表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面倒くさいから全部チェンジで  作者: 衣之谷こうみ
アリシア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/18

17 おかえり/ただいま


「何しに来たの?」


わたしはコンスタンスに敢えて冷ややかな目を向ける。


「ボクも連れて行ってくれ」

「お断りよ」


コンスタンスをそのまま捨て置いてタラップに足を掛ける。



「何故?」


何故?

『何故?』って言ったのか?


「どうして村の人達を巻き込もうとしたの?」


わたし一人に打ち明けてくれればよかった。


「彼等はキミのガーディアンだ。キミのために命を掛けるのは当然だろう?」


そこのところがわたしの認識と決定的に違う。


「あの人達はわたしにとっては家族や親戚と同じなのよ。そんな人達をわたしが戦禍に巻き込むと本当に思っていたの? だとすれば、あなたは本当の愚か者よ」

「キミはそんなことを気にするような人じゃないだろう、我儘姫?」


わたしは初めてコンスタンスを見た。

たぶん、その表情は怒りに満ちていたのかもしれない。

その証拠にコンスタンスが(ひる)んでいる。



確かにそうなのだろう。

幼いアリシアはとんでもない我儘な皇女だった。

記憶を封じられた後のアリシアにもその片鱗はあった。

但し、誰とも慣れ合わない孤高の存在として。


そんなアリシアが事故に遭い、わたしと入れ替わった。

それ以降のわたしは村の人達と交流を深め、村の一員であろうとした。

鈴白舞花(すずしろまいか)のように本音を隠して人を遠ざけるでなく、リーゼロッテのように王国民の理想であり続けるでなく。

唯の村娘、アリシア・イアハートとして。

自分を偽らずに居られる村の暮らしに満足していた。



それなのにこの女はわたしの理想の生活を見事打ち砕いて見せた。

それが当然であるかのように。



だから、これは怒りだ。


だが、この怒りをわたしはコンスタンスには向けない。

諸悪の根源である叔父にぶつけるのだ。


叔父が帝位の簒奪(さんだつ)さえしなければ、ミュルシュタット帝国皇帝の第一皇女アリシア・ミュルシュタットは錬金術師にならなかった。

アリシアが錬金術師にならなければ、わたしはもっと別の人間と入れ替わるか、別の人間に生まれ変わるかしていただろう。

そうして、錬金術師としての生を全う出来ていたはずなのだ。


「あなたの知るアリシア・ミュルシュタットはここには居ないわよ」


そう。

あんたのアリシアはもう居ない。


「わたしはあの娘とは異なる存在なの」


目を見開くコンスタンスの様子が滑稽に見えるわ。


「だから、あなたもアリシアを追うのはやめなさい」


そこでふっと気付く。

まだ、やることが残っていたわ。


コンスタンスを解放してあげなくてはね。


わたしはコンスタンスを真正面から見据えた。



「ミュルシュタット帝国の正当な後継者たるアリシア・ミュルシュタットは…………」


急に厳かな態度を見せるわたしに何事かと身構えるコンスタンス。


「今ここに、クロスハウゼン大公コンスタンスとの婚約の破棄を宣言する」


今度こそ、コンスタンスが驚愕した表情を見せた。



さあ、これで思い残すことは無くなったわ。

(きびす)を返してタラップを上がる。




「お待ちなさい!!」


突然の命令口調に歩みを止めるわたし。



「ああ、もう! 勝手な事ばかり。あんた、全然変わってないわね!?」


コンスタンスの口調が変わったのがはっきりわかる。



「その口調…………」

「忘れちゃった、ロッテ?」


慌てて振り返ったわたし。

悪戯(いたずら)がバレたみたいな表情を向けられる。


間違いない。

これは、この愛称呼びは――――



「…………サーシャなの?」



応えるようにわたしに向けられた穏やかな笑顔。



間違いない!

サーシャだ!


姿こそ違う。

だが、忘れるはずがない。

前世の親友、サーシャ・ミハイロフがそこに居た。



「サーシャ!」

(ようや)く気付いてくれたのね、親友!?」


(かつ)ての親友に飛びついたわたし。

そんなわたしを優しく抱き留めてくれた彼女。


「『おかえり』でよかったかな?」

(おおむ)ねそれでいいんじゃないかな?」

「じゃあ、おかえり、サーシャ」

「ただいま、ロッテ」


互いに抱き合い、再会を喜び合うわたし達だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ