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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#14 Bravery in my heart
222/231

#14-27 予想外の景色

 

「そうか。……で、なんで顔赤いんだ?」


「え、」


 スイッチを押したように笑顔から切り替わり、また心配そうに私を見ている。


 ん?何?顔……?


「ちょっと引いたけどまだ赤いよな。龍斗さん!端末で撮ってください!」


「あ、え、」


「龍斗さん……龍斗さん?何で砂に顔埋めてるんですか?俺は何も見てない?そりゃそんな体勢ならね。早くきてくださいよ。『ジコチューでも俺は好き』?いや自己中はダメでしょ。……頭打ちました?」


 優也は左に顔を向けて眉を寄せている。釘付けになっていた瞳が逸れて、ハッと現実に戻ってきた感覚がした。……してしまった。優秀な私の頭は私と優也の置かれている状況を確認してしまう。


「あ……?」


 私が仰向けで、私の顔の横に両腕をついて私を覆うように優也がいる。体がピッタリくっついていることはなかったことが不幸中の幸いかもしれない。でもさっきまであんな顔近づけてて、


 しかも、じ、じこ、ちゅー?


 ちょっと待ってよ。


「海美、ちょっとここにいられ」


 嘘でしょ?


 私、ファーストもまだなのに?


「い、」


「い?」



「いやあああああああああああっっ!?」



「いだぁっ!?!?」



 Spark!Ready for injection!



「チェンジっ、チェンジで!!」


「何がだよ!?」


「もごもご……もご?」


「無理!!耐性ないいいいい!!」


「おっ前最大火力の静電気やめろ!?」


「もご、え?海美ちゃん?」


「チェンジ!!チェンジマイふぃー!」


「はっ!?」


「えぇっちょっと待っ!?ちょ、ちょーーーっとまったああああああ!?」



 •

 •

 •



「任務後、回収待ちまでの時間は随分と楽しそうだったじゃないか」


「「「………………」」」


「で?change solutionを無駄遣いしたのは誰の責任だ?」


「「「………………」」」


「リーダーが静電気にびびっていたからか、ふげて止めず笑い転げていた年長者のせいか、結局change solutionを無駄遣いした本人が悪いのか。始末書を書かせるのは誰がいいだろうなぁ。おい」


「俺悪くなくね?むしろ被害者なんだけど」


「まぁまぁ気を抜いた3人全員が悪かったってことにしようよ」


「わ、……わたし!私が悪いので2人には手を出さないでください!!」


 三者三様の反応。ぼそっと不貞腐れる優也も、大きな声ではいっと元気よく包帯でぐるぐる巻にされている腕を上げて反省する海美ちゃんも本人らしい反応だね。いつも通りで何よりだよ。目の前の鬼もうん、いつも通りきつい眼光でなによりだ。


「お前らがアホのように使うchange solutionも作るのに金と時間がかかるんだ。わかっているのか?」


「俺はわかってます分かってないのはコイツです」


「私です!!」


「お前だけがわかってても意味がない。こんな話に時間を取るのすら馬鹿らしい。以後このようなことがないように」


「……了解」

「りょーかい〜」

「了解しました!!!」


「解散」


 クルッと椅子が回って背が高級そうな椅子の背もたれが向けられる。やれやれ、でも想定より短く済んでよかったな。時刻はまだ22時前。帰ってきたのが17時ぐらいで各々治療やら報告やらで落ち着いて今。これでお説教が長引いていたらお互いしんどいし、長官も疲れているんだろう助かった。


 司令部を出て雑談しながら居住区へ向かう。1番手前にあるのは優也の部屋だ。優也は扉を開けて半身だけ振り返る。


「じゃ、また明日」


「はいはい。夜更かしするなよ〜」


 バタンと部屋に続く扉が閉まった。さ、俺たちも部屋に戻ろう。ふぁ、と海美ちゃんが大きなあくびをして、つられて俺にあくびがうつる。まだ22時とはいえ今日は色々あったし、


「疲れたよねぇ」


「うん。でも火傷すぐ治ってよかった。あんなにヒリヒリしてたら眠れないし」


「特異生物様々だよね。俺も眼帯外していいって言われたし。普通なら失明してるはずなのにさ」


「こういうところはいいんだけどねぇ。……ゴホゴホッ」


「あれ?」


 海美ちゃんは苦しそうに胸を抑えて咳をする。


 こんな咳、前にしてたかな。


「大丈夫?」


「うん。ゴホゴホ、ゴホゴホッ。なんか任務終わってから咳がひどくてゴホッ」


「風邪ひいちゃったかなぁ。冬の海、寒かったし」


「ううん、優也が側にいたから全然寒くなかったよ。先生が言うには風邪じゃないって。なんか喘息?に似てるって言ってた」


「喘息?」


 喘息持ちだったっけ?と聞くと首を横に振っている。そうだよね、聞いたことない。


「咳止めもらったからこれで治るといいんだけ…………え?」


 突然海美ちゃんが来た道を振り返る。そこには当然誰もいないし、特に変わったものもない。どうしたんだろう。海美ちゃんは怪訝そうに眉を顰める。


「……今の何の音?」


「え?」


「今なんか、何かぶつかる音……したよね?」


「俺は何も聞こえなかったよ?」


「嘘!?結構はっきり聞こえたよ!ゴホゴホッんんっ、あっちの……そうちょうど、」



 優也の部屋から!



 優也の部屋から、何かぶつかる音?

 海美ちゃんの止まらない咳は何だ?


 連続する疑問に嫌な予感が背筋を伝う。


 いや、まさか。まさかね。


 海美ちゃんを置いて優也の部屋の扉の前に戻る。後ろから海美ちゃんが覗き込んできた。足音は聞こえているはずなのに迎えはでてこない。コンコンコンッと扉をノックする。返事はない。声すら返ってこない。


「どうしたの?」


「いやちょっと……嫌な感じがしてね。優也〜?」


「え、優也がどうかしたの?優也?」


 返事は返ってこない。


「お風呂でも入っちゃったのかな。ゴホッ出られないの」


「今さっき部屋に入ったばっかりだよ。それに出られないなら言えばいい。優也、声出せるか?」


 返事は返ってこない。


「…………寝ちゃった、とか?」


「そんなわけない。優也!何かものぶつけたりしたか!?」


 返事は返ってこない


「優也開けるぞ!いいな!?」


「何?なんで?ちょっと優也…!?」



 コードを入れるとカチッと音が鳴る。


 待ちきれないように同時に扉を開く。



 ヒュッと喉が音を鳴らした。



 明かりもついていない暗い廊下。シン、と静まったそこは別に異常でもなんでもない。普段と変わらない全く同じ廊下だ。



 ──そこにうつ伏せで倒れ、ピクリとも動かない彼の体を除けば。



「優也!!」


「優也!?」



 どこかでズレた歯車が音を立てることなく、気づかないうちにどんどんズレていって、ある日突然壊れてしまったかのような。


 もう取り返しがつかないなにかが、俺の知らないところで起きてしまったような。


 ただそんな最悪の予感がじくじくと体を蝕んでいた。




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