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第十五話:桜と乙女な人々

 桜が道路に散る。

 北海道は五月がちょうど満開なのだ。

 桜は散るために咲く、なんて言うけれど。

「おはよ」

 遙の声で、僕は桜から目を離す。

「ういっす」

「桜満開だねー」

「んー」

 遙は微かに目を細めて、


「桜って、恋に似てるかも」


 遙は、はっとした様に顔を赤らめると、

「うわっ何言ってんだろ、私。はずかしー!」

 でも、確かにそれは当たっているかもしれない。

「例えば?」

「えっ何?さっきの?」

「ん」

 ええーと唸りながら、

「例えば…恋の始めが蕾なら、恋している時が、満開で」

 確かに、言いえて妙だ。

「それで…」

 遙は言いにくそうに、声を萎める。

「散る時が…失恋?」

 うわあ…言いえて妙。

 そういえば、秋庭さんの告白の返事どうなったんだろう。

 でも、訊いたらしつこい奴って思われるか?

まだ桜は散ってほしくないんだけれど。

「でも、散るために咲くって言うじゃん」

 悔しいので、少し反論してみた。

「まあ、失恋するために恋はしないわよね」

「んじゃ、そこだけハズレか」

「んー、そこは多分逆なんじゃない?」

 逆?


「失恋するために恋をするわけじゃない様に、桜も散るために咲くものじゃないんじゃないか、ってこと」


「成程」

「どっちかって言うと、咲くために散るのかもね」

「咲くために?」

「だってさ、散った姿を見たからこそ、咲いている時が美しいと思うじゃない」


「…だから、泣いている時を知っているこそ、笑っているのが嬉しいのかな」


「……」

 そして、それは確かに言いえて妙なのだ。

「…でも」

「何よ?」


「遙って恋してんの?」


 沈黙。

 あれ?遙が鬼に見える。

「バカーッ!」

 辞書の入った重い鞄が、遠心力込みで、脇腹に決まった。

「〜っ!暴力女〜」

「うるさい!」

 今度は頭に。

 まあ、考えてみれば、遙とは一番古い付き合いなんだよな。

 僕はぽつりと呟く。

「桜を一番一緒に見たのは遙か…」

「え」

 遙はみるみる笑顔になった。


「そりゃ、幼馴染みだしね」


「ねえ、今度桜の絵描いてよ」

「あー、良いかも」

 桜の絵か。悪くないな。

「散ってるのと咲いてるの、どっちがいい?」

「それはもちろん」


「満開で」


 遙は笑った。桜の様に。



 花は咲くとき、『笑う』とも言うらしい。

 『桜は散るために咲く』

 それはきっと間違いで、咲くために散るのだと遙は言う。

 人と桜は、本当にそっくりで、

 舞い散る桜の綺麗な様に、泣いている人間もまた、綺麗なのかもしれない。

 だが、涙を振り払う様に、散った桜は咲くのだ。

 満開に、桜は笑う。

 そしてそれは、人もまた――…

「……」

「何?」

「いや、遙って以外と乙女チックなことを…」

「以外は余計よ!真剣に聞いてた蓮だって乙女じゃない!」

「げげっ」


 薄桃色の桜の花びらが一片、僕らの上に降り注ぐ。

こんにちは。天海沙月です。ここまで読んでくださってどうもありがとうございます。

まだ学生なもので、テストと英検が迫ってきました。六月中旬まで更新が滞るかもしれません。御迷惑をおかけします。m(_ _)m

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