#14-7 恋愛感情はない
そんな優也の様子を遠目に、クスリと海美が笑う。
「海美さん?」
「あぁ、すみません。その、友人が面白くて」
ふわっと笑う海美に男性は苦笑いをこぼす。今は自分と話しているのに、そんなに彼のことが?
「彼は先ほどお話にあったご友人ですか?」
「はい。高校で出会った友人です。是非今日のパーティーを楽しんで欲しくて招待しました」
「……失礼ですが、彼のことがあって今回のお話はなかった、ということでしょうか」
「いえ、彼は全く関係ありません。お話しましたが、今は新規プロジェクトの計画に加えて学業もありますので忙しく、お話をお受けできなかった次第です。申し訳ございません」
「そうでしたか。てっきり、私は彼が理由でお断りされたのかと」
「いやいやいやいや、ありえないです」
満面の笑みでないない、と横に手を振った海美に男性は困惑する。
自分にはそうにしか見えなかった。部屋から彼が出てくるのに出会したときには縁談の行先が見えてしまって、こんなに若く美しく地位もあって性格もお淑やかな女性とお見合いまで持ってこれたというのに、悔しさで彼をできる限り睨みつけるしかできなかった。
自分は大企業のCEOの1人息子だ。所謂政略結婚のお見合いだったが、以前少し話しただけでも彼女は自分を虜にした。話すテンポがピッタリで大変話しやすく気づいたら自分の話をどんどんしていて、共通の話題になればどこまでも深い共感をしてくれた。今日のお見合いで仕草の一つ、目線の一つ一つがどれも釘付けになり、彼女にいつの間にか夢中になっていた。自分は見た目も悪くないし地位もある。性格だって悪く言われたことはない。負けるわけがなかったのに。
けれど、とても悔しい話、敵わないと悟ってしまった。
「彼は友人ですがそれ以上にその……師匠みたいな人で。そういう感情とかはないです」
「師匠?」
「はい。色々と教えてもらってて……勉強とか。あまりお話が得意じゃなくてたまに変な挙動してたりお小言言われたりしてなんだコイツって思う時もあるし、あと髪の毛が謎に横に跳ねているのとか面白い変人なんですけど、」
そう。自分と話している時にはなかったこの弾けるような笑顔。これで彼に勝てないと悟ったのだ。
「どこまでも優しい人なんです。優しく笑う人で、私の憧れです」
「敵いませんね」
「あ、いや、本当に恋愛感情はないですよ?というかすみません。私の話ばかり」
「そんな謝らないでください。海美さんのことを知れて嬉しいです。今回の話は残念でしたが、友人として仲良くさせてはいただけませんか」
「それはもちろん。定信さん、すごく話しやすいなって思ってたんです」
「あぁ良かった。是非プライベートでもお話させてください」
「えぇ。連絡先を後ほど送りますね」
チラッと男性にバレないように海美は優也がいたところを見た。優也は耳が良いから、もしかしたら今の話、聞かれてたかも。嫌だ恥ずかしい。バレたくない!……あれ?
「どうかしました?」
「あっ、あ、いえ。別に何も」
不思議そうな男性にホッと息をつく。ここでまた相手に対して上の空だったなんてバレたらサメジマの威厳に傷がつく。でもバレていないみたい。そう心の中で胸を撫で下ろした。
けれどもう一つ不安なこと。ほんの数分前は、さっきまではそこいたはずなのに。
優也、どこ行ったの?




