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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#17.5 幕間 名前を呼んで
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#17.5-6 孤独なんて知らない

 

「…………?」


 ガタンと一際大きくゆれた振動で目を覚ました。目を覚ましたといいつつ、視界は真っ暗だけど。


 目のあたりと後頭部に圧迫感。それにこの質感、多分目隠しをされている。耳には特製のヘッドホンが付けられて、周囲の音は最低限しか聞こえない。


「あぁ」


 そうか。ここは現実だ。

 おそらくダイバー大橋からの帰りの車だろう。揺れるこの感じも車に乗っているから。あまり意識ははっきりしていないけど、多分そう。


 目隠しをされているのは本部の正確な位置を俺たち特異生物に悟られないようにするためだ。


「……?」


 隣に誰かいる?

 両隣にいるな、これ。


 両肩に圧を感じる。ていうか両隣で誰かが寝ている。まぁ、見えないけど誰かはわかる。


 耳をすませば吐息が二つ分。2人は大怪我だったし、休んでいるうちに寝てしまっているのだろう。それにしても、こんな側で寝る必要ないと思うけど。


 でも、まぁ。


「利子、にいちゃんはもう寂しくないから」


 聞いてるかな。


「心配かけてごめん。もう大丈夫だから」


 今までずっと見ていたってことは、情けないところをたくさん見せてしまったんだろう。余計な意地を張った時も、独りになるかもしれないと言ってくだらない隠し事をした時も。さぞ頼りのない兄貴だっただろうに。


 心配をかけた。ごめんな。


 ポンポン、と胸の辺りを優しく叩く。頭を撫でる時と同じように。


 伝われ。伝われ。




「……おはよ」




「えっ!?りゅ、龍斗さん!?」


「うるさいぞ。海美ちゃんが起きる」


「え、あ……………いつから起きてたんですか……!?」


 右隣から突然聞こえてきたのは龍斗さんの声。驚きでその場で小さく飛び跳ねる。


 ていうか、声に寝起き特有の間延びした感じとかないし、これずっと起きてただろこの人……!てことは全部聞いてた?


 居心地が悪くなって、左にほんの少しだけ詰める。恥ずかしい。無理。全部聞かれてだってことだろ。無理だよ無理!


 そんな俺の心中も知らず、からかいの言葉が飛んでくると思えば、予想外におとなしい声が返ってくる。


「会えた?」


「……なんの話ですか」


「とぼけんなって。家族だよかーぞーく」


「……」


「父さんだの母さんだの、魘されながらつぶやいてたら察する。途中から静かになったからよかったけど」


「……すみません」


「それに、会えたんだろ。…………事故で亡くなった、妹ちゃん」


「……」


「……」


 言いづらい。とても。


 こういう時に黙りこくってしまうのはいけない癖だとわかっている。けど、何を言えばいいのかわからないんだ。ちょうどいい言葉なんて見つからなくて。


 気まずさにまた左に詰める。すると、右隣で何かが動く感覚がして、


 ポン

「!」


「……」


「っ……」


 頭に置かれたその手は、大きくて暖かくて。


「……帰ったら、まずは休んで、そしたらみんなで飯食うぞ」


「……」


「……」


「……まず、煮込みが必要な煮込みうどんからですね」


「そうだな。すき焼きも早めに。味染みるとほんと美味いから」


「海美にも手伝わせないと。量多いし。言い出しっぺだし」


「あはは。そうだな」


「んん…………あれ?2人とも何話してんの?」


 左側で身じろぎする感覚。やけに間延びしたすこし低い声。朝早かったからな、まぁ、寝坊は許そう。


「海美に鍋作ってもらおうって話」


「え!?え、無理無理無理、味見が精一杯!」


「海美ちゃんもお仕事いっぱいだね〜〜!」


「龍斗さぁん助けてぇ〜!」


「おい龍斗さんに甘えるな、龍斗さんも甘やかさないでくださいね!」


「ひぃ〜優也の鬼!」


「やーい鬼〜!」


「アンタふざけて……もういいです」



『鬼じゃなくて、お兄ちゃんだから!』



「っ!!」


 今、何か、聞こえて、


「え?どうしたの優也」


「なんかあったか?ごめん目隠しで何も見えねぇ」


「え、あ、いや……」


 そうか、君はいつでもそこにいたんだ。

 俺がいつも気づいていなかっただけで、確かなそこにいるんだな。


 胸に手を当てる。そうか、君はここに。


「……別になんでもないです」


「あーーー!また隠し事!?」


「ちげぇわ」


「なんだなんだ〜?まだ殴られ足りないか〜?」


「違いますって!ただ、その……変な話だから」


「えっ知りたい知りたい!」


「いい加減諦めろこのすっとぼけ野郎が!」


「わぁっ!?ちょ、いきなりつめんな!」


 両側から挟み込まれてぎゅうっと狭くなる。本当にたいしたことない話だっていってもお構いなしだ。


 ……まぁ、いつか紹介してもいいかもな。


 今だけは挟まれてやろう。ぎゃあぎゃあとうるさい笑い声。目が見えなくとも、耳が中途半端に塞がれようとも、貴方たちがそこにいることぐらいわかっているから。



 そう。俺の隣にいるんだから。

 寂しいなんて思うわけがない。

 孤独なんてもの、知るもんか。



 そんな3人の喧騒は、朝日が昇り始めたばかりの静かな夜明けの街に小さく響いて、誰に知られるわけでもなく消えていった。

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