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面倒くさいから全部チェンジで  作者: 衣之谷こうみ
アリシア編

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11 行き倒れを拾った


わたしは、河原に倒れている青年に近づいて生死を確認する。

(うつぶ)せになっている青年をそっと仰向(あおむ)けにする。

首筋に指を当ててみると弱いながらも脈拍はある。

口元に耳を寄せると浅いながらも呼吸もある。

見たところ大きな怪我はないようだが、身体のあちこちに擦り傷や切り傷多数。

すぐに命に(かか)わる状態では無い。

だが、放っておけば衰弱死してしまうだろう。

秋と謂えどもここら辺の夜の気温は一桁台だからね。

それに強力な魔物も出没するから、食べられちゃうかもしれない。


人を呼びに行くには森の奥深く過ぎるし…………


仕方が無いわね。

わたしが村まで運ぶしかないか。


マジックバッグから手漕ぎボートを取り出す。

わたしのマジックバッグは容量多めに改造してあるからボートだって入るんだよ。

それもこれも鉱物採取の帰りが楽になるようにするためだ。

大量の収集物を抱えて歩いて戻るなんて御免被(ごめんこうむ)りたいからね。


ボートに乗せるべく、青年の両脇の下に手を入れて上半身を持ち上げる。


あれ? 軽いわね。


肩透かしを喰らったみたいに青年は軽かった。

背丈は170cmくらいで瘦せ型。

顔は…………すっごい美形。


おおっと、見蕩(みと)れてる場合じゃなかったわ。


軽いと謂えども背負うのは無理。

わたしは非力なんだよ。

だから、水辺のボートまで引き()って行くのくらいは許して欲しい。



ボートに青年を乗せると、ボートを川に押し出し、わたしも飛び乗る。

後はオールで()いで川を下れば、30分くらいで村に着く。

いやあ。滝とか砂防堤とかある場所じゃなくてよかった。

もっと源流に近いところだったら、こうはいかなかったよ。



それにしても、どうしてあんなところに倒れてたんだろう。

(あた)りは民家も街道もないほぼ原生林の中だ。

下流から迷い込むなんてことは考えられない。


自殺志願者?


いやいや。

ここまで来ようとしたら、村の中を通らなければならない。

それにこんな美形が村に来たら誰も気づかないなんてことはありえない。

ちょっとした騒ぎになることだろう。



まさか、帝国側からテンシャン山脈を越えてきた?


標高9000mの要害だよ?

災害級の魔物が多数生息してるんだよ?

それこそ、ありえないよね。



そんなことをグルグル考えているうちに村に辿り着いたのだった。





日暮れ前に村に着くと同時に、わたしはボートを岸に乗り上げると飛び降りて走った。

冒険者ギルドに向かって。


冒険者ギルドは村の繁華街(その表現も微妙だが)にある。


「すいません!」


ドアを乱暴に開け放って飛び込んできたわたしは注目を浴びた。

といっても、ゼストさんと他冒険者2名。それからギルドマスターのシンシアさんだけなんだが。


「どうしたの? アリシアちゃん?」


シンシアさんがちょっとだけ驚いたようにわたしを見た。


「森の奥で行き倒れを拾ったの!」


次の瞬間、冒険者ギルド内の空気が穏やかなものから緊張感漂うものに変わる。


「その人は?」

「今、わたしのボートに寝かせてある。衰弱してはいるけど命に別状は無いわ」

「わかったわ。ゼスト、すぐに向かってくれる?」

「おうよ。嬢ちゃんのボートはいつもの場所か?」

「ええ」

「わかった。ちょっと行ってくる。ハンス! ロイ! お前らも来い!」

「へい!」

「わかった!」


3人の冒険者がボートを乗り上げた場所に向かった。



「アリシアちゃん。人命救助、お手柄よ」


受付カウンターから出てきたシンシアさんがわたしの頭を撫でる。


「えっと、子供を()めるような真似は辞退したいんですけど」

「だって子供でしょう?」

「17歳のお・と・な!」

「そんなところが子供なのよ」


シンシアさんはいつもわたしを子ども扱いする。

なぜなら、この人はミラ姉の幼馴染だからだ。


シンシア・ハワード。30歳。

オレンジの長い髪、ボディコン、ワンレン(表現が古いなあ)の美女。

これでも、数年前までは王都でAA級冒険者で鳴らした女傑だ。

それが何故か早いうちに引退して冒険者ギルドに就職し故郷に戻って来た。


『顔や体に傷が残る前に引退したかったのよ』


っていうのが引退の理由らしい。

王都に残らなかったのは、言い寄る男どもが鬱陶(うっとお)しかったからだそうだ。

へいへい。モテる女は凄いね。

ミラ姉が訊いたら火を噴いて怒るぞ。


「でも、どうして、森の奥に倒れてたのかしら?」

「それは発見したわたしも思った。『何で?』って」

「迷い込んだって訳でもないのよね?」

「それも――――以下同文」

「自殺志願者じゃないとすると――――」


シンシアさんがわたしの顔をじっと見る。


「厄介なことになるかもしれないわね」


ちょっとぉ。

(おど)さないで欲しいんですけど。



このまま、ここに居るのは危ない。

厄介事に巻き込まれる予感。


そう思ったわたしは話を変える。


「そういえば、昼間のハイオークの件だけど――――」

「討伐報酬の件ね」


シンシアさんが再び受付カウンターに戻り、カウンター下から革袋を取り出す。


ドサッ!

ザクッ!


革袋は銀貨で一杯のようだった。


「ハイオーク58万リーンね」

「毎度あり~」


わたしはホクホク顔で銀貨の詰まった革袋をマジックバックに放り込み、代わりに別の革袋を取り出した。


「これ、ゼストさんの分の魔石ね。本人に渡しといてくれる?」

「仕方ないわねぇ」


シンシアさんは文句を言いながらも預かってくれた。



これでもう用は無い。

ゼストさん達が戻ってくる前にさっさとずらかろう。


「じゃあ、後はよろしく。ボートは岸にそのままでいいわ。明日回収するから」


それだけ言い残したわたしは足早に冒険者ギルドを後にすると家路を急いだのだった。






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