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14.描く



――ピーッピーッ



「おっ」「!」



2時間程の勉強会を終え、気がつけばもう18時半。さっき勉強の合間に炊いた炊飯器が食べ時をお知らせしている。


「もうこんな時間か」


「結構捗りましたね、休憩も殆どなくて......大丈夫でしたか? 疲れてません?」


「ああ、大丈夫。 むしろ色々教えてくれて助かった、気持ちが楽になったよ......ありがとう」


「それなら良かったです」


窓へ視線を向ける白雪。心なしか微笑んでいるようにみえる。

小学校の頃はまるで男子のような容姿で、うるさいくらいの笑い声を上げていた少年みたいな彼女も、たった数年でこれほどお淑やかな笑みを浮かべるような可憐な少女になった。


そんな彼女の変わる様を見ていると、酷く距離を感じ自分に辟易する。


「......良かったら、飯でも食べてくか?」


「いえ、それは流石に......」


って言うだろうなとは思っていた。しかしほぼほぼ俺の勉強になっていたこの時間、ご飯くらい食べていってもらわなければ悪い気がしてならない。


(彼女が食べていきやすいように落とし所をみつけるか)


「ほら白雪も一人暮らしだろ? 今から食事の用意は大変だろうし......それに、俺一人じゃちょっと余しちゃいそうだからさ、食べていってくれないかな」


白雪は「ふむ」と言って口に人差し指をあて、考え込んでいる。......これは、難しいかな?

あくまで勉強会。幼なじみの醜態がみたくないがためのモノだとすれば、やっぱり......俺と仲良くする気は無いのかな。


「無理にとは言わないけど......ちなみにオムライスなん」「いただきます、ありがとうございます」


(......)


食い気味に来たな。ご飯なだけに。


ちなみに、俺の料理歴は小学校高学年頃からで、その頃からもう既に母の仕事は多忙を極めていた。


家事をするのもキツそうな姿をみていた俺は、子供ながらも自分で出来ることは自分でしなければと意識しはじめ、そして最初に手を付けたのが料理だったのだ。


そんな俺が悪戦苦闘しながらも最初に一人で作ることができたのがオムライスで、初めてのオムライスはなんとも酷い見た目をしていた。


(......でも)


幸い白雪はオムライスが大好きなようで、そのグダグダの不格好なオムライスを「なまらおいしい」と言いながら嬉しそうに食べていた。


俺は......にこにこと食べる彼女の横顔が、ただただ嬉しかった。




「あ、私何か手伝います」


「いいよ、疲れただろ。 少し休んでてくれ」


「そう、ですか。 ......わかりました」


「?」



◆◇◆◇◆◇



「――と、これで完成」


2つの皿に乗るケチャップライスとその香り。そこへ焼きあがったオムレツを乗せ、包丁で中央から切り込みをいれわる。すると、トロリと黄金の波が広がった。



「わあ......!」


「よし、良い感じだ。 じゃあ、仕上げだな」



「あのあの! あれ、あれをお願いします!」


「ん......? あ、ああ、あれか。 わかった」



ケチャップのフタをパコッとあける。


(慎重に、慎重に......)


そしてトロトロの卵に俺はケチャップで絵を描き始めた。それを白雪は普段のクールな表情からは想像もつかないニコニコ顔で見つめている。


絵はそんなに得意って訳じゃないが、白雪は俺の描く絵が好きみたいで「味があっていいですね!」と昔から喜ぶ。


まあ味はあるのは当然なんだが、ケチャップなだけに。HAHAHA......!


(く、手が震えるぜ......もう、少し)


「......っし、出来た!」


完成された猫ちゃんのケチャップ絵。


「おおー! 素晴らしいです、可愛いいい!!」



目をキラキラさせ、俺の描いた目が点の表情をした独特な猫を興奮気味に携帯で撮影している。......こんな姿、学校の連中が見たら目を丸くするだろうな。


でもまあ、なにはともあれ嬉しそうで何より。このテンション瀑上がりの白雪を見れただけでも作ったかいがあったというものだ。



「えっと......冷めるからもう食べたら?」


熱心に撮影している彼女に声をかけると、しかめっ面のジト目でこちらをにらんだ。お、怒った!?


「愛おしくて食べれません」


「いや食べて!?」


「か、かわいぃ......なぜ春一くんの描くにゃんこはこれ程までに可愛いのでしょう!」



こんなに喜ぶんなら、まあ仕方ない。いや仕方ないってのは違う気がするが。

美味しく食べてほしいからな。



「白雪、わかった。 また作るからそれは熱いうちに食べてくれ......にゃんこも悲しむぞ」


「なっ......」



驚愕の表情が美しい顔に張り付いていた。そんな表情をしても美人が崩れないのは俺も驚愕だ。



「わ、わかりました。 取り乱してすみませんでした」


「いや、大丈夫だけど......」


「では、いただきます」


「おう、めしあがれ」


白雪は両手を合わせ、目をつぶる。



そして震えるスプーンでひとすくい。



「とっても美味しいですッ!」



その一言と笑顔に俺の心もみたされ、改めて作って良かったと思えた。


......いや初手で猫の顔面をくりぬいたのはちょっと気になったが。まあ、美味しいのであればなによりだ。


そんなこんなで食事をすすめながら、俺はこのあとの事について話しを切り出す。


「今日はこの遅いから終わりだな。 送ってくよ」


「......あの」


「遠慮するなよ、もう暗いから送る。 一人心配だし」


「......そうではなくて......あの、えっと......」


(なんだ? 眉間にまたシワ寄せて......やっぱり不機嫌なのか?)


そんな事を頭の中で思い更けていると、彼女の口からは意外な言葉が飛び出してきた。





「......私にゲームをしている所、見せてほしいんです」





「え、ゲーム?」


「は、はい」



(......ゲームって、ゲーム?)



あれ......あれ?俺、それが原因で距離置かれたんじゃ、ないの?

もしかして本当に......白雪、なにかゲームしてるのか?






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