#14-19 何度でも思いだせ
「らしくねぇなぁ、海美!!!」
「……え?」
この声
「何日和ってんだ!!いつもの強引ストレートはどうした!!」
視線を声の方向に動かすとそこにはネイチの巨腕を両腕で受け止めながらこっちに向けて叫ぶフレイムの姿。相変わらず生物とは思えない化け物の姿のはずなのに、なぜか人間の姿に見えて、私へ向けて叫んでいる。
「何ようるさいわね。ネイチさん!ちゃんと相手してんの!?」
「すまない、少し手がかかる子でな」
「あぁもう折角私が計画した最高のショーなんだから邪魔しないでよ!変身!」
お姉ちゃんは姿を変えてネイチに加勢する。強敵2体を相手に優也は舌打ちをして、ネイチの攻撃を横へと受け流し懐に入り込む。腹に向けて拳を振るうと衝撃で揺れるネイチの体をさらに叩き船の縁まで押しやると足元をダンッ!と力強く踏みつけ、
「Penetrate!!」
そう叫んだ瞬間ネイチの体を幾つもの太く長い針が貫く
「ッグ!?」
「そこで嵌ってろ!次は……」
近くにある緊急用のロープを手に持ち、目にも止まらぬ速さでお父さんとそのボディガードたちをまとめて大きな柱にぐるぐると巻いて磔にする。抵抗する間もなく拘束されたお父さんは優也に向けて唾を飛ばす勢いで叫んだ。
「ぐぅぅっ!?何を……貴様、この私にこんなことしてタダで済むと思っているのか!!」
「黙ってそこにいろ!うろちょろされると邪魔くせぇんだよ!」
「邪魔なのは──」
突然優也の後ろからネピアが飛びかかる。ヒグマの大きな爪が傾く西日の光を反射してギラリと光り優也の首を狙う。
「──お前の方だ!」
「っ、」
「愛海のこと何にもわかってない部外者が、勝手な口挟んでんじゃないわよ!」
「……その言葉、そっくりそのまま返してやる」
「熱っ!?」
しかし頸部に開いた大きな目が後ろから隙を狙うように飛んできたネピアの攻撃を捉え簡単に避け、腕を掴んで勢いをつけネイチの方へ投げ捨て、針の山から脱出しようとするネイチに覆い被さるようにネピアも針の山に絡め取られる。
「ああああああああっっ!?」
「ガハッ……!?」
「お前も所詮は俺と同じ部外者だ。記憶を読んだ程度で勝手に同情して意思を継ぐだのなんだの、くっだらねぇんだよ!!!」
「こ……の、化け物がぁ……」
「それとお前もだ、海美!!」
「!」
突然呼ばれた名前にビクッと肩が跳ねる。
「コイツが勝手に決めつけた真実知ってお前は満足か?自分で確かめないまま日和って自分の殻に閉じこもっていいのかよ!!」
「よ、良くない……良くないよ!けど……もし、」
暴れないよう封じ込めていた心の蓋が開く。自分の中の恐れが這い出して私の足を縛る。
「思い出が全部嘘だってわかったら、もう知らなかった頃には戻れない。私にはどうすることもできない。だってお姉ちゃんは死んだから。もう何も答えてくれないんだよ!?」
「違う!!」
「え?」
「俺は姉ちゃんに聞けなんて言ってねぇ!自分の手で確かめろって言ってんだよ!!───っ!」
「ごちゃごちゃうっさいわね。海美は何もできない哀れな化け物として死ぬの!邪魔すんな!!」
「クソッ」
ガキンっ!と金属が擦れる音。突然背後から襲いかかるネピアの爪を優也が咄嗟に取り出した短剣で受け止める。ジュッと焼ける音にネピアはすぐに体を引き、2体の間にズドンっと巨体のネイチが降ってくる。
グオングオンと風を切りながら優也の体を一掴みにしようと伸びる巨腕を上手くかわしつつ私へ向け強く叫ぶ。
「何が苦しいだ。今までだって苦しくても立ち上がって来たんだろ!もっと世界を知りたくて逃げずに戦って来たんだろ!!こんなところで日和って諦めてんじゃねぇよ!!」
「うるさいわね、このっ!」
「Alter!」
優也は地面に手をつき力をこめると途端に周囲の床がボロボロと砂のように崩れ始める。優也を追いかけ床に突っ込むネイチはブレーキをかけるもののその穴に足を取られ大きくよろける。その巨体の裏から不意をつくようにネピアの鋭い蹴りが飛び、顔へ横に大きく傷が入った。
「アースダンゴームちゃんの『分解』を勝手に使ってんじゃないわよ!」
「っ!」
「それと何?アイツに何ができるってのよ。何もできない財閥のお嬢様が!!」
「……フッ、お前──」
ネピアの鋭い爪の追撃をかわし、高く跳んで熱を込めた拳を振りかざす。
「──案外何も知らないんだな!!」
「ゔっっ!?」
その拳は避けられ直撃しなかったものの、甲板を熱が伝ってネピアとネイチの体が燃え、動揺するネピアの喉元に小型のナイフが突き立てられる。隙をついて後ろから襲いかかるネイチの頸部の目が捉え、簡単に近くの壁へと蹴り飛ばした。かなりいいところが当たったのと体が燃えてうまく動けないみたい。
ネピアからナイフを引き抜き、見下ろしながら不敵に笑う。




