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SCR -Specific mutant Cells organism Rangers-   作者: none
#14 Bravery in my heart
209/233

#14-14 無知の知

 

「サメジマの血ってネピアが言ってたやつだよね。それ何?」


「そういや何で海美は知らないんだ?鮫島家には代々語り継がれてると思ったが」


「ううん。一回も聞いたことないよ?」


「……?」


 鮫島厳夫の話し方では鮫島家の人間はその御伽話が周知されている感じだったけど、海美ちゃんにはどうやら伝わっていないようだ。あの爺さん、サメジマの血はすごいんだぞって強調してたのは『教育などの賜物ではなく、自分すら無意識に、相手の心を気づかれない内に開かせる』ってところだったわけで、海美に無理に意識させたくなかったのか?


 でも流石に鮫島家の人間だ。知らないわけないけど。


「単なる噂の御伽話だ。鮫島家の人間には代々受け継がれる力があって、それは相手が知らないうちに心を開きたくなるようにさせる力だそうだ」


「えぇ!?初耳なんだけど!?わ、私にそんなパワーが!?」


「ねぇよそんなもん。俺が何度お前からストレートパンチ喰らって心を閉ざしかけたことか」


「えごめん」


「俺達はサメジマの血があったから海美ちゃんを好きになったんじゃない。海美ちゃんが海美ちゃんだから好きになったんだよ。きっと鮫島家じゃなくたって海美ちゃんだから仲良くできるんだ」


「そうなの……?」


「ていうか2人とも、いつまでプールいるつもり?もうそろそろ18時過ぎるよ」


 ちら、と壁にかかった時計を確認するともうすぐで業務終了の時間だ。元はといえば今日の業務が終わった後余裕があればと海美ちゃんが優也に頼み込んでねじ込んだ訓練だったしね。時間が過ぎるのは早いもんだ。


 俺の指摘に来知は本当だ!と驚き未だ気絶している的戸を乗せた車椅子を爆速で押して大急ぎで帰って行った。去り際に的戸先生今日の実験処理しないとですよ起きて!!と白目をむいている的戸をぐわんぐわんと揺すりながら。的戸はもちろん頭がおかしいんだけど、アイツもアイツで結構終わってんだよな、色々……


「早いね。じゃそろそろ優也あがゴホッゴホッ!?」


「おい、大丈夫か」


「んんっ……へーき。むせちゃったかな。さ、あがろ!」


 2人は搾れる水を搾り払いながら上がってくる。流石はSCRの隊服だ。簡単に水が抜けていく。けど流石にインナー類までは守ってくれないし、第一頭からプールの水被ってるし。風邪引く前にシャワー浴びないとだな、これは。


「俺は柏木先生のところ寄って帰るから、2人はシャワーゆっくり浴びておいで」


「おっけー!じゃ1時間後に優也の部屋集合ね!」


「長ぇな」


「女の子のシャワーは時間かかるの!じゃお先に〜」


 海美ちゃんは女子更衣室へ続く扉を開き中へ入っていく。それをしっかり見届けると優也はプールサイドの縁に腰掛け、上着のチャックに手をかける。あれ?


「どうした。疲れた?」


「いや。ここである程度服乾かしていこうかなって。濡れたやつ持ち歩くのなんか気持ちわるいんですよね」


「あーね。ここで乾かしといて後で回収すれば?」


「放置もちょっと。別にそんな長居しませんよ」


 そう言って優也が上半身の隊服を脱いで絞るとまだ案外濡れていたのか想像以上に水が落ちてくる。続けて隊服の下に着ていたインナーも濡れて肌に張り付いて気持ち悪いのか脱いで上裸になり、脱いだインナーも絞ると隊服以上にぼたぼたと水が落ちていった。


 パッと水を飛ばし軽く伸ばして腰掛けている飛び込み台にかけて干し、優也はプールの縁に腰を降ろし、足先だけをプールにつけてパタパタと手で扇ぎながら涼み始める。あんだけプールの中にいてまだ暑いのか?


 優也の隣に足がプールの外になるように、つまり優也とは背中合わせになる方向に座った。柏木先生のところに行くといっても流石に1時間はかからないし、丁度いいからちょっとした時間潰しに付き合ってもらおう。


「そこ水跳ねてないですか」


「へーき。てか優也、暑いの?」


「……ちょっと」


「はぁ。風邪?」


「別に。心配しないでください」


「ふーん……なぁ、何であの子はサメジマの血の話を知らなかったんだろう?」


「さぁ?知りませんけど、少なくとも鮫島厳夫は言わなそうですよね」


「同感。普通に触れてこなかっただけか?」


「触れてこないってのができるのか、ちょっの疑問ですけどね。ネットとか雑誌とかSNSとか、ちょっと調べればすぐに出そうだし」


「小耳にすら挟まないなら、誰かが意図的に情報をシャットアウトさせていた?聞かせたくない何か理由があったとか」


「鮫島厳夫がですか」


「ううん……別にアイツはな。まぁ候補にはいるけど、もっとこう、《そんなことを知らせたくない》みたいな感じじゃないか?今の今まで知らないでいさせるのを徹底するのって」


「誰だか知りませんけど、それならそれでいいでしょう。あんな気持ち悪い話なんて知らない方がマシです」


「それはそうかもだけど──」



 バンッ!



「ちょっと!さっきから何私の知らないところ、で………」



 女子更衣室の扉が乱暴に開けられる。声の主は始め勢いよく叫んだが、目の前の光景に言葉を失った様子だった。


 優也は音に驚き足先はプールにつけたまま上半身を捻って後ろを、つまりは更衣室の扉の方を見る。


 ──後になってわかったけど、確かに優也は裸で涼んでると見えなくもないな。優也はプールサイドの縁に腰をおろしていて、後ろから海美ちゃんがみたら上裸のところしか見えないし、服も掛けてあるしね。


「うおっ!?急にあけ───」



「どこで脱いでんのよバカ!!!変態!!!」



 ぱこーんっ!

「ってぇ!?」



 バシャーーンッッ!


 ……まぁ不慮な事故だったってことで。



 顔を真っ赤にした海美ちゃんがたまたま近くにあったビート板を投げ、見事優也の額に直撃し、驚くほどあっけなく優也はプールに落ちていった。



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