私、狐なんです。
途中、古文が出てきますが、ぶっちゃけテキトーです。間違っててもスルーしてください。
ねぇ、みんな。異世界転生って知ってる?
……あ、すいません。愚問ですよね。ってか、頭おかしいんじゃねぇの、コイツ、とか思いますよね。すいません。言ってみたかったんだよね。あはは。だから、石投げないでー!
……と、まぁ、御託はさておき。いやー、私、新川久実はですねー、なんと、異世界転生しちゃったのです。わー、わー、ぱちぱちぱち。
前世ではしがない女子高生でありましたが、こんなことってあるんだね。ちなみに死因は全く覚えてないです。死んだのかも覚えてないけどね。
そうそう、私が転生したのは狐。それもただの狐じゃない。妖力という不思議な力を持つ妖狐だ。
かっけー!私、超かっけー!
と言っても、私、生まれたてなんだけどさ。
そんな私は現在洞穴の中で寝そべってます。生まれたてなんで、はい。
「くぅ〜ん」
『おやまぁ、どうしたの』
私のそばに寝そべっているのは一本の尾を持つかか様。外から差す光がかか様の毛を銀色に輝かせている。すごく綺麗な狐だ。
妖狐というのは妖力を持つ狐のことで、強ければ強いほど美しい。妖狐には二種類のタイプがある。善良なる妖狐、善狐と悪辣なる妖狐、悪狐。かか様はもちろん善狐だ。
「くぅ」
赤ん坊の性なのか、かか様に擦り寄る。うふふ。かか様好きー。
『私達のややこは甘えん坊さんねぇ』
呆れたようにいいながらも毛並みの良い柔らかな尻尾と身体で私を守るように包んでくれるかか様。あったかーい。もっと、と甘えるように擦りよればかか様が舌で私の頭を舐めた。今はもう狐だからか、嫌悪感とか全然無いわ。
言い忘れてたけど、かか様は喋っているわけじゃないよ。念のようなもので話しているだけ。実際、口動いてないしね。
と、そこへ突如、ビュオッと外から風が強く吹く音が聞こえた。
『あなた』
私と戯れていたかか様が顔を上げると、そこにいたのは九本の尾を持つ金色の狐。紛れもない、私のとと様。
とと様を視界にとらえたかか様は立ち上がろうとしたが、とと様に止められた。
『生強ひに身動かざれ。汝、未だ快しからず』
……うん。古文だ。相変わらず何言ってるか全然分からんよ、とと様。たぶん、無理に動くな。お前はまだ体調が良くなっていない。って言ってんだと思う。
とと様は口に何やら動物の死骸を咥えていた。……餌だね、アレ。
『や、我が愛しき稚児や息災なる』
あ、うん、分かったよ。勘だけど、元気かって聞きたいんだよね。
「きゅう」
返事をするように鳴けば、とと様は近づいてきて、餌をかか様の顔の前に置くと、私の頬をペロリと舐めた。とと様も好きー。
……やっべぇ、後ろの尻尾が超気になるわ。触りたい。そんでめっちゃ戯れたいっす。えっ、あ、すいません、冗談です。だから生まれたてホヤホヤの私をコロコロ転がさないでー!
尻尾と戯れたいとか思った罰なのだろうか。とと様に弄ばれた。
とと様は九尾の妖狐だ。尾が九本もあるわけだから、当然ただの妖狐じゃない。とと様もかか様同様に善狐で、千年は生きている。千年生きた善狐は天狐と呼ばれるそうだ。つまり、とと様は天狐なのである。とと様超かっけぇ。
ちなみにだが、天狐の更に二千年、つまりは三千年生きた善狐は空狐と呼ばれるらしい。天狐はとと様以外にあと二匹、空狐は一匹しかいないそうだ。すげぇな、空狐。
『あなた、ややこが』
かか様がとと様に声をかける。私、ぐったり。
『見許せ』
とと様に首根っこ咥えられぷらーん。死体みたいになっちゃった。
『おいで、ややこ』
かか様のところへ連れていかれ、そばに置かれる。すぐそばにとと様が横になる。
かか様が餌に噛り付く。私はまだ、生まれたての赤ちゃんだから必要ない。先ほど、かか様の母乳を頂いたところです。げふー。
とと様にコロコロされたせいで体力がなくなったせいか、眠気が……。いかん、まぶたが下がる…。
私が眠ってしまいそうなことに両親は気づいたようだ。私を包むように擦り寄ってきた。
『おやすみなさい、私達の可愛いややこ』
『よく眠れ。我等が愛しき稚児よ』
あったかいなぁ。幸せだ。
狐になったことにあまり抵抗を感じていないようだ。
ちなみに、獣と言われてまず最初に思いついたのはまさかのアリクイでした。←え
誰得だよ。