後編
賢者様、勇者だった。
…えっと、色々とあって昨日は詳しく書けなかったけど…賢者様が明かしたいことがあるってカルロさんと俺と、フェンネルとリシャ(カルロさんの恋人でフェンネルの友人)を呼び出して変身した。
美少女だった…黒髪に黒眼だったし、顔立ちも日本人っぽかったので驚いた。
韓国人だって。
この姿だと言葉が俺以外に通じないからって、元の老人の姿に再び変身。
この世界で過去に存在したこの世界の人間で、彼女が望む項目に該当した人に変身出来、その間経験と能力を発揮出来るらしい。それが彼女の勇者能力だって。チョンチェさん…何か俺より前に呼び出されて、能力は俺と同じように分からなかったんだけど、その美貌に城から解放されることなく呼び出した国の王様に襲われそうになって初変身、逃げて放浪の旅をしてたんだって。
なんで今まで黙ってたんだろう?
あ、彼女が勇者だって明かした根本の事件のことを忘れてた。
他国が攻めて来た。カルロさん召喚した国で、あの煩い女を聖女として旗頭にして。
なんか、カルロさんがこの国について、カルロさんを召喚した魔術師がぽっくり死んだことで何か焦ったらしいよ?よく分からん。
チョンチェさんが言うには、チョンチェさんを呼び出した魔術師も、新たに戦力になる勇者を呼び出そうとして途中で死んでしまったんだって。
一回限りか、勇者が生きてるうちは他の勇者は呼べないのかもだって。
知将的な人に変身、軍の動きを助言したり出来るように勇者だってことを明かしてくれたらしい。
魔力はほとんど持ってないから、魔術師に変身しても魔術使えないらしい。力を振るう姿に変身出来ても、信用されなきゃだからって。
この国を守りたいって…感動した。
俺には何の力もない…俺だって、この国を守りたいのに…
俺は留守番。
皆が無事で帰ってくることを祈ることしか出来ない…
えっと………帰ってきた。皆無傷…つーか早くね?二泊三日の旅行かよっ!
カルロもチョンチェさんも、何か気の抜けた感じ。
うん。人死に見るの平気だったら、次は俺も一緒に行っていいって……
えっと、知将バージョンのチョンチェさんが、軍の動きを推理…やってきた所を待ち構え、この軍進に実は乗り気じゃない一般市民をカルロさんの魔法弾で強制転移返還(そうゆうの自動で判別出来て、効果を表す広範囲魔法だって)混乱した所を皆で潰す予定だったらしいけど。
巨大化フェンネルがビーム吐いて、敵さん終了のお知らせ。荒野になった跡地をリシャが再生…
フェンネル強すぎで、他のわんこ達戦えなくて、不満ブーブー
で、めんどいから王都も落としちゃわね?ってことに…カルロの魔法弾で皆で城へと転移…まったく知らないとこには行けないらしいけど、カルロの召喚された国に城だったから問題なかったらしい。
そしてわんこ達無双
えっと……国が大きくなりました。
何人か…何匹か?その国に行って、混乱を落ち着かせることになりました。
カルロさんとリシャも。
カルロさんの転移魔法があれば、行き来は簡単だからって言われたが、ちょっと淋しい。
チョンチェさんが、勇者だって黙ってた理由を聞いた。
チョンチェさんは、ホモカップルを見るのが好きらしい…耳を疑った。
そもそも谷にやってきたのも、俺とフェンネルのことを聞いて、素敵カップルを確認・観察するために来たんだってさ……
賢者様、尊敬してたのにっ
チョンチェさんのこの国を守りたいって言葉に、感動したのにっ
色々と理由が台無しだよっ!
フェンネルと俺の間に水を差したくなかったんだって……これからも応援してるって、フェンネルと固く握手。ちなみに襲われそうになった時、変身したのは筋骨隆々なホンモノさん………なにをして逃げたのか詳しいことは聞かなかった。
カルロさんが遊びにきた。チョンチェさんに聞きたいことがあるんだって。
勇者召喚魔法陣を作り出した人間に変身できるか?って。
彼女は首を振った。変身出来ないわけじゃないらしい。この能力を把握した最初の方に変身してみたらしい。
でもその思考が狂っていて、自分の人格が飲みこまれそうになって、怖くて二度と変身したくないらしい。それから元の世界に帰れる魔法陣を作り出せる人ってのには、該当する人がいなかったみたい。
まぁ、今更フェンネルを置いて帰る気もないけど…
その狂ってる人は、どうして勇者を呼ぶ魔法陣なんて作りだしたんだろう?
どうして狂ったんだろう?
カルロさんは色んな、好きな効果を持った魔法を撃ち出せるけど…世界を越えるのは許容範囲を超えてるらしい。ヤバイって感じるんだって…
なんか…怖いな
えっと、三人で何かよく分からない恐怖に襲われてたら、フェンネル達が心配してくれて、何だかほっとした。うん、俺達にはわんこ達がついてるもんな。
子犬達の子守りをしながら、ちょっと前の世界のことを思い出す。
こっちにくる前の自分のこと…あんまり褒められた人間じゃなかった。勉強も運動も出来たけど、両親のいいなりで…妹が行方不明になるまで、両親の歪さに気付かなかった。
両親は真理に全然構わなかった。話しかける時は叱る時だけ、笑顔を向けるのは俺にだけ。
真理は苛められてた…帰ってこなくても両親は外聞だけ気にして…俺だけでも妹の味方になってやるべきだったのに、そうゆうこと、思いつきもしない人間だった。
フェンネルには知られたくない。最低な自分。
この世界に来てから、本当の愛情ってのを知ったかも。両親は真理を見てなかったけど、俺のことも本当の意味では見てなかったように思う。あの人達の望む結果を出せなきゃ、簡単に捨てられるような感情しか貰ってなかったような気がする。真理が行方不明になってから、気づいたことだけど、フェンネルとかわんこ達と接していて確信した。
元の世界の心残りは、真理の安否だけ…見つかったかな?でもあの両親のとこで幸せになれるのか?
自己嫌悪に陥ってたら、フェンネルに慰められた。つい、知られたくないって思ってたことも打ち明けてた。でもフェンネルは俺を軽蔑しないでくれた。後悔してるんでしょ?って、すっげー泣いちゃった。なんか俺、フェンネルの前で泣いてばっかだ。真理に対する後悔や、安否の不安を訴えたら
シンリの妹なんだから大丈夫って…お前賢いのに、時々根拠無いこと自信満々に言うよな…
それで浮上する俺も俺なんだが
俺もあっちでは行方不明になってんだよな…俺こっちに召喚される前、友人に両親の歪さ相談してた。あの人達に逆らったら俺も真理みたいにいらない子になるのかも…って
それなんてフラグ?
えっと…友人が警察に証言しちゃったら、両親大変なことになってるかも……
いや、今更思い出してどうするって感じだけど……
フェンネルが、真理も召喚されてたりしてねと笑った。そしたら今度こそ、兄として妹を守ってやりたいなと思う…しかしこの会話とかも何かのフラグのようだ。
…勇者召喚陣っていっぱいあるらしいし、洒落になんねーよっ
それに俺、ホモになっちまってるしっ、こんなこと妹に知られたくねぇっ
別の意味で会わす顔、ねーよっ!
『慎理お兄ちゃん…』
真理はそっと手帳を閉じた。
ごめんね、お兄ちゃん…全部知っちゃったよと呟く。
読めない漢字とかもあったが、前後の文で推測は出来た。
手帳に書かれてた持ち主らしき名前、それは久しぶりに見る漢字だった。そしてとても見覚えのある名前だった。
『吉田慎理』
真理の兄の名だった。
兄…(笑)