第二十章 三人
マルティンは最初、それぞれ別の道を行くほうが楽だと言った。
「それは最悪な考えだ」とフィンが即座に反論し、レオンは静かに付け加えた。
「行き先も決まってないのに、別れる話をしても意味がない」
その日一日、三人は一緒に簡単な仕事をこなしながら、誰が一番働いたかで言い争い続けた。
フィンは久しぶりに、周りが振り返るほど大きな声で笑っていた。
マルティンは文句を言い、レオンは黙って笑い、フィンはふと気づく――自分たち三人は、驚くほど自然に、隣を歩いていた。
夜、三人は一部屋を借りて、宿代を分け合うことにした。
その晩、フィンは村が滅んでから初めて、明日のことを考える必要を感じずに眠りについた。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
フィンがまだ「フィン」だった頃の話は、ここで終わります。
母親に叱られて。
祖母に笑われて。
くだらないことで友達と騒いで。
小さな魚を釣っただけで、大物を釣ったような顔をして。
そんな毎日を、フィンはきっと、ずっと続けられると思っていました。
でも――続きませんでした。
村はなくなり、家族もなくなり、帰る場所もなくなった。
そして、ひとりになったフィンが最後に手にしていたのは、母から渡された小さな木の欠片だけでした。
……けれど。
この物語で、本当に大切なのは「失ったもの」だけではありません。
ひとりになった少年が、旅の途中で出会った二人の少年。
無口で、不器用で、それでも困ったときには黙って手を差し出すレオン。
文句ばかり言って、生意気で、何かにつけてフィンと張り合うマルティン。
最初は、ただの旅の仲間でした。
同じ道を歩いて。
同じ飯を食べて。
くだらないことで言い争って。
誰が一番働いたかで喧嘩して。
そんなことを繰り返しているうちに――
いつの間にか、三人にとって互いが「いなくては困る存在」になっていきます。
けれど、家族というものは。
一緒にいるだけで、ずっと続くものなのでしょうか。
守ると決めたものを、本当に最後まで守れるのでしょうか。
そして――
フィンが母から託された、あの小さな木の欠片には、一体どんな意味があるのか。
この先、三人が歩く道の先には何が待っているのか。
それを、ここで語るつもりはありません。
なぜなら――
ここから先は、「村を失った少年」の物語ではないからです。
大切なものを失った少年が。
失ったからこそ、もう一度誰かを大切にしようとする。
笑うことを忘れかけた少年が。
もう一度、誰かとくだらないことで笑えるようになる。
そして――
一度「帰る場所」を失った少年が、
今度は自分自身の手で、その場所を作っていく。
これは、そんな物語です。
もしあなたが、
「この三人が、この先どうなるのか」
少しでも気になったのなら。
どうか、もう少しだけ彼らの旅についてきてください。
きっと最初は、ただの三人です。
でも読み終わった頃には――
この三人が笑っているだけで、少しだけ嬉しくなるかもしれません。
そして、彼らが何かを失ったときには。
きっと、フィンと同じように、
「どうか、もう一度帰ってきてくれ」
そう願ってしまうはずです。
それでは。
本編で、また会いましょう。
――フィン、レオン、マルティン。
三人の旅は、ここから始まります。




