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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#14 Bravery in my heart
221/229

#14-26 君という存在がいるだけで

 

『私の理想は、強くて頼りになるかっこいい王子様みたいな人だから!私よりもずっとずっとつよーーい人ならお見合いしてあげる!』


 あ、


『誰だろう。見覚えがないな』


 あ、あ


『神様ありがとう。頑張ったご褒美にこんなかっこいい人と出逢っちゃうとか、最高だよ。』


 違う。いや違う。


 別にそういうのじゃ、全然。


 いやだって優也だってわからなかったし?いやわからなかったからとかそういうアレじゃなくて、別に優也をかっこいいだなんて思ってないし、思ったことないし。だって横ハネだよ?あの。ちょっとそれがなくなって印象がちょっと変わっただけで別に理想じゃない。うん。強いのは確かだけど、頼りになるのもそうだけど!


 はた、と優也の顔を凝視する。いつも少し長めの前髪に隠れているくりっとした大きな目も含めて顔全体がみえた。あの超がつくほど顔の良いの龍斗さんが隣にいるせいであまり気にしてなかったけど、前髪とあの気になる横ハネを整えれば案外かっこいいんだ……って、いやいやいやいや、違う!?


 別に、別に、違うって!


 顔に熱が溜まっていく。見られたくなくて顔を隠すけど、横からでも優也にはバレバレだ。


「海美?顔赤いぞ、どうした」


「ないっなん、なんでもない!」


「なんでもないことないだろ、どっか具合悪いのか?」


「なんでもないったらないって!」


「おい、ちょ待て動くな!?」


「いやぁいやぁ!いいね、春だね!!!」


 あははははと息できなくなって死ぬんじゃないかくらい砂浜で笑い転げる龍斗さん。殴ってやりたいけど、それどころじゃない。待って待って待って!顔覗き込まないでよその顔で!


 腕は動く。かけてくれた隊服を押し付けながら咄嗟に立ち上がって優也から離れた。無理無理!まともに顔見れない!!


 けど後ろから優也が心配そうに寄ってくる。なんで来るのよバカ!そう砂浜を優也から逃げるように走り出した。すると優也もはぁ!?と驚きながら追いかけてくる。来んなや横ハネネコ!横ハネコ!!


「おいまて無茶すんな!」


「あっ」


「馬鹿!!」


 慣れない砂浜に足を取られよろける。顔を打たないように腕を前に出すけど、こんな状態の腕、ましてや余計に動かすなって言われてるのに地面につけるわけ───


「危ぅわっ!?」「ひゃあっ!?」


 一瞬お腹に強い圧力。2人分の足が絡まって転んで、どってんばったん砂の匂い。


 思わずぎゅっとつぶった目を恐る恐る開ける。体は痛くない。腕を庇って身を捻りなんとか背中でダメージを受けることができた仰向けの視界で、夜空に変わっていく前の紺青を、鼻先がつきそうなくらい近づいた優也の頭が邪魔していた。


 柔らかなオレンジの光が横から薄い色素の髪を照らし、金色のようにキラッと輝いている。かきあげられていた髪は少し崩れて、濡れた数束の髪が前へ垂れてしまっていた。


 私を心配そうに見つめる深紅の瞳は光がさして彩度を増して見える。波とそよそよふく風だけを残して時間が止まったような感覚。目の前で輝く世にも珍しい赤い瞳。その瞳に息を忘れる。


「怪我してないか?」


 こく、と頭が動く。

 優也が少し顔をあげて、顔全体が見えるぐらいに体を引く。


「その怪我なんだ。ほんと、体調悪いなら無理して動かないでくれ」


「……」


「諦めの悪い最強無敵のシャークガールなのは知ってる。だけど怪我したり体調悪かったりしたら休まなきゃだろ?」


「う……ん」


「ダメな時ぐらいちゃんと頼ってくれ。俺はいつでも側にいるから。な?」


 そうやって笑う優也の優しい笑顔はあの日からずっと変わらない。私、この笑顔が大好きなんだよ。


 優也は本当に本当にいつでも真っ直ぐに見ていてくれている。他の誰でもなくて、ましてやお嬢様とか哀れな妹とかでもなくて、鮫島海美を。


 優也は私より私のことを知ってる。最強無敵なシャークガールだってことはもちろん、私が気付けなかった私の心の中の勇気だって。


 でもね、優也は知ってるかな。


 最強無敵のシャークガールは、君がいるから安心して前だけ見て外の世界に噛み付けるんだってこと。



 君がいてくれるから、世界を知ることが好きになれたんだってこと。



「わかった。ありがとう、優也!」



 君という存在がいるだけで、どこまでも強くなれるってこと!



 ……恥ずかしいから、言ってやらないけどね。



 口の端とほっぺがズキっと痛む。けどめいいっぱいに笑った。優也もつられてクスッと笑う。呆れたような、それでいてとても嬉しそうな。眉が下がって仕方ないなぁなんて言いそうな、そんな笑顔を夕日のオレンジ色の光が暖かく照らしていた。


「そうか。……で、なんで顔赤いんだ?」


「え、」



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