなのに殴られたら?まずい、万事休すじゃん...…!?


「引きちぎってやるよ!」



「ならお望み通り」



 え?


 男の人は迫る爪を頬に浅い切り傷を作りつつもギリギリで避け、腹筋で上体をおこしてシャチに抱きつくような形でシャチの耳に口を近づける。こちらまでドキッとするような扇情的な微笑み。



「あげるよ、欲しいんだろ?」



 パンッッ!!



「ッギッ!?ギャアアアアアアアッ!?」


 すると銃声が鳴ったと同時にシャチは頭を、いや、耳を抑えてその場に転がる。何が……いや、そうか、そういうことか!


「シャチもヒグマも耳がすごい良い……って聞いたことあってね」


「ウッ、うぐ、お前!?まさかこれを狙って初めから!!」


「どうせ拳銃じゃ特異生物に有効な傷一つつけられないしね。さて、じゃあ」


 あの時、僕の方からじゃ頭しか見えてなかったけど、反対側の手でシャチの耳元で銃を《鳴らした》んだ!それで耳のすごく良いシャチは頭がかち割れそうなぐらいの爆音が一気に入ってきて動けなくなる!


 無意識にガッツポーズを決めていた。やっぱりあの男の人は、あの3人組は人間の味方なんだ。特異生物を倒す特異生物、まるでヒーローみたいだ!こんな特ダネ他にない!


 男性はしゃがみ、のたうちまわるシャチのこめかみに銃を押し当てる。


「あと何発耐えられるか、実験しようか」


「〜〜っ舐めるなァ!!」


 鋭い爪を振りかぶりながら起き上がるシャチを簡単に避け、その腕を掴み引き寄せ鳩尾を膝で蹴ればガハッとシャチから唾液が漏れ動きが鈍くなる。


 パンッッ!!


「ギャアッッ!?」


「2」


 そのままシャチを地面に叩きつけ、よろめきながら立ちあがろうとするところを後ろから馬乗りになって締め上げる。


 パンッッ!!パンッッ!!


「ァァアアアッッ!?」


「3、4」


「すごい…」


 ただの人間なのに、いや特異生物だけど、人間の体なのにあのシャチの特異生物を圧倒してる!大きな声を出してこっちに気をとられたらまずいからできないけど、本当は声をあげて応援したいぐらいだ!!


「う、うぅぅううぁ!」


 わけがわからなくなったのか、腕をブンブンと振り回して暴れるシャチからすぐに離れて上を見てニヤリと笑った。そしてシャチの真上あたりを狙うように拳銃を構える。何だ?上?何が…...


 パンッッ!!


 あ、あれは!


 男性が撃ったのはシャチのちょうど横にあったクレーンが吊っているコンテナを支えるクランプ!雰囲気を出すための園内の飾り付けだと思ってたけど案外重いみたいで、撃たれて歪んだクランプがコンテナを支えきれず落下して、シャチに直撃する!


 ガシャアアアアアンッッ!


「アアアァァアアッッ!?」


「よっしゃナイス!」


「え??」


 咄嗟に隠れる。ヤバイ。やばい。思わず口に出して喜んじゃった。ドッドッドッと心臓がうるさい!静かにして!!


「気のせいか...…いるわけないし」


 男性はそのままシャチの方へ歩いていく。よかった、バレてない。こそっとカメラのレンズだけを陰から出して外の様子を伺う。


「さて、今えーと、5……4発か」


「ぐぅっクソ!クソ!でも、でももう弾ないわね!?私の耳と頭が回復したらすぐに食いちぎってやるわ!楽しみにしてなさい!」


「え?なんか勘違いしてない?」


「はぁ?」


 拳銃から空の弾倉が落ちる。そしてヒーローは手慣れた手つきでリロードしていく。え、いつの間に...…!?


「な、な、なんで、アンタ、あんなに残弾数気にして」


「うちのオペレーターは優秀でね。欲しいものはすぐ用意してくれんの。あ〜ちゃんとリロードできてよかった...…で」


 チャキッとシャチに銃口が向く。見た目こそニコニコと笑っているがその瞳の奥の絶対零度に、離れた僕まで恐怖を感じた




「次、何発目だっけ」




「ひ、っひぃ、ぁ、ゆ、許して…」


「自分から誘ったくせにもうお腹いっぱい?いやいや、そんな訳ないよな」


「うっ、うわああああああ!!」


 シャチはガタンとコンテナから抜け出しヒーローとは反対方向に走りだす。あ、逃げた。


「寂しいじゃ〜ん。……逃げんなよ」


 男の人は半分笑いながらそれを追いかける。いやカッコえぇぇえ!?僕も、この戦い、最後まで記録したい!


「っえ」


 突然後ろから服を引っ張られ、ドスンとその場にひっくり返る。何!?誰!?まさか特異生物!?


 慌てて勢いよく後ろを振り返ると、そこには


「お母さん……どっかいっちゃった……」


「子供!?」



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