表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美味しいもん食べて恋もゲット!  作者: 梨香
第ニ章 結花の花嫁修行

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/29

7  お萩でゴールイン!

 南部にプロポーズされた結花は、親に報告する前に、自分が三年間、何をするのかを真剣に考えた。

 南部が医者だから、医療事務の資格を取る? ちょっと違う気がする。

 結婚はしたいけど、全て南部に合わせるのは、結花的には無理だ。


 昨夜も自分が何をしたいのか? あれこれパソコンで探索したけど、わからなかった。

「一つだけ決めた事がある! 経済的に自立したい」

 就職活動は、大変だった。その上、やっと就職できた会社は、赤字でクビ! 

 本屋の仕事は嫌いじゃないけど、バイトでは食べていけない。


 勇気を振り絞って、次に入る書店の正社員にして貰おう! とまで決意した結花だが、やはり無理だった。

「基本的に、パートかバイトしか募集していません」

 そうだよね! がっかりしたけど、こうなったら、今の書店に掛け合おう。


「店長さん、正社員になりたいのです。前に難しいとは聞きましたが、チャレンジさせて下さい」

 水嶋店長は、いつもはおっとりとした結花の真剣な顔に驚く。

「前に話した時は、あっさりと聞いていたけど、何か事情が変わったのかい?」

 実はと、婚約したけど、海外青年協力隊に三年行ってしまうと打ち明けた。

「ふうん、それは大変だね。こちらも、急に閉店するのは気の毒だと思っていたんだ。正社員になれるかは、面接次第だけど、本店に話しては見ておくよ」


 一応は、本店に言ってくれるんや。結花が前向きに考えているのに、水を差すのは山田だ。

「ちょこっと聞いたけど、正社員の面接なんて、難しいよ。それに、何処の書店に回されるか分からないのに良いの?」

 そのくらいわかっとるわい! と怒鳴りたくなったけど、我慢する。職場の人間関係もたいせつだからね。


 面接まで、結花は大学時代の就活本を読み直したり、ネットで好印象を与える受け答えなどを調べて過ごす。


「結花ちゃん、今度、お家に行って挨拶したいんやけど」

 携帯を持つ手が震える。

「それって……」

 よくある『お嬢さんを頂きたい』って奴なの?

「研修が始まる前に、行きたいんやけど」

「えっ、研修? 聞いてないよ」

 結花はパニック状態だ。結婚、海外青年協力隊、研修、面接!

「私、どうしたら良いんやろう。今度、正社員の面接を受けさせて下さいと頼んだんやけど、全然自信ないわ。言わな良かったかも……南部さんは、目標に向かって進んでるのに、私は足踏みどころか、二歩後退や」

 ぐずぐずの結花を南部が宥める。

「自分から正社員の面接を頼むなんて、結花ちゃんしっかりしてるわ。それに、面接をするって事は、見込みがあるんちゃうか?」

 山田に嫌味を言われてから、結花のメンタルはダダ下がりだったけど、少し浮上した。

「ありがとう! やるだけ、頑張ってみるわ」

 携帯を切られた南部は、結婚の申し込みをしに行く話はどうなったのかと頭を抱えた。


 面接は、結花なりに頑張った。結果は、メールで来るそうだ。

「お祈りメールは御免やで!」

 就活中、何通ものお祈りメールを受け取ったのを思い出す。

「結花、あんた暇なら、お萩作るの手伝うて!」

 いつの間にか、秋のお彼岸のシーズンになっていた。

「お萩と牡丹餅、ちがいは無いんとちゃう」

 母親が、鬼の首を取ったように「春やから牡丹、秋やから萩なんやで!」と言う。

「そないな事は知ってるよ。どちらも一緒やなぁと言ってるんや」

 今日の結花は、センシティブな気分。お祈りメールと彼岸がクロスしたのだ。


「これ、南部さんに持って行ったら?」

 付き合っているのを察して、母親は時々こうしたカマを掛ける。

「あんな、今度、挨拶に来たいと言ってたわ」

 母親の手からお萩が落ちた。まぁ、皿の上やから、大丈夫やったけど。

 しもた! なんで言ったんやろう。

 その後、母親から根掘り葉掘り質問されて結花は、ぐったりだ。


 お萩で手が汚れていたから見なかったメールを開く。

「えええ、これって合格なんやよね!」

 水嶋店長も難しいって言っていたから、半分諦めていた。


 その日、南部は挨拶にやってきて、不機嫌な父親と上機嫌な母親から結婚の許可を得た。

「三年待たせることになるけど、勘弁してや」

「ええねん、今日は正社員になれて、浮き浮きやから、何でも許せる気分やねん。それに、婚約したんやもん!」

 南部は、婚約より前に正社員かぁと呆れたけど、何とか三年間は待ってくれそうなのでホッとした。


 三年後、結婚式の準備で大喧嘩になり「別れる!」と騒いだ挙句「やっぱ好きや!」と婚姻届だけ出して結婚することになる。

 これに両親が激怒して、後から結婚式を挙げるのだった。


 割れ鍋に綴じ蓋の二人だけど、いつまでもお幸せに!



       おしまい

このお話を読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ