#12.5-1 突然お酒が呑みたくなったから
溜まっている事務仕事、あまり良いとは言えない体調、溜まってしまった家事云々
「よっ、暇?」
「……はぁ」
頭痛の種が、もう一つ
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第12.5話 幕間 最愛の君に贈る
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「優也がSCRで訓練始めたのって何歳だっけ?」
「じゅう……いち?ですかね。いや10歳からやってたか」
夜もそこそこな22時。まだ寝静まるほどの時間ではないとはいえ、急で勝手な来客に多少のイラつきを感じながらキッチンに立つ。しかも酒?ワイン?の瓶持って「酒、強くなりたくないか?」と笑ったあの顔を殴らなかった自分を褒めたいぐらいだ。
こと、こと、と背の低い2つのグラスがテーブルに並び、ついでドンとその間に細長いボトルが鎮座する。中の薄い黄色の液体が細まった口の部分でチャプんと音を立てシュワシュワと泡がたった。あれ炭酸か。つまみ、何が良いか…まぁなんでもいいか。
袋に入れたきゅうりにだんだんと棒を叩きつけて荒く潰し、簡単な調味料で味をつけて皿に盛る。ごまとシラスあったなそういえば。軽く上から振りかけて、うん。こんなんでいいか。
あともう一品。ちょうどいいし余り物全部ぶち込むやつにしよう。
豚薄切り肉を先がはみ出るように耐熱容器に敷いて、そこに余っていたもやし、アスパラ、枝豆を詰め込みラー油と酒を適当にぶっかけて、まぁいいかと少しだけニンニクを入れる。はみ出しておいた豚肉で閉じて、ラップをかけてレンジにいれた。あとは待つだけ
「うわ〜やばい良い匂いする。ニンニクいれた?」
「少しですよ」
「あ〜腹減った。今……22時か。さっき食ったのになぁまじで食欲出る匂いだわ」
「胃は若いんですね」
「胃はってなんだ、おい」
「なんでもありませんよ。はいどーぞ」
机に料理を並べてクッションを引っ張りソファを背もたれにして床に座る。ローテーブルだからご飯食べる時は床になっちゃうんだよな。でも普通の高さの机置くと窮屈になるし。
改めてローテーブルの上のボトルを見る。ラベルにはおしゃれな字体でなにか書いてあるけど、よくわからない。酒であることに間違いはなさそうだけど……
「これなんのお酒ですか?」
「シードル。りんごの酒」
「りんごの!へぇ、珍しいですね、酒呑もうなんて」
「いいだろ?もう子供じゃないもんな」
グラス持ってと促されグラスを手に持つと、龍斗さんがボトルの蓋を開けてトクトクと注ぐ。これってなんかお礼した方がいいのか?ありがとうございますと自信なさげに呟く。するとふふ、と嬉しそうに笑った。そのまま自分のグラスにも注ぐ。
「じゃあ色々お疲れ様ってことで、乾杯〜!」
「乾杯!」
カチャン、と合わせたグラスから軽い音が鳴った。
一口含むとパチパチと炭酸が弾けて爽やかなりんごの風味が鼻を抜け、甘酸っぱさで口内が満たされる。美味しい。喉まで通すと酒特有の熱さを少し感じる。でもそこまで度数は高く無さそうだ。俺自身あんまり酒は強くないけどこれくらいならスイスイ飲めそうだ。
「どう?」
「美味しいです。飲みやすいですね」
「だろ?狛坂に無理言って取り寄せてもらったんだよ。俺のおすすめのやつ」
「そうなんですか。これ、めっちゃ好きです」
「そりゃ何よりだな。でも一気に飲み過ぎんなよ」
龍斗さんは小皿に余り物ミックスを取り分けてガブっと大きな一口で食いつき、うまっ!お前天才かよ!とバシバシ肩を叩いてくる。痛いですと返しながら上がる口角を誤魔化すように叩ききゅうりを口に運んだ。
「それでなんでしたっけ。俺が初めて訓練した日でしたっけ?」
「そうそう。小さかったよなぁあの頃。こんっな小さい」
「ちょっと!そんな小さくありません。130はありましたから!」
「ギリな」
「……ギリですけど」
まだ10歳なんだよ、あの時。それにしても小さいのはわかってるけど。
「そんな優也が今やこんなにおっきくなって。俺は感動だよ」
「背の高いアンタにそういうこと言われたくないんですよ。低い人間からすると皮肉にしか聞こえません」
「あはは、ごめんごめん」
「あと前からこれ言いたかったんですけど、海美と話してるとき嘘つきましたよね俺のこと」




