最終話「名門へ」
最終戦が終わる。
長いようで短くも感じたシーズンに幕が下りようとしている。
念願の世界最高峰の舞台の表彰台の一番高いところ。
そこから見える景色は今まで、カート、F4、スーパーフォーミュラで見てきたものとは比べ物にならないほど美しかった。
この景色をずっと見ていたい、そう願うほどに美しかった。
しかし、無情なものだ。
表彰式が終わり、表彰台を後にする。
「おっ!本日のMVPが帰って来たぞ!」松下が気づく。
「「わぁぁぁ!」」メカニックたちも盛り上がる。
私は少し恥ずかしかった。
だって、こんなに祝われたことないから。
「…おめでとう。」
「ありがとうございます」
2人が握手する。
「さて、嬉しい飛花にいい知らせだ。」
そう言って、松下は封筒を飛花に渡す。
「?」少々不思議そうな顔でそれを開ける。
そして、その中に入っていた紙の内容に驚く。
「え…!?こ、これって」
「すごいじゃないか。フェラーリだぞ、フェラーリ。F1の超名門チームだぞ。」
「私、来年からフェラーリで戦えるの?」
「そうだ。永野がチームと話し合ってくれてな、第1ドライバーが引退することになって空きが出るからって推薦してくれたんだ。」
嬉しい。とっても嬉しい。F1の舞台に残れるなんて。
そして移籍先は超名門。過去何度も栄光を手にしてきたチーム。
嬉しさと同時にプレッシャーも感じていた。
これまでVERTEX racingとともに戦ってきた。
その仲間たちは来年F1のグリッドにはいない。
でも、目標は変わらない。
世界最高峰の舞台で、世界初の女性F1王者になること。
私は年が明け、真紅のレーシングスーツに身を包んでいた。




