#17.5-1 知らない遊園地
体が揺られる感覚で目を覚ます。目を開いたら、そこは見知らぬ遊園地のようだった。
高く上った太陽が俺を照り付ける。手で太陽を隠しながら空を見上げると、周年を祝う装飾で彩られた大きな門があった。
「あれ……?ここ、どこ……?」
声を出せば、なんだかいつもより高いような。
それになんだか、視界も低いような。
手を見れば、戦闘訓練でごつごつした手ではなく、子供らしい小さくやわらかな手。10歳くらいだろうか。
「優也、どうしたの?」
「……父さん?」
後ろから声をかけられ顔を上げると、不思議そうな顔をして俺を見下ろしている父さんがいた。白衣じゃない、私服の父さん。しかもこんな私服見たことないぞ。
「なんで、父さんが、生きて……」
「なんでってなんだ?」
「てか父さん、その服」
「え?……やっぱ変だったかな」
「あ、いや、なんか珍しいなって思ったんだ。紺色のシャツは見たことあるけど、そんな赤いかーディガン持ってたっけ?」
「ほら、あの有名なキャラクターっぽく着替えてみたんだよ。というか、そんなことを言ったら優也も同じだろう?」
「え」
父さんに言われて自分の服装を見直す。赤いトレーナーにデニム生地のオーバーオール。それはこの遊園地の有名なキャラクターの服装と同じだった。
俺はこんな服、持っていなかった。それにこの遊園地も来たことはない。テレビで見たことあったから知っているけど、研究所のある東京から離れたところにあるし、父さんにそんな暇はなかった。
てことは、これは現実じゃない。夢……にしては妙にリアルだけど。
「どうしたんだ?暑くなっちゃったか?」
「あ、ううん、えと……今って何年だっけ?」
「今……?ええと、」
父さんが告げる年数は、コトラ事件が起きたときの年。忘れるわけがないし、間違えるわけもない。
過去に戻るなんて現象はあり得ない。となると、やっぱり俺が見ている夢なんだろう。意識がはっきりしている、いわゆる明晰夢ってやつ。こんな夢を見てしまうなんて、疲れているのかもしれないな。
夢を見る前って何をしていたんだっけ。ええと、確かザセルにコトラ研究所へ誘いだされて乗ったところだよな。最終攻撃を仕掛ける前にいったん本部に戻ろうとしたところまでは覚えているけど……そこからは曖昧だ。これは帰りの車の中で観ている明晰夢と言ったところだろうか。
うんうんと唸っていると、父さんがしゃがみこんで俺の顔を覗き込む。
「優也。大丈夫か?なんだか様子がおかしいよ」
「え、あ、あぁ。大丈夫。ごめん父さん」
「本当に?優也はいつも無茶をするから」
「ほんとほんと。大丈夫。あはは」
「そうか。でも、本当に無理するなよ。折角の遊園地だからって、無理する方が父さんは悲しいからな」
父さんが微笑んで、俺の手を優しく引く。
周囲の楽し気な声が、透き通る青い空に響いている。
これが現実だったらなぁ、そこまで考えてピタリと体が硬直する。
こんな夢、俺に見る権利なんてないだろ。
こんな夢、俺がいていい場所じゃない。
父さんの手を払う。父さんは驚いたように俺を見つめていて、その視線に手の先から冷えたような感覚がした。
ごめんなさい。こんな夢を見て。
「優也?」
「俺、ここにいちゃいけないんだ」
「ここにいちゃいけない?」
「こんな夢、本当は見ちゃいけないんだ。父さんにこんなことさせて。俺の潜在的な何かがそんな夢を見せちゃって」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。優也、どうしたんだ」
「だって…………父さんは、俺は────!」
「お兄ちゃん!!」




